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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1805.00038
Lothringer et al. (2018)
Extremely Irradiated Hot Jupiters: Non-Oxide Inversions, H- Opacity, and Thermal Dissociation of Molecules
(極端に輻射を受けるホットジュピター:酸化物無しの温度逆転,H- 不透明度,分子の熱解離)

概要

極めて強く輻射を受けるホットジュピターは,昼側の温度が 2000 K 以上に達し,我々の惑星大気への理解のため,および観測を解釈するために用いるモデルを拡張する.このような種類の天体は,他のあらゆる特性で惑星であるが,それらの低圧領域での大気の温度だけは恒星大気に匹敵する.

これらの天体の性質に関する先験的・理論的な予測を行うため,ここでは PHOENIX 大気モデルのコードを用いて,多数の非常に高温なホットジュピター大気の自己無撞着なモデル化を行った.PHOENIX は,低温の褐色矮星から膨張する超新星のシェルにわたる幅広い種類の天体で十分に試験された数値モデルであり,紫外線から遠赤外線までの不透明度データベースにより,強く輻射を受けるホットジュピターを理解するのに適している.


モデル化の結果,2500 K を超えるホットジュピターとそうでない低温の惑星との間に,いくつかの本質的な違いを発見した.

一つ目は,大気中の鉄やマグネシウムのような金属原子による吸収,SiO と金属水素化物を含む分子,H- イオンのような連続的な不透明度源は,スペクトル型が早期型である中心星の短波長での放射と組み合わさることで,大気中の TiO (酸化チタン) や VO (酸化バナジウム) を必要とせずに,大気の強い温度逆転を生じるという点である.

二つ目は,水や TiO,VO を含む多くの分子種は,二次食の観測で探査される大気圧力領域では熱解離を起こしているという点である.それにより,鉛直方向に一様な化学種の存在度を仮定している復元アルゴリズムにはバイアスが生じる.

ここでは,これらの天体のその他の興味深い特性について議論し,またこの独特な天体の観測と特徴付けの将来の展望及び予測についても議論する.

主な結論

・2500 K を超える惑星の二次食観測で探査される大気圧力領域では,TiO や VO の有無に関わらず温度逆転が形成される.これは,早期型の中心星からの短波長での輻射と,波長に対して連続的な不透明度源 (金属原子,SiO,金属水素化物) による,短波長での吸収が起きることの組み合わせによって起きる.

・これらの高温の温度逆転の存在により,大部分の分子は 10 - 100 mbar の圧力領域で熱解離され,大気から重要な冷却源を奪う.結果的に,鉛直方向に一様な存在度を仮定する復元解析では,推定される分子存在度が太陽より少ない方向に偏る.

・将来の二次食観測と高分散分光観測では,このような惑星のスペクトルは分子の特徴を欠いたものになることが予想される.例外は一酸化炭素である.一酸化炭素は結合が強い分子であり,他の分子に比べて高い温度でも生き残る.

Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) の観測では,平衡温度が 2000 K を超え,木星よりも大きな半径を持ち,中心星の K バンド等級が 13 より明るい惑星を,81 個ほど発見することが期待されている.これにより,強く輻射を受けるホットジュピターの発見個数が増加するはずである.
ハッブル宇宙望遠鏡やジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡,そして次世代の超大型望遠鏡でこれらの大気の特徴付けができると考えられる.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1805.00049
Poleski et al. (2018)
An ice giant exoplanet interpretation of the anomaly in microlensing event OGLE-2011-BLG-0173
(マイクロレンズイベント OGLE-2011-BLG-0173 のアノマリーの巨大氷系外惑星解釈)

概要

軌道長半径 ~ 10 AU,質量が 0.2 木星質量 (4 天王星質量) 程度の惑星候補の発見を報告する.

中心星によるマイクロレンズイベントの終わりに観測された小さなアノマリーから,レンズ天体の主星に付随する惑星質量の伴星の存在が示唆された.レンズ天体が連星であるモデルと,ソース天体が連星であるモデルの両方を考慮して,観測されたシグナルを解釈し,これらの間の縮退について調査した.

今回判明したモデルの縮退のうちのいくつかは,これまでに認識されていなかった縮退である事が分かった.これらの縮退は,光度曲線中のアノマリーに関する情報の欠如に由来しており,数学的な縮退ではない.

