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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1803.03648
Fung & Lee (2018)
Inner Super-Earths, Outer Gas Giants: How Pebble Isolation and Migration Feedback Keep Jupiters Cold
(内側のスーパーアース,外側の巨大ガス惑星:ペブル孤立と移動フィードバックはどのように木星型惑星を低温に保つか)
ここでは,内側にスーパーアースがあり外側には巨大ガス惑星があるという二分性は,惑星がほぼ粘性のない円盤中で形成された場合に自然に再現されることを示す.
層流の円盤 (laminar disk) 中では,惑星は自身の軌道から容易に円盤ガスを排除することが出来る.惑星軌道の内側に溜まったガスからのフィードバックトルクは惑星の内側への移動を減速し,最終的に惑星の移動は停止する.
さらに惑星軌道の外側の圧力極大領域にペブル (数センチメートル程度の固体粒子) や固体成分が捕獲され,惑星への固体成分の供給が途絶える.そのため,巨大ガス惑星は遠方の低温な場所で形成され,低温なその場所に留まったままになる.より重いコアは遠距離で形成されやすく,円盤フィードバックがある状況下ではほとんど移動しない.
このシナリオを,最大で 105 年にわたる,円盤-惑星相互作用の二次元流体力学シミュレーションを用いて再現した.シミュレーション中では,惑星の移動と惑星へのペブルの降着を,円盤フィードバックによって惑星移動が終わりを迎えるまで追った.
また,原始惑星コアが暴走ガス降着を起こして巨大ガス惑星に成長するかどうかは,1 次元ガス降着モデルを計算することで決定した.
今回のシミュレーションの結果,非粘性の最小質量円盤では,巨大ガス惑星は ~ 0.5 au 以内では形成されず,また円盤が存在している間その領域を移動することも出来ないことが分かった.また円盤質量の依存性についても調べ,低質量の円盤ではガス惑星は遠方で形成される事を見出した.
arXiv:1803.03648
Fung & Lee (2018)
Inner Super-Earths, Outer Gas Giants: How Pebble Isolation and Migration Feedback Keep Jupiters Cold
(内側のスーパーアース,外側の巨大ガス惑星:ペブル孤立と移動フィードバックはどのように木星型惑星を低温に保つか)
概要
巨大ガス惑星 (ここでは 100 地球質量程度以上) の大部分は,中心星から ~ 1 au 以遠の距離に発見されている.一方で 1 au 以内の領域では,惑星は 2 - 20 地球質量の範囲のスーパーアースが大部分を占める.ここでは,内側にスーパーアースがあり外側には巨大ガス惑星があるという二分性は,惑星がほぼ粘性のない円盤中で形成された場合に自然に再現されることを示す.
層流の円盤 (laminar disk) 中では,惑星は自身の軌道から容易に円盤ガスを排除することが出来る.惑星軌道の内側に溜まったガスからのフィードバックトルクは惑星の内側への移動を減速し,最終的に惑星の移動は停止する.
さらに惑星軌道の外側の圧力極大領域にペブル (数センチメートル程度の固体粒子) や固体成分が捕獲され,惑星への固体成分の供給が途絶える.そのため,巨大ガス惑星は遠方の低温な場所で形成され,低温なその場所に留まったままになる.より重いコアは遠距離で形成されやすく,円盤フィードバックがある状況下ではほとんど移動しない.
このシナリオを,最大で 105 年にわたる,円盤-惑星相互作用の二次元流体力学シミュレーションを用いて再現した.シミュレーション中では,惑星の移動と惑星へのペブルの降着を,円盤フィードバックによって惑星移動が終わりを迎えるまで追った.
また,原始惑星コアが暴走ガス降着を起こして巨大ガス惑星に成長するかどうかは,1 次元ガス降着モデルを計算することで決定した.
