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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1811.02573
von Essen et al. (2018)
An optical transmission spectrum of the ultra-hot Jupiter WASP-33b. First indication of AlO in an exoplanet
(ウルトラホットジュピター WASP-33b の可視光透過スペクトル.系外惑星中の酸化アルミニウムの初めての兆候)

概要

近年の,観測装置,データリダクション,解析技術の改善により,系外惑星のスペクトルを高品質で取得できるようになってきた.特に地上の観測装置での改善が目立っている.高品質のデータを解釈するためには,解析に使うモデルの改良を必要とする.特に,金属酸化物のような化学種の検出を行うことは難しい.

極めて強く輻射を受ける系外惑星 (平衡温度 ~ 3000 K) では,金属酸化物は可視光で強い吸収を示すことが期待される.しかしそのような特徴は,これまでにわずかなホットジュピターでしか検出されていない.

ここでは,ウルトラホットジュピター WASP-33b の大気の特徴付けを行うため,2 回のトランジットを観測した.この 2 回の観測の間は,WASP-33b の公転周期 18 周期分の間隔が空いている.観測データは 10 m Gran Telescopio Canarias に設置された OSIRIS 分光器を用いて取得された.

この観測結果を元にした大気の復元解析から,この惑星の大気組成に制約を与えた.その結果,3.3 σ の有意度で酸化アルミニウム (AlO) の兆候と思われる特徴が検出された

恒星の脈動によって生成される光度曲線の光度変化を取り除き,波長依存して変化する惑星半径は恒星光の大気吸収によるものだと結論付けた.また,2 回の光度曲線の同時フィッティングより,トランジットパラメータの更新を行った.

背景

透過光分光観測と大気の特徴

惑星の透過スペクトルからは大気の様々な特徴が検出されている.例えば,ナトリウム,水,一酸化炭素,雲とヘイズである.

高分散分光観測では大気中の化学種を検出することができる,HD 209458b では,大気中からナトリウムが検出されている (Charbonneau et al. 2002).分解能が 100000 あれば,ナトリウムのような個別の化学種のスペクトル線コアを分光学的に分解することができる,また,軌道運動,自転も測定することが可能となり,極端なケースでは系外惑星大気の風速まで測定することができる (Snellen et al. 2010,Louden & Wheatley 2015).一方で低分散スペクトルと広帯域測光観測では,広い波長域にまたがった幅広いスペクトルの特徴を探査することが出来る.例えば雲,ヘイズ,レイリー散乱の存在などである (Sing et al. 2016など)

大気中の金属酸化物

初期の理論モデルでは,平衡温度 2500 K を超えるホットジュピターは M 型矮星に類似し,TiO や VO といった気体の酸化物が雲なし大気にあると考えられた (Hubeny et al. 2003,Fortney et al. 2008).TiO/VO の可視光波長での強い不透明度は,惑星大気中に温度逆転層を生み出す.これは高高度で温度が上昇するような構造である (Burrows et al. 2008).

温度逆転層の最初の観測的証拠は,より低温のホットジュピターで報告された (Knutson et al. 2008),しかしこの観測やその他のいくつかの観測では,温度逆転層の存在は後に再検討された (Diamond-Lowe et al. 2014,Hansen et al. 2014,Evans et al. 2015など).

温度逆転層の探査と並行して,なぜガス相の TiO が大気高層で物理的な役割を果たしていないように見えるのかを説明するための,いくつかの機構が調べられた.これは,分子が冷たい低層に凝縮して重力的に沈降し,また炭素対酸素比も低下するというメカニズムなどを含む (Spiegel et al. 2009; Parmentier et al. 2013; Madhusudhan 2012).

酸化チタンの検出報告

最近になって,最も高温な部類の巨大ガス惑星で TiO の検出報告がされている.

有効温度 2400 K の WASP-121b の昼夜境界において,Evans et al. (2016) は可視光での大きな不透明度の兆候を発見し,TiO による吸収によるものだと示唆した.その後すぐに,Evans et al. (2017) は同じ惑星で TiO の強い証拠と昼側での温度逆転層を発見した.

有効温度 2100 K の WASP-19b の透過スペクトルでは,TiO の可視光吸収バンドがスペクトル的に分解されている (Sedaghati et al. 2017).

しかし同様に高温 (2600 K) の WASP-12b では,昼夜境界で TiO の吸収は見られなかった.これは惑星大気のうちトランジットで探査できる範囲からは,これらの元素が取り除かれている可能性を示唆している (Sing et al. 2013).

これらの非常に高温なガス惑星 3 つの間の違いとしては,透過スペクトル中に雲とヘイズの兆候がどれだけ見られるかというものがある.WASP-12b の透過スペクトルは特徴を欠いており雲やヘイズによる影響が見られるが (Sing et al. 2013),WASP-19b と WASP-121b のスペクトルは雲やヘイズの影響を受けていないように思われる.

WASP-33b について

最も高温な KELT-9b に次ぐ温度である WASP-33b は,昼側の輝度温度が 3398 K である (von Essen et al. 2015).最近,Nugroho et al. (2017) はこの惑星の昼側半球から有意な TiO のシグナルを検出し,温度逆転層の存在も指摘している.これは Haynes et al. (2015) でも示唆されている.この惑星の位相曲線の研究では,大気中の熱循環は低温なホットジュピターのものと似ているとされている (Zhang et al. 2018).

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