今回の結果は,中心星から遠く離れた軌道にあるマイクロレンズ惑星の特徴付けを行うためには,高頻度の観測が不可欠であることを示す.そのため,計画中の赤外線宇宙望遠鏡 Wide Field Infrared Survey Telescope (WFIRST) によるマイクロレンズサーベイでは,ここで議論しているようなマイクロレンズモデルの縮退は,地上から行われている現在のサーベイに比べて起こりにくいことが予測される.


また,現在知られている低質量の遠方軌道の伴星についての議論も行った,
このような天体では,伴星/主星の質量比は大きいか (褐色矮星質量の伴星の場合) 小さいか (天王星類似惑星の場合) のいずれかに二極化する傾向があると結論付けられる.

中間的な質量比 (遠方軌道にある木星類似天体) を持つ天体に対するマイクロレンズサーベイの感度は,天王星類似天体に対する感度よりも高いはずである.しかし前者のような天体はこれまでに検出されていない.したがってこの事は,遠方軌道での重い巨大氷惑星の "砂漠" が存在する (そのような惑星は存在する割合が低い) ことを示す暫定的な証拠であると考えられる.

一方で,天王星類似天体の本質的な検出感度が低いことを考慮すると,これらが多数発見されているという事実は,天王星類似天体は普遍的な存在であることを示していると考えられる.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1805.00096
Parmentier et al. (2018)
From thermal dissociation to condensation in the atmospheres of ultra hot Jupiters: WASP-121b in context
(ウルトラホットジュピターの大気中での熱解離から凝縮まで:WASP-121b の文脈で)

概要

最近,新しい系外惑星の分類として ultra hot Jupiters (ウルトラホットジュピター) という,最も高温な部類の近接巨大ガス惑星が出現している.

これらウルトラホットジュピターの大多数は,1.1 - 1.7 µm バンドパスで見られるスペクトルの特徴が,理論的に予想されているよりも弱い.この波長域は,ハッブル宇宙望遠鏡の WFC3 を用いて探査されている.しかし,スピッツァー宇宙望遠鏡で観測されている,より長波長でのスペクトルの特徴は強いことが分かっている.そのため,これらの惑星の温度構造と大気中の化学種の存在度は,謎に包まれている.

ここでは,大気中での熱解離,電離,H- による不透明度,および雲が,どのようにウルトラホットジュピターの温度構造とスペクトル特性を形作るのかを調査した.
SPARC/MITgcm を用いて,4 つのウルトラホットジュピターの大気をモデリングした.また WASP-121b のケースをより詳細に議論した.ここでの発見を,大気中での熱解離の解析的定量化と,そのスペクトル特徴の強度への影響を通じて,ウルトラホットジュピター全体に拡大した.

その結果,ウルトラホットジュピターの昼側大気中ではほとんどの分子は熱解離を起こし,アルカリ金属は電離されることが予測される.解離する分子には,水,酸化チタン,酸化バナジウムと水素分子が含まれるが,強い分子結合を持つ一酸化炭素は含まれない.

解離によって分子存在度の垂直方向の勾配が生まれ,これにより水のスペクトルの特徴は大きく弱められるが,4.5 µm 波長での一酸化炭素の特徴は変わらない.ハッブル宇宙望遠鏡の WFC3 バンドバスの波長内で検出される水のバンドは,H- イオンの連続不透明度によって,更に弱められる.

昼側の大気中で解離した分子は,昼夜の縁に到達する前に再結合することが予想される.これにより,昼側と縁の間での化学組成と雲の被覆率には,一桁の変動が発生する.

大気中での分子の解離は,ほとんどのウルトラホットジュピターで観測されている,波長 1 - 2 µm のバンドバスでの水の強いスペクトルの特徴が欠けていることを,定性的には理解できる.ただし定量的には,ここでのモデルは WASP-121b の放射スペクトルを観測結果と十分に一致させることはできていない.WASP-33b とケプラー33Ab と同様に,WASP-121b はウルトラホットジュピターの集団の中でも外れた存在であるように思われる.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1805.00424
Mansfield et al. (2018)
A HST/WFC3 Thermal Emission Spectrum of the Hot Jupiter HAT-P-7b
(ホットジュピター HAT-P-7b の HST/WFC3 熱放射スペクトル)

概要

いくつかの最も高温な部類のホットジュピターの二次食 (secondary eclipse) 観測は,特徴に欠けた黒体状のスペクトル,もしくは分子放射の特徴を示す.これらの特徴は,惑星の大気中に温度逆転層が存在するという説と整合的である.