今回のシミュレーションの結果,非粘性の最小質量円盤では,巨大ガス惑星は ~ 0.5 au 以内では形成されず,また円盤が存在している間その領域を移動することも出来ないことが分かった.また円盤質量の依存性についても調べ,低質量の円盤ではガス惑星は遠方で形成される事を見出した.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1803.04543
Morris et al. (2018)
Possible Bright Starspots on TRAPPIST-1
(TRAPPIST-1 上の明るい領域の可能性)
ケプラーの K2 Campaign 12 期間の TRAPPIST-1 の観測では,可視光で自転による変調と思われる 3.3 日周期の変動が検出された,しかし,この変動はスピッツァー宇宙望遠鏡の 4.5 µm 波長では明確に検出されなかった.もし検出された自転変調が黒点によるものである場合,永続的に暗い黒点が存在しているという可能性は,スピッツァー宇宙望遠鏡では光度曲線中に測光変動が存在しなかったことから,除外することができる.
ここでは,ケプラーとスピッツァー宇宙望遠鏡の光度曲線の双方と整合的な,TRAPPIST-1 の光球にある明るい領域が引き起こす自転変調の測光モデルを構築した.その結果,領域の典型的なサイズが恒星半径の 0.004 倍程度,領域の温度が 5300 K 程度の明るい点が 3 つ存在するというモデルが,もっとも尤度が大きいモデルとなった.
また,最も明るい領域が観測者の方を向いている時に,大きなフレアがしばしば観測されることを発見した,これは,明るい領域の位置とフレアイベントに相関があることを示唆している.さらにこれらのフレアは,領域の輝度が増加している段階で起きやすい可能性がある.このことは,検出されている 3.3 日の周期は自転によるシグナルではなく,活動領域の特徴的なタイムスケールである可能性を示唆している.
この恒星は,スピッツァー宇宙望遠鏡の IRAC-2 で 4.5 µm 波長で 20 日に渡って観測された (Gillon et al. 2017,Delrez et al. 2018).またその 76 日後に,NASA の宇宙機であるケプラーを用いた,K2 Campaign 12 の観測期間でさらに 79 日に渡って観測された (Luger et al. 2017).
K2 の観測では,3.3 日周期の準周期的な変動が検出された (Luger et al. 2017,Delrez et al. 2018).これは,恒星表面にある黒点が自転により見え隠れすることによる,恒星の自転シグナルと解釈されている (Vida et al. 2017).
この縮退は,しばしば “zebra effect” として言及される (Pettersen et al. 1992).すなわち,恒星はいくつかの暗い点を持つ明るい星なのか,あるいはいくつかの明るい点を持った暗い星なのか,という問題である.
恒星黒点は一般に周囲より暗い.これは,その部分の磁気圧が熱的な圧力とバランスするためである.
しかしある恒星は,大部分は暗く,いくつかの明るい領域が存在する場合がある.例えば T Tauri star の LkCa 4 はその一例である (Gully-Santiago et al. 2017).LkCa 4 の近赤外分光観測からは,この天体が非均一な恒星大気を持つことが明らかになっている.表面の 80% が 2800 K,20% が 4000 K の領域となっている.
現在のゼーマンドップラー撮像は恒星磁場の大規模な構造に最も敏感であるため,完全対流状態の恒星に存在する小さいスケールの磁場構造は,一般にはっきりとは分かっていない.
Reiners & Basri (2010) では,自転速度が 6 ± 2 km/s と推定されている.一方で,3.3 日の周期を自転による変動だとすると,自転速度の最大値は 1.8 km/s であることが予測される.TRAPPIST-1 の黒点は時間とともに進化すると考えられるため,3.3 日周期の周期性を長期間モニタリングし,周期性が時間的に安定しているかどうかを判断する必要がある.
恒星のスポットを研究する別の意義としては,惑星のトランジット最中のスポットの掩蔽を評価するというものがある.これは HAT-P-11 で詳細に研究されている (Morris et al. 2017).
