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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1608.02945
Murphy et al. (2016)
A planet in an 840-d orbit around a Kepler main-sequence A star found from phase modulation of its pulsations
(恒星の脈動の位相変動からのケプラー A 型主系列星まわりの 840 日の軌道の惑星)

概要

A 型星 KIC 7917485 のハビタブルゾーンの中,あるいは周辺を公転する,12 木星質量の惑星 KIC 7917485b を検出した.この惑星は,軌道運動による恒星の脈動の位相のずれを元に検出された.

これまでの A 型主系列星まわりの惑星は,全てトランジット法か直接撮像によって発見されてきた.A 型主系列星まわりではこれまで視線速度法やアストロメトリによる惑星の検出例は無く,惑星の軌道運動に由来する手法による検出はこれが初めてである.

また,1 σ でハビタブルゾーンの内部に惑星を持っている初めての A 型星である.

この惑星の検出は,A 型星は遠方に大きな質量の惑星を持つという説を支持する結果である.

これまでの観測の概要

A 型星まわりの惑星

これまでに系外惑星は多数発見されているが,A 型星まわりの惑星についてはあまり分かっていない.2016 年 5 月に新たに 1284 個の系外惑星が追加されたが (Morton et al. 2016),これまでに確認された A 型星まわりの惑星は 20 個に満たない.

過去に,"Retired A star" プロジェクト (Johnson et al. 2007) などの,低温の準巨星での視線速度観測より,惑星の存在頻度 (planet occurrence rate) は,主星の質量が 1.9 (+0.1, -0.5) 太陽質量で最大になるという示唆が得られている (Reffert et al. 2015).この質量は,A 型主系列星が不安定帯 (instability strip) に重なる質量とよく一致している.この質量領域では,たて座デルタ型変光星 (delta Scuti pulsator) というタイプの変光星が一般的である.

A 型星まわりの惑星検出の困難

この質量の範囲にある主星まわりに惑星があまり発見されていないのは,観測の選択効果で説明が可能である.すなわち,これらの恒星では,他の恒星では有効な惑星検出手法が上手く使えないということである.

トランジット法に関しては,中心星の脈動による mmag 程度の大きさの光度変動がトランジットでの検出の障害となる.また,A 型星まわりでは大きな軌道を持つ惑星が多いため (Johnson et al. 2011),トランジット確率が低い.

視線速度法に関しては,A 型星のスペクトルに隠されるという影響がある.A 型星は典型的には自転速度が早く,赤道での速度の平均は 100 km s-1 を超える (Abt & Morrell 1995など).また有効温度が高く,恒星大気での吸収線が少なく浅いという影響もある.さらに,これらのスペクトル線は恒星の脈動によっても歪められる.従って視線速度測定の精度が悪く,最近でも視線速度の測定精度は 1 - 2 km s-1 程度に留まる (Becker et al. 2015).

恒星の脈動はトランジット法や視線速度法での惑星検出の邪魔をするが,幸いにも脈動自身を惑星の軌道運動の測定手段として用いることが可能である (Murphy et al. 2014).たて座デルタ型変更性はその測定に適している (Compton et al. 2016).

トランジット法と直接撮像による発見例

現在までに,軌道運動を介した検出手法 (視線速度法,アストロメトリ,脈動時刻変動) による A 型主系列星まわりの惑星発見の前例は無い.トランジット法と直接撮像による A 型星周りの惑星発見の前例はある.

トランジット法では,ケプラー13,ケプラー462,ケプラー516,ケプラー959,ケプラー1115,ケプラー1171,ケプラー1517 (Morton et al. 2016),WASP-33 (Collier Cameron et al. 2010),HAT-P-57 (Hartmann et al. 2015),KELT-17 (Zhou et al. 2016) の周りに惑星が発見されている.これらの惑星のうち,軌道周期が 85 日である ケプラー462b を除くと,全て軌道周期は 30 日以下である.また,NASA Exoplanet Archive に掲載されている直接撮像による発見例では,惑星は全て大きな軌道を持っている.HD 100546b,HIP 78530b,アンドロメダ座カッパ星b は,B 型星まわりの準恒星質量天体であり惑星と低質量褐色矮星の境界である 13 木星質量より重い.
A 型星まわりでは,フォーマルハウトb (Stapelfeld et al. 2004),がか座ベータ星b (Lagrange et al. 2010),HD 95086b (Rameau et al. 2013),複数惑星系の HR 8799b, c, d, e (Marois et al. 2008),三重連星系内の惑星である HD 131399Ab (Wagner et al. 2016) が発見されている.全て軌道長半径は 9 - 177 AU の範囲内にある.その他に,進化した高温の恒星まわりでの惑星の発見も報告されている.
白色矮星連星であるへび座NN星のまわりに,eclipse timing variation で発見された例 (Brinkworth et al. 2006),B 型準矮星 (subdwarf B star, sdB star) であるペガスス座V0391星まわりに pulsation timing variation で発見された惑星 (Silvotti et al. 2007),別の sdB star の KIC 10001893 での発見 (Silvotti et al. 2014),KIC 5807616 に orbital brightness modulation で発見された例 (Charpinet et al. 2011) などがある.ただし最後の一例については存在が未確定である (Krzesinski et al. 2015).

パラメータ

KIC 7917485
等級:13.2
有効温度:7067 K
金属量:[Fe/H] = -0.02
質量:1.63 太陽質量
光度:9.9 太陽光度
KIC 7917485b
軌道周期:840 日
軌道離心率:0.15
最小質量:11.8 木星質量

議論

発見された惑星は最小質量が 11.8 木星質量であり,惑星と褐色矮星の境界に近い.

また中心星のハビタブルゾーン内にあると考えられる.この天体に固体の表面は存在しないと考えられるが,高温の衛星を持っている可能性はあるため,ハビタブルゾーンの議論を行う価値はある.

中心星の光度はあまりよく成約されていない.また主系列のどの段階化によって光度は変化する.解析の結果,1 σ の確度でハビタブルゾーンに惑星が存在するという結果を得た.この値は,将来の Gaia ミッションでこの天体までの距離が判明すれば見積もりはより正確になると期待される.

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