理論的には,温度逆転を伴う高温な大気と,温度逆転を持たない低温な大気の間の遷移があることが予測されるが,これが起きる正確な遷移点は不明である.この問題をさらに探求するため,ホットジュピター HAT-P-7b の二次食を 2 回,ハッブル宇宙望遠鏡の WFC3 で観測した.これらのデータを,過去のスピッツァー宇宙望遠鏡とケプラーでの二次食観測と合わせて解析を行った.

ハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡のデータは,この惑星の昼側のスペクトルは,有効温度が 2692 K の黒体放射でよくフィットできる.また,ケプラーによるデータからは,この惑星の幾何学的アルベドを 0.077 と制約した.

これらのデータを,三次元の大気循環モデルと,一次元の自己無撞着前進モデルを用いてモデル化した.

一次元モデルからは,この惑星の大気は温度逆転層を持ち,昼から夜への熱の再分配は弱く,また探査した圧力領域では水分子の解離が起きていることが示唆される.この結果は,この惑星の WFC3 で観測されたスペクトルと,もしかしたら他の幾つかの超高温ホットジュピターのスペクトルは,黒体状に見えることを示唆する.これは,これらの観測で探査している領域は,大気温度が圧力とともにゆっくり変化する対流圏界面の付近に相当するからである.

さらに一次元モデルは,この惑星の大気の金属量に対して [M/H] = -0.87 という制約を与えた.また C/O 比は,99% の確度で 1 未満である.

大気が太陽組成とした場合の三次元大気循環モデルは,スピッツァー宇宙望遠鏡のデータと一致した.しかし WFC3 バンドパスでのフラックスを過小予測し,また特徴に欠けたスペクトルの形状を再現できない.この理論と観測結果の乖離は,大気循環への抗力の存在や,夜側大気中の雲の存在によって説明可能だと考えられる.
将来的なジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡でのさらなる観測によって,大気特性をより良く理解できることが期待される.

HAT-P-7b について

この惑星はホットジュピターであり,アルベドをゼロと仮定し,熱の再分配を昼側に限定した場合,昼側の平衡温度は 2600 K になると推定される.

この惑星はスピッツァー宇宙望遠鏡で観測され,大気中の温度逆転層の存在が報告されている (Christiansen et al. 2010.Wong et al. 2016).しかし,スピッツァー宇宙望遠鏡では系外惑星のスペクトルを少ない波長帯でしか観測できないため,分子の存在度との縮退がある.そのため,それらのデータのみでは実際に温度逆転層が存在すると結論付けることは出来ない (Mashusudhan & Seager 2010,Line et al. 2014).今回は,ハッブル宇宙望遠鏡を用いて 1.1 - 1.7 µm の波長域で観測を行った.

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arXiv:1804.10618
Suissa & Kipping (2018)
TRAPPIST-1e Has a Large Iron Core
(TRAPPIST-1e は大きな鉄のコアを持つ)

概要

TRAPPIST-1 系は,系外惑星の大気と内部構造を理解するための良い研究対象である.

これら複数の惑星間の重力的相互作用は,トランジット時刻の変動を生み出す.この手法を用いて,Grimm et al. (2018) では TRAPPIST-1 系の惑星の質量が 5% - 12% の精度で測定されている.

これらの質量と,それぞれの惑星の 5% 未満の精度で測定された半径を用いて,Suissa et al. (2018) の手法を適用して各惑星のコア半径割合 (core radius fraction, CRF) の最小値と最大値を推定した.

その結果,CRF がゼロでない最小値を持つことが確実なものは TRAPPIST-1e のみであり,CRF は 49% より大きく 72% より小さい値となった.これは地球と近い値である.そのため,TRAPPIST-1e は,地球に似た大きな鉄のコアを保持している可能性がある.さらにこの惑星は地球サイズであり,TRAPPIST-1 まわりの温暖な領域の中に位置している.

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