現在のところ,ケプラーでもスピッツァー宇宙望遠鏡でも,トランジット中の惑星がスポットを掩蔽したことを示すシグナルは報告されていない (Delrez et al. 2018).このことは,もし自転変調の原因がスポットであるなら,それらは惑星が通過する弦の外側に存在しているか,あるいはスポットの占める領域が惑星の大きさよりも小さくなければいけないことを意味している.
arXiv:1803.04543
Morris et al. (2018)
Possible Bright Starspots on TRAPPIST-1
(TRAPPIST-1 上の明るい領域の可能性)
概要
M8V 星の TRAPPIST-1 は,7 個のおおむね地球サイズの惑星を持っており,系外惑星の特徴付けの良い対象天体である.ケプラーの K2 Campaign 12 期間の TRAPPIST-1 の観測では,可視光で自転による変調と思われる 3.3 日周期の変動が検出された,しかし,この変動はスピッツァー宇宙望遠鏡の 4.5 µm 波長では明確に検出されなかった.もし検出された自転変調が黒点によるものである場合,永続的に暗い黒点が存在しているという可能性は,スピッツァー宇宙望遠鏡では光度曲線中に測光変動が存在しなかったことから,除外することができる.
ここでは,ケプラーとスピッツァー宇宙望遠鏡の光度曲線の双方と整合的な,TRAPPIST-1 の光球にある明るい領域が引き起こす自転変調の測光モデルを構築した.その結果,領域の典型的なサイズが恒星半径の 0.004 倍程度,領域の温度が 5300 K 程度の明るい点が 3 つ存在するというモデルが,もっとも尤度が大きいモデルとなった.
また,最も明るい領域が観測者の方を向いている時に,大きなフレアがしばしば観測されることを発見した,これは,明るい領域の位置とフレアイベントに相関があることを示唆している.さらにこれらのフレアは,領域の輝度が増加している段階で起きやすい可能性がある.このことは,検出されている 3.3 日の周期は自転によるシグナルではなく,活動領域の特徴的なタイムスケールである可能性を示唆している.
背景
TRAPPIST-1 の変動の検出
TRAPPIST-1 は,少なくとも 7 個の地球サイズの惑星を持つ (Gillon et al. 2016, 2017).この恒星は,スピッツァー宇宙望遠鏡の IRAC-2 で 4.5 µm 波長で 20 日に渡って観測された (Gillon et al. 2017,Delrez et al. 2018).またその 76 日後に,NASA の宇宙機であるケプラーを用いた,K2 Campaign 12 の観測期間でさらに 79 日に渡って観測された (Luger et al. 2017).
K2 の観測では,3.3 日周期の準周期的な変動が検出された (Luger et al. 2017,Delrez et al. 2018).これは,恒星表面にある黒点が自転により見え隠れすることによる,恒星の自転シグナルと解釈されている (Vida et al. 2017).
暗いスポットか明るいスポットか?
恒星の自転による変調をモデル化する上での問題点の一つは,光度曲線をフィッティングする際,恒星の表面に明るいスポットが複数個ある場合,あるいは暗いスポットが複数個ある場合を考えても,よくフィット出来てしまうという点である.この縮退は,しばしば “zebra effect” として言及される (Pettersen et al. 1992).すなわち,恒星はいくつかの暗い点を持つ明るい星なのか,あるいはいくつかの明るい点を持った暗い星なのか,という問題である.
恒星黒点は一般に周囲より暗い.これは,その部分の磁気圧が熱的な圧力とバランスするためである.
しかしある恒星は,大部分は暗く,いくつかの明るい領域が存在する場合がある.例えば T Tauri star の LkCa 4 はその一例である (Gully-Santiago et al. 2017).LkCa 4 の近赤外分光観測からは,この天体が非均一な恒星大気を持つことが明らかになっている.表面の 80% が 2800 K,20% が 4000 K の領域となっている.
現在のゼーマンドップラー撮像は恒星磁場の大規模な構造に最も敏感であるため,完全対流状態の恒星に存在する小さいスケールの磁場構造は,一般にはっきりとは分かっていない.
