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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1802.01024
García Muñoz (2018)
On mapping exoplanet atmospheres with high-dispersion spectro-polarimetry. Some model predictions
(高分散分光偏光での系外惑星大気のマッピングについて.いくつかのモデル予測)
今回の数値シミュレーションでは,空間的に分解されていない系外惑星が,惑星-恒星系の強度スペクトル (輝度スペクトル) と高分散直線偏光の相互相関から検出できることを示す.
惑星で反射された恒星光のドップラーシフトは,このシグナルを星間物質や地球大気によって引き起こされる偏光と分離するのを助ける.これを行うためには,惑星を調べるための軌道位相と波長の選択が非常に重要である.しかし,最も良い選択は,先験的には未知である惑星大気の情報に部分的に依存する.
非一様な雲の被覆を持つ,近接巨大系外惑星の場合を詳細に記述する.このような惑星では,恒星直下点の東西の半球はそれぞれ異なる偏光を生成する.
10 m 口径の望遠鏡での数時間オーダーの積分時間での観測の場合,この手法は等級が V = 5.5 の恒星を公転する惑星の,10 ppm の偏光を持つ非対称な雲仮説のいくつかを識別することが出来る.また,将来的な 30 - 40 m クラスの望遠鏡に高分散分光偏光器を設置した場合,より暗い恒星周りの小さい惑星の直線偏光を探査可能であり,また偏光スペクトル中の分子の特徴を探査可能である.
arXiv:1802.01024
García Muñoz (2018)
On mapping exoplanet atmospheres with high-dispersion spectro-polarimetry. Some model predictions
(高分散分光偏光での系外惑星大気のマッピングについて.いくつかのモデル予測)
概要
惑星は,中心星から受け取った光を反射して直線偏光を起こす.このとき生じる偏光は,ガス組成,凝縮物の発生とその光学的特性などの,惑星大気の特徴に影響を受ける.これらの情報を抽出することは,系外惑星の特徴付けのための大きな一歩となる.今回の数値シミュレーションでは,空間的に分解されていない系外惑星が,惑星-恒星系の強度スペクトル (輝度スペクトル) と高分散直線偏光の相互相関から検出できることを示す.
惑星で反射された恒星光のドップラーシフトは,このシグナルを星間物質や地球大気によって引き起こされる偏光と分離するのを助ける.これを行うためには,惑星を調べるための軌道位相と波長の選択が非常に重要である.しかし,最も良い選択は,先験的には未知である惑星大気の情報に部分的に依存する.
非一様な雲の被覆を持つ,近接巨大系外惑星の場合を詳細に記述する.このような惑星では,恒星直下点の東西の半球はそれぞれ異なる偏光を生成する.
10 m 口径の望遠鏡での数時間オーダーの積分時間での観測の場合,この手法は等級が V = 5.5 の恒星を公転する惑星の,10 ppm の偏光を持つ非対称な雲仮説のいくつかを識別することが出来る.また,将来的な 30 - 40 m クラスの望遠鏡に高分散分光偏光器を設置した場合,より暗い恒星周りの小さい惑星の直線偏光を探査可能であり,また偏光スペクトル中の分子の特徴を探査可能である.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1802.01081
Margot et al. (2018)
A search for technosignatures from 14 planetary systems in the Kepler field with the Green Bank Telescope at 1.15-1.73 GHz
(ケプラーフィールド中の 14 惑星系のグリーンバンク望遠鏡の 1.15 - 1.73 GHz での技術シグナルの探査)
ここでは,地球から 450 光年以内にあるアレシボクラスの送信機からの技術的な電波の放射と, 14000 光年以内にあるアレシボより 1000 倍効率的な送信機からの技術的な電波の探査を行った.100 m 口径の Green Bank Telescope (グリーンバンク望遠鏡) の L バンド受信機 (1.15 - 1.73 GHz) で,ケプラーが発見した 14 個の惑星系を観測した.それぞれの観測対象について,5 分の積分時間での観測を行った.
今回の観測対象は,ケプラー399, 186, 452, 141, 283, 22, 296, 407, 174, 62, 439, 438, 440, 442 である.
合計で 858748 個のシグナルを同定した.
ここから,自動化された除去フィルターを用いて,人工的な由来 (地球由来) を持つ無線周波妨害を判定し,99% のシグナルを除去した.残った 10157 個のシグナルをさらに解析したところ.人工的な起源を持つと考えられるほとんど全てのシグナルは除外された.除外されたものは,主に全地球的航法衛星システム (global navigation satellite systems) や衛星ダウンリンクなどに由来するシグナルである.
