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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1803.07430
Curtis et al. (2018)
K2-231 b: A sub-Neptune exoplanet transiting a solar twin in Ruprecht 147
(K2-231b:ループレヒト147 中のソーラーツインをトランジットするサブネプチューン系外惑星)

概要

半径が 2.5 地球半径のサブネプチューン惑星 K2-231b の発見について報告する.ケプラー K2 ミッションの Campaign 7 の観測データ中から発見された.

この惑星は,Ruprecht 147 (ループレヒト147) 星団の中にある恒星をトランジットしている.ループレヒト147 は年齢が 30 億歳,300 pc の距離にあり,平均の金属量が [Fe/H] = 0.1 の星団である.中心星の K2-231 (別名:EPIC 219800881) は,太陽に類似した特性を持つ solar twin (ソーラーツイン) である.
合計で 6 回のトランジットが検出され,軌道周期は 13.84 日,トランジット深さは ~ 0.06%,トランジット継続時間は ~ 4 時間である.

中心星の特性を,高分散 MIKE スペクトル,広帯域の可視光・近赤外線測光観測,星団の視差と星間赤化の測定,および PARSEC,Dartmouth,MIST の等時線 (isochrone) モデルに基いて推定した.その結果,1.01 太陽質量,0.95 太陽半径,有効温度 5695 K と推定された.

この恒星は,測光観測のモデリング,10 年近くにわたる視線速度変動の小さな値,Keck/NIRC2 補償光学撮像とアパーチャマスキング干渉計観測に基づくと,連星ではなく単独星であると考えられる.

惑星に対して,確率的な質量-半径関係を適用すると,惑星質量は 7 (+5, -3) 地球質量と推定され,これに対応する視線速度変動の半振幅は 2 ± 1 m s-1 となる.これは,現在の精密な視線速度観測装置で測定可能な値である.

K2-231b はループレヒト147 星団中に発見された準恒星天体 (恒星未満の質量を持つ天体) としては 2 番目の例であり,惑星としては初めてである.散開星団中に発見されている惑星としては 23 個目の発見であり,少ないながらも発見数は徐々に増加している.

散開星団中の系外惑星

散開星団中の惑星探査の困難点

初めての太陽型星周りの系外惑星 (Mayor & Queloz 1995) が発見された直後,Janes (1996) は散開星団 (open cluster) は,系外惑星探査の測光モニタリングの良いターゲットであると指摘している.それから 20 年あまりが経過した現在,散開星団中の惑星は比較的少数しか知られていない.

散開星団の系外惑星を検出する事の観測的な困難点は,大部分の太陽系近傍の星団は年齢が若いため星団内の恒星は高速で自転しており,磁気的に活発であるということである.また,非活発な恒星を持った年老いた星団は太陽系から遠い位置にある傾向があるため,その中にある太陽型星は大部分のドップラー技術や地上からのトランジットの装置で観測するには暗すぎるという問題がある.

散開星団中の惑星の発見

ドップラー法で初めて発見された散開星団中の惑星は,重い木星型惑星,もしくは褐色矮星質量の天体である.

Lovis & Mayor (2007) は,2 個の準恒星天体を NGC 2423 と NGC 4349 中に発見した.それぞれ 10.6, 19.8 木星質量である.Spiegel et al. (2011) によると褐色矮星の重水素燃焼質量限界は 11.4 - 14.4 木星質量であるため,後者の天体は褐色矮星質量,前者はその境界にある天体ということになる.

Sato et al. (2007) は,Hyades (ヒアデス星団) 中の巨星周りに惑星質量の伴星を発見している.

さらに,Quinn et al. (2012) は Praesepe (プレセペ星団) 中に 2 つのホットジュピターを発見しており,この 2 つは ”two b’s in the Beehive” として知られる (プレセペ星団は別名 Beehive cluster と呼ばれており,蜂の巣と惑星の "b" をかけた呼び名).そのうち片方は,長周期の離心軌道にある木星質量の惑星も持っている (Malavolta et al. 2016).

また Quinn et al. (2014) は,ヒアデス星団中にさらに別の惑星を発見している.

その他,M 67 星団中の 3 個の主系列星周りに,トランジットしないホットジュピターが発見されており,1 個の木星型惑星が進化した巨星周りに検出され,また 3 個の未確定の惑星候補が報告されている (Brucalassi et al. 2014, 2015, 2017).

ケプラー登場後の検出

その後,ケプラーによる観測によって 4 個の星団の高精度測光データが与えられたことにより,状況は大きく変化した.2 つのサブネプチューン惑星が 10 億歳の星団 NGC 6811 中に発見されている (Meibom et al. 2011).

ケプラーが K2 ミッションに移行した後には多数の星団がケプラーによって観測され,星団中の系外惑星が複数発見されている.それらの大部分は低質量星周りに発見されており,それらは本質的に暗いため地上からの精密な視線速度の観測は困難である.

これまでの星団の観測は以下の通りである.
プレアデス星団
Gaidos et al. (2017) は Pleiades (プレアデス星団,すばる) 注の観測データ中には惑星が検出されなかった事を報告している (Mann et al. 2017も参照),
ヒアデス星団
Mann et al. (2016) と David et al. (2016) は,ヒアデス星団中の M4.5 矮星をトランジットする海王星サイズの惑星を独立に発見した.
さらに,Mann et al. (2017) はヒアデス星団中の中期 K 型星をトランジットする,地球サイズ〜海王星サイズの 3 惑星を発見した (K2-136),一方で Ciardi et al. (2017) はこれと同時に海王星サイズの惑星を報告し,また K 型矮星は晩期 M 型矮星と連星を成していると報告している.この系は後に Livingston et al. (2017) によっても報告されている.
プレセペ星団
プレセペ星団中では,Obermeier et al. (2016) が K2-95b の発見を報告している.これは M 型矮星を公転する,海王星サイズの惑星である.後に,Libralato et al. (2016),Mann et al. (2017),Pepper et al. (2017) でも報告されている.Pope et al. (2016),Barros et al. (2016),Libralato et al. (2016),Mann et al. (2017) による発見を加えると,6 個の確認された惑星と 1 個の惑星候補が報告されている.
その他
また,Nardiello et al. (2016) は M67 の領域に 3 個の惑星候補の検出を報告しているが,これら全ては M67 の一員ではないと思われる.

ループレヒト147 中の系外惑星探査

ループレヒト147 は,ケプラー K2 ミッションの Campaign 7 で観測された.Curtis et al. (2013) によると,この星団は太陽系近傍の星団としては最も年老いたものであり,年齢は 30 億歳,距離は 300 pc である.

この星団内では,EPIC 219388192 (別名:CWW 89A) をトランジットする準恒星天体が検出されている,これは温暖な褐色矮星であり,離心軌道を ~ 5 日周期で公転している.この天体の発見と特徴付けは Nowak et al. (2017) でも独立して行われている.

パラメータ

K2-231
別名:EPIC 219800881
質量:1.01 太陽質量
半径:0.95 太陽半径
有効温度:5695 K
金属量:[Fe/H] = 0.14
等級:V = 12.71
K2-231b
軌道周期:13.841901 日
半径:2.5 地球半径

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