TRAPPIST-1 の自転と変動
TRAPPIST-1 の輝度変化を解釈する際の困難な点は,観測されている周期性が完全に自転に起因しているかどうかである.Reiners & Basri (2010) では,自転速度が 6 ± 2 km/s と推定されている.一方で,3.3 日の周期を自転による変動だとすると,自転速度の最大値は 1.8 km/s であることが予測される.TRAPPIST-1 の黒点は時間とともに進化すると考えられるため,3.3 日周期の周期性を長期間モニタリングし,周期性が時間的に安定しているかどうかを判断する必要がある.
恒星のスポットを研究する別の意義としては,惑星のトランジット最中のスポットの掩蔽を評価するというものがある.これは HAT-P-11 で詳細に研究されている (Morris et al. 2017).
現在のところ,ケプラーでもスピッツァー宇宙望遠鏡でも,トランジット中の惑星がスポットを掩蔽したことを示すシグナルは報告されていない (Delrez et al. 2018).このことは,もし自転変調の原因がスポットであるなら,それらは惑星が通過する弦の外側に存在しているか,あるいはスポットの占める領域が惑星の大きさよりも小さくなければいけないことを意味している.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1803.05238
Suzuki et al. (2018)
A Likely Detection of a Two-Planet System in a Low Magnification Microlensing Event
(低増光マイクロレンズイベント中の 2 惑星系の検出候補)
このイベントは 2 つの短期間のアノマリーを示す.光度曲線のベストフィットモデルからは,2 つのアノマリーは 2 つの惑星質量天体で説明できる.二番目のアノマリーについては,ソース天体が連星だとするモデルでも説明できるが,3.1 σ で暫定的に否定される.
2 惑星モデルの場合,惑星 OGLE-2014-BLG-1722Lb は,中心星との質量比 4.5 × 10-4,アインシュタイン半径で規格化した射影距離は 0.753 である.
二番目のアノマリーの惑星 OGLE-2014-BLG-1722Lc は,中心星との質量比 7.0 × 10-4 である.なおこちらに関しては,射影距離は 2 つの解が縮退し,0.84 もしくは 1.37 である.
残念ながらこのマイクロレンズイベントは,明確な有限ソース効果とマイクロレンズ視差効果を見せなかったため,レンズ系の物理パラメータをベイズ解析で推定した.その結果,b と c の質量はそれぞれ 56 (+51, -33) 地球質量,85 (+86, -51) 地球質量と推定された.
中心星は晩期型星で 0.40 (+0.36, -0.24) 太陽質量,距離は 6.4 (+1.3, -1.8) kpcである.
各惑星の中心星からの射影距離は,b が 1.5 ± 0.6 AU,c は 1.7 (+0.7, -0.6) AU あるいは 2.7 (+1.1, -1.0) AU である.
もし 2 惑星モデルが正しい場合,この系は重力マイクロレンズ法で発見された 3 番目の複数惑星系であり,また低増光率イベントで検出された初めての複数惑星系である.
初めて重力マイクロレンズで検出された複数惑星系 OGLE-2006-BLG-109L は,木星軌道の半分程度を公転する木星型惑星と,土星の半分程度の軌道を公転する土星型の惑星を持つ系である.中心星の質量は太陽の半分程度である (Gaudi et al. 2008,Bennett et al. 2010).
2 番目は OGLE-2012-BLG-0026L (Han et al. 2013) で,木星より軽い惑星と土星より軽い惑星を持つ系である.中心星はおおむね太陽質量である (Beaulier et al. 2016).
上記の 2 イベントは,どちらも高増光率イベントである.また系の質量は,確実な視差効果の測定と,高角度分解能の撮像観測から推定されている.
arXiv:1803.05238
Suzuki et al. (2018)
A Likely Detection of a Two-Planet System in a Low Magnification Microlensing Event
(低増光マイクロレンズイベント中の 2 惑星系の検出候補)
概要
重力マイクロレンズイベント OGLE-2014-BLG-1722 の解析結果について報告する.このイベントは 2 つの短期間のアノマリーを示す.光度曲線のベストフィットモデルからは,2 つのアノマリーは 2 つの惑星質量天体で説明できる.二番目のアノマリーについては,ソース天体が連星だとするモデルでも説明できるが,3.1 σ で暫定的に否定される.
