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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1905.02096
Hoeijmakers et al. (2019)
A spectral survey of an ultra-hot Jupiter: Detection of metals in the transmission spectrum of KELT-9 b
(ウルトラホットジュピターのスペクトルサーベイ:KELT-9b の透過スペクトル中での金属の検出)
このような温度では大気中にはエアロゾルや複雑な分子が存在できないため,これらの種類の惑星は,トランジットと昼夜間の分光観測を介して詳細に大気の化学的な特徴付けを行える対象である.大気中に存在する化学種の一覧の詳細な研究は,惑星の形成過程と進化の歴史に大きな制約を与える可能性がある.
ここでは,KELT-9b の可視光での透過スペクトル中の金属の吸収線を探査するため,相互相関技術を使用した.HARPS-N 分光器で取得された 2 回のトランジット観測データを解析した.
大気の等温平衡化学モデルを使用し,原子番号が 3-78 の,中性および一価のイオンのそれぞれの透過スペクトルを予測した.これらのうち,可視光の波長範囲にスペクトル線を持つと予想される元素を同定し,それらを相互相関のテンプレートとして使用した.
その結果,KELT-9b の大気中から,Na I,Cr II,Sc II,Y II を 5σ 以上の確度で検出し,また過去に検出が報告されていた Mg I,Fe I,Fe II と Ti II を確認した.さらに,Ca I,Cr I,Co I,Sr II の兆候も発見したが,これらは確定させるためにはさらなる観測が必要である.
検出された吸収線はモデルが予測するものよりもずっと深く,静水圧分布と比べると密度が大きくなっている高い高度まで物質が輸送されていることを示唆している.言い換えれば,検出された物質は,広がったエンベロープもしくは流出するエンベロープの一部である.
また,大気全体の昼から夜側への風による吸収スペクトルの有意な青方偏移は見られなかった.特に,強い Fe II の特徴の偏位は 0.18 ± 0.27 km s-1 であり,これはゼロと整合的である.
惑星の軌道速度の測定結果を用い,恒星 KELT-9 は 1.978 太陽質量,2.178 太陽半径,惑星 KELT-9b は 2.44 木星質量,1.783 木星半径という改善した値を導出した.
Kitzmann et al. (2018) の理論的研究では,この惑星の透過スペクトル中には鉄の吸収線が存在することが予測されている.
過去の研究では,HARPS-North の高分散トランジット分光観測から,中性の鉄 Fe I の存在が検出されているが,電離した鉄 Fe II とチタン Ti II も同時に検出されている (Hoeijmakers et al. 2018).さらに水素のバルマー線も透過スペクトル中に検出されている (Yan & Henning 2018,Cauley et al. 2018),また Fe I,Fe II と Mg I 三重項の独立した線も検出されている (Cauley et al. 2018).
arXiv:1905.02096
Hoeijmakers et al. (2019)
A spectral survey of an ultra-hot Jupiter: Detection of metals in the transmission spectrum of KELT-9 b
(ウルトラホットジュピターのスペクトルサーベイ:KELT-9b の透過スペクトル中での金属の検出)
概要
KELT-9b は,最近発見例が増えているウルトラホットジュピターと呼ばれる,高温の早期型星を公転する短周期の巨大ガス系外惑星の一例である.中心星からの強烈な輻射が惑星の大気を ~ 4000 K にまで加熱し,主系列星と同程度の温度を持つ光球となる.このような温度では大気中にはエアロゾルや複雑な分子が存在できないため,これらの種類の惑星は,トランジットと昼夜間の分光観測を介して詳細に大気の化学的な特徴付けを行える対象である.大気中に存在する化学種の一覧の詳細な研究は,惑星の形成過程と進化の歴史に大きな制約を与える可能性がある.
ここでは,KELT-9b の可視光での透過スペクトル中の金属の吸収線を探査するため,相互相関技術を使用した.HARPS-N 分光器で取得された 2 回のトランジット観測データを解析した.
大気の等温平衡化学モデルを使用し,原子番号が 3-78 の,中性および一価のイオンのそれぞれの透過スペクトルを予測した.これらのうち,可視光の波長範囲にスペクトル線を持つと予想される元素を同定し,それらを相互相関のテンプレートとして使用した.
その結果,KELT-9b の大気中から,Na I,Cr II,Sc II,Y II を 5σ 以上の確度で検出し,また過去に検出が報告されていた Mg I,Fe I,Fe II と Ti II を確認した.さらに,Ca I,Cr I,Co I,Sr II の兆候も発見したが,これらは確定させるためにはさらなる観測が必要である.
検出された吸収線はモデルが予測するものよりもずっと深く,静水圧分布と比べると密度が大きくなっている高い高度まで物質が輸送されていることを示唆している.言い換えれば,検出された物質は,広がったエンベロープもしくは流出するエンベロープの一部である.
また,大気全体の昼から夜側への風による吸収スペクトルの有意な青方偏移は見られなかった.特に,強い Fe II の特徴の偏位は 0.18 ± 0.27 km s-1 であり,これはゼロと整合的である.
惑星の軌道速度の測定結果を用い,恒星 KELT-9 は 1.978 太陽質量,2.178 太陽半径,惑星 KELT-9b は 2.44 木星質量,1.783 木星半径という改善した値を導出した.
KELT-9b について
この惑星は,KELT-9 という A0 型星を 1.48 日周期で公転するウルトラホットジュピターである (Gaudi et al. 2017).平衡温度は 4050 K であり.これは多くの主系列星の光球と同程度の温度である.Kitzmann et al. (2018) の理論的研究では,この惑星の透過スペクトル中には鉄の吸収線が存在することが予測されている.
過去の研究では,HARPS-North の高分散トランジット分光観測から,中性の鉄 Fe I の存在が検出されているが,電離した鉄 Fe II とチタン Ti II も同時に検出されている (Hoeijmakers et al. 2018).さらに水素のバルマー線も透過スペクトル中に検出されている (Yan & Henning 2018,Cauley et al. 2018),また Fe I,Fe II と Mg I 三重項の独立した線も検出されている (Cauley et al. 2018).
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天文・宇宙物理関連メモ vol.488 Scott Gaudi et al. (2017) 表面温度が 4600 K のホットジュピター KELT-9b の発見
天文・宇宙物理関連メモ vol.869 Kitzmann et al. (2018) KELT-9b の特殊な大気化学について
天文・宇宙物理関連メモ vol.976 Hoeijmakers et al. (2018) ウルトラホットジュピター KELT-9b 大気での鉄とチタンの検出
天文・宇宙物理関連メモ vol.953 Yan & Henning (2018) 極めて高温なガス惑星 KELT-9b の広がった水素大気の Hα での検出
天文・宇宙物理関連メモ vol.1021 Wilson Cauley et al. (2018) KELT-9b 大気のマグネシウムの検出と大気のダイナミクス