2 惑星モデルの場合,惑星 OGLE-2014-BLG-1722Lb は,中心星との質量比 4.5 × 10-4,アインシュタイン半径で規格化した射影距離は 0.753 である.
二番目のアノマリーの惑星 OGLE-2014-BLG-1722Lc は,中心星との質量比 7.0 × 10-4 である.なおこちらに関しては,射影距離は 2 つの解が縮退し,0.84 もしくは 1.37 である.
残念ながらこのマイクロレンズイベントは,明確な有限ソース効果とマイクロレンズ視差効果を見せなかったため,レンズ系の物理パラメータをベイズ解析で推定した.その結果,b と c の質量はそれぞれ 56 (+51, -33) 地球質量,85 (+86, -51) 地球質量と推定された.
中心星は晩期型星で 0.40 (+0.36, -0.24) 太陽質量,距離は 6.4 (+1.3, -1.8) kpcである.
各惑星の中心星からの射影距離は,b が 1.5 ± 0.6 AU,c は 1.7 (+0.7, -0.6) AU あるいは 2.7 (+1.1, -1.0) AU である.
もし 2 惑星モデルが正しい場合,この系は重力マイクロレンズ法で発見された 3 番目の複数惑星系であり,また低増光率イベントで検出された初めての複数惑星系である.
重力マイクロレンズでの複数惑星系
これまでに重力マイクロレンズ法を用いて発見されている複数惑星系はわずか 2 例である.重力マイクロレンズ法全体では 49 例の系外惑星が発見されているため,重力マイクロレンズ惑星のうち複数惑星系の割合は 4.1% である.初めて重力マイクロレンズで検出された複数惑星系 OGLE-2006-BLG-109L は,木星軌道の半分程度を公転する木星型惑星と,土星の半分程度の軌道を公転する土星型の惑星を持つ系である.中心星の質量は太陽の半分程度である (Gaudi et al. 2008,Bennett et al. 2010).
2 番目は OGLE-2012-BLG-0026L (Han et al. 2013) で,木星より軽い惑星と土星より軽い惑星を持つ系である.中心星はおおむね太陽質量である (Beaulier et al. 2016).
上記の 2 イベントは,どちらも高増光率イベントである.また系の質量は,確実な視差効果の測定と,高角度分解能の撮像観測から推定されている.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1803.02858
Yu et al. (2018)
Two warm, low-density sub-Jovian planets orbiting bright stars in K2 campaigns 13 and 14
(K2 Campaign 13 と 14 中の明るい恒星を公転する 2 つの暖かく低密度のサブジュピター惑星)
両方の恒星は G 型星であり,片方は主系列段階の終わりかその付近にあり,もう片方は主系列段階のちょうど半分を超えた段階である.
HD 89345 は温暖なサブサターン惑星 HD 89345b を持ち,この惑星は巨大氷惑星と巨大ガス惑星の境界に近い質量を持つ.
HD 286123b は木星サイズの低質量惑星で,やや偏心した軌道を公転している.
これらの惑星は 50 - 70 億歳とやや進化した主系列星の周りを公転しており,軌道周期は 10 日より長い.そのため,ガス惑星の進化と移動,場合によっては惑星半径の再膨張の研究対象として興味深い.
どちらの惑星も,惑星が膨張した半径を持つような恒星輻射の経験的な閾値の日射量に近い値で寿命の大部分を過ごしているが,どちらも半径膨張の兆候は見られない.そのためこれらの惑星系は,惑星半径の膨張が顕著になり始めるレジームを探査し,惑星膨張モデルを制約するのに有用である.
さらに,中心星が明るいことと,惑星の大気スケールハイトが大きいことから,これらの惑星系はトランジット分光観測の対象として非常に好ましいターゲットである.今後の観測からは,惑星大気と,おそらくはホットジュピターを膨張させる物理メカニズムへの示唆が与えられる可能性がある.
等級:V = 9.376
質量:1.225 太陽質量
半径:1.659 太陽半径
有効温度:5609 K
金属量:[Fe/H] = 0.440
光度:2.45 太陽光度
距離:126.6 pc
軌道周期:11.81433 日
質量:0.103 木星質量
半径:0.616 木星半径
軌道離心率:0.25
平均密度:0.55 g cm-3
平衡温度:1059 K
このことから,この恒星は中心部の水素を使い切ってしまったか,あるいは残りわずかであり,現在は主系列を離れて巨星分枝に向かって進化している最中であることが示唆される.
等級:V = 9.822
質量:1.062 太陽質量
半径:1.252 太陽半径
有効温度:5855 K
金属量:[Fe/H] = 0.058
光度:1.66 太陽光度
距離:133.1 pc
軌道周期:11.168453 日
質量:0.408 木星質量
半径:1.080 木星半径
軌道離心率:0.268
平均密度:0.400 g cm-3
平衡温度:999 K
なお,HD 286123b の発見は,Brahm et al. (2018) でも報告されている.
arXiv:1803.02858
Yu et al. (2018)
Two warm, low-density sub-Jovian planets orbiting bright stars in K2 campaigns 13 and 14
(K2 Campaign 13 と 14 中の明るい恒星を公転する 2 つの暖かく低密度のサブジュピター惑星)
概要
明るい恒星をトランジットする惑星 2 個の発見を報告する.ケプラー K2 ミッションの Campaign 14 期間中のデータから HD 89345b (EPIC 248777106b) を,Campaign 13 期間中のデータから HD 286123b (EPIC 247098361b) を,それぞれ発見した.両方の恒星は G 型星であり,片方は主系列段階の終わりかその付近にあり,もう片方は主系列段階のちょうど半分を超えた段階である.
HD 89345 は温暖なサブサターン惑星 HD 89345b を持ち,この惑星は巨大氷惑星と巨大ガス惑星の境界に近い質量を持つ.
HD 286123b は木星サイズの低質量惑星で,やや偏心した軌道を公転している.
これらの惑星は 50 - 70 億歳とやや進化した主系列星の周りを公転しており,軌道周期は 10 日より長い.そのため,ガス惑星の進化と移動,場合によっては惑星半径の再膨張の研究対象として興味深い.
どちらの惑星も,惑星が膨張した半径を持つような恒星輻射の経験的な閾値の日射量に近い値で寿命の大部分を過ごしているが,どちらも半径膨張の兆候は見られない.そのためこれらの惑星系は,惑星半径の膨張が顕著になり始めるレジームを探査し,惑星膨張モデルを制約するのに有用である.
さらに,中心星が明るいことと,惑星の大気スケールハイトが大きいことから,これらの惑星系はトランジット分光観測の対象として非常に好ましいターゲットである.今後の観測からは,惑星大気と,おそらくはホットジュピターを膨張させる物理メカニズムへの示唆が与えられる可能性がある.
パラメータ
HD 89345 系
HD 89345
別名:EPIC 248777106等級:V = 9.376
質量:1.225 太陽質量
半径:1.659 太陽半径
有効温度:5609 K
金属量:[Fe/H] = 0.440
光度:2.45 太陽光度
距離:126.6 pc
HD 89345b
軌道長半径:0.1086 AU軌道周期:11.81433 日
質量:0.103 木星質量
半径:0.616 木星半径
軌道離心率:0.25
平均密度:0.55 g cm-3
平衡温度:1059 K
HD 89345 系について
この恒星質量の場合,ゼロ年齢の主系列星では F6V - F7V のスペクトル型になる (Pecaut & Mamajek 2013),しかし実際には有効温度と色はスペクトル型 G5V - G6V と近い.さらに 1.66 太陽半径という大きさは,この質量の恒星のゼロ年齢主系列星での値より大きい.このことから,この恒星は中心部の水素を使い切ってしまったか,あるいは残りわずかであり,現在は主系列を離れて巨星分枝に向かって進化している最中であることが示唆される.
HD 286123 系
HD 286123
別名:EPIC 247098361等級:V = 9.822
質量:1.062 太陽質量
半径:1.252 太陽半径
有効温度:5855 K
金属量:[Fe/H] = 0.058
光度:1.66 太陽光度
距離:133.1 pc
HD 286123b
軌道長半径:0.0998 AU軌道周期:11.168453 日
質量:0.408 木星質量
半径:1.080 木星半径
軌道離心率:0.268
平均密度:0.400 g cm-3
平衡温度:999 K
HD 286123 系について
恒星の質量から予想されるスペクトル型は,おおむね G1V である.実際のこの恒星の有効温度と色はそれと整合的である.また恒星半径と光度は,この質量の恒星のゼロ年齢主系列星のものと比較すると,やや大きいもののおおむね一致する.なお,HD 286123b の発見は,Brahm et al. (2018) でも報告されている.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1803.02508
Zaghoo & Collins (2018)
Size and strength of self-excited dynamos in Jupiter-like extrasolar planets
(木星型系外惑星における自己励起ダイナモのサイズと強度)
この改定された電気伝導度を,ポリトロープペースの熱力学状態方程式と組み合わせ,質量が 0.3 - 15 木星質量,同期自転したホットジュピターから高速自転する惑星までの,100 個の系外巨大惑星でのダイナモ効果を研究した.
その結果,導電性のコアのサイズは過去の推定よりも大きいことを見出したが,この値はジュノーの観測結果と整合的であった.このことは,より重い惑星でのダイナモは shallow-seated になる可能性があることを示唆している.
今回の結果からは,大部分の系外巨大惑星は 0.1 - 10 ガウスの双極性の表面磁場を持つことが期待される.これまでに発見されているよく知られたいくつかの系外惑星は,最大サイクロトロン周波数が数 MHz 〜 30 MHz の電波放射をすることが予想される.これは過去の推定より低い値である.
この研究は,太陽系外の磁場の観測的検出可能性に対して重要な結果をもたらす.
arXiv:1803.02508
Zaghoo & Collins (2018)
Size and strength of self-excited dynamos in Jupiter-like extrasolar planets
(木星型系外惑星における自己励起ダイナモのサイズと強度)
概要
太陽系および太陽系外のガス惑星の磁化は,対流する流体内部の電子および質量輸送係数に決定的に依存している.ここでは,最近の実験室での金属水素の実験結果を解析し,木星に類似した惑星内部の新しい伝導率分布を導出した.この改定された電気伝導度を,ポリトロープペースの熱力学状態方程式と組み合わせ,質量が 0.3 - 15 木星質量,同期自転したホットジュピターから高速自転する惑星までの,100 個の系外巨大惑星でのダイナモ効果を研究した.
その結果,導電性のコアのサイズは過去の推定よりも大きいことを見出したが,この値はジュノーの観測結果と整合的であった.このことは,より重い惑星でのダイナモは shallow-seated になる可能性があることを示唆している.
今回の結果からは,大部分の系外巨大惑星は 0.1 - 10 ガウスの双極性の表面磁場を持つことが期待される.これまでに発見されているよく知られたいくつかの系外惑星は,最大サイクロトロン周波数が数 MHz 〜 30 MHz の電波放射をすることが予想される.これは過去の推定より低い値である.
この研究は,太陽系外の磁場の観測的検出可能性に対して重要な結果をもたらす.
天文・宇宙物理関連メモ vol.389.5 Gillon et al. (2016) TRAPPIST-1 まわりでの 3 惑星の発見
天文・宇宙物理関連メモ vol.389 Gillon et al. (2017) TRAPPIST-1 まわりの 7 つの惑星の発見
天文・宇宙物理関連メモ vol.703 Delrez et al. (2018) 2017 年前半のスピッツァーによる TRAPPIST-1 の観測
天文・宇宙物理関連メモ vol.435 Vida et al. (2017) TRAPPIST-1 のフレアの観測