最終的に残ったのは 19 個のシグナルである.これらのシグナルの解析を行ったが,これらはすべて空の複数の方向で観測されたものであるため,地球外由来のシグナルである可能性は排除された.
arXiv:1802.01081
Margot et al. (2018)
A search for technosignatures from 14 planetary systems in the Kepler field with the Green Bank Telescope at 1.15-1.73 GHz
(ケプラーフィールド中の 14 惑星系のグリーンバンク望遠鏡の 1.15 - 1.73 GHz での技術シグナルの探査)
概要
ケプラーミッションのデータ解析からは,銀河系内には恒星のハビタブルゾーン内を公転する地球型惑星が数十億存在することが示唆されている.現在の観測技術は,銀河系の大部分から放出される技術的なシグナルの検出を可能にしている.ここでは,地球から 450 光年以内にあるアレシボクラスの送信機からの技術的な電波の放射と, 14000 光年以内にあるアレシボより 1000 倍効率的な送信機からの技術的な電波の探査を行った.100 m 口径の Green Bank Telescope (グリーンバンク望遠鏡) の L バンド受信機 (1.15 - 1.73 GHz) で,ケプラーが発見した 14 個の惑星系を観測した.それぞれの観測対象について,5 分の積分時間での観測を行った.
今回の観測対象は,ケプラー399, 186, 452, 141, 283, 22, 296, 407, 174, 62, 439, 438, 440, 442 である.
合計で 858748 個のシグナルを同定した.
ここから,自動化された除去フィルターを用いて,人工的な由来 (地球由来) を持つ無線周波妨害を判定し,99% のシグナルを除去した.残った 10157 個のシグナルをさらに解析したところ.人工的な起源を持つと考えられるほとんど全てのシグナルは除外された.除外されたものは,主に全地球的航法衛星システム (global navigation satellite systems) や衛星ダウンリンクなどに由来するシグナルである.
最終的に残ったのは 19 個のシグナルである.これらのシグナルの解析を行ったが,これらはすべて空の複数の方向で観測されたものであるため,地球外由来のシグナルである可能性は排除された.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1802.02250
de Wit et al. (2018)
Atmospheric reconnaissance of the habitable-zone Earth-sized planets orbiting TRAPPIST-1
(TRAPPST-1 を公転するハビタブルゾーン地球サイズ惑星の大気調査)
観測の結果,4 つの惑星はいずれも近赤外線で明確なスペクトルの特徴を示さなかった.TRAPPIST-1d, e, f に関しては,それぞれ 8σ, 6σ, 4σ の有意性で,雲を持たない水素主体の大気である可能性を棄却した.一方で TRAPPIST-1g に関しては,そのような大気を持つ可能性の排除はできなかった.
スペクトルの特徴を示さない原因として,大気中の高高度に存在する雲やヘイズの影響が考えられる.しかし TRAPPIST-1 まわりの惑星大気中では,日射量を考慮すると高高度の雲やヘイズを形成するのは難しいと考えられる.そのため今回の観測は,これらの惑星は地球型であり,居住可能な性質を持つ可能性を支持するものである.
TRAPPIST-1b と c については,様々な大気モデルと整合する,例えば水・窒素分子主体の大気,あるいは二酸化炭素主体の大気,様々な化学種で構成される希薄な大気,エアロゾルに占められた大気などである.
arXiv:1802.02250
de Wit et al. (2018)
Atmospheric reconnaissance of the habitable-zone Earth-sized planets orbiting TRAPPIST-1
(TRAPPST-1 を公転するハビタブルゾーン地球サイズ惑星の大気調査)
概要
近傍の超低温矮星 (ultra-cool dwarf) TRAPPIST-1 をトランジットする 7 つの温暖な地球サイズ系外惑星は,大気研究の対象として適している (Gillon et al. 2016, 2017).これらの惑星の大気の状態は未知であり,広がった原始的な水素主体の大気から,大気が枯渇した状態までの広い可能性が有り得る (Owen & Wu 2013など).大部分が水素で占められた大気は,もし大気中に雲が存在しない場合,トランジットの最中に近赤外線で検出可能なスペクトルの特徴を示す.TRAPPIST-1 系の最も内側の惑星に関しては,そのような特徴を示さないことが分かっている (de Wit et al. 2016).しかし最も外側の惑星は,海王星に類似した大気を持っている可能性が高い (Bolmont et al. 2016,Bourrier et al. 2017).ここでは,TRAPPIST-1 まわりのハビタブルゾーン内,あるいはハビタブルゾーン付近にある,4 つの惑星の大気観測の結果について報告する.ここでのハビタブルゾーンとは,惑星表面に液体の水が存在できるような恒星周囲の領域のことである.観測の結果,4 つの惑星はいずれも近赤外線で明確なスペクトルの特徴を示さなかった.TRAPPIST-1d, e, f に関しては,それぞれ 8σ, 6σ, 4σ の有意性で,雲を持たない水素主体の大気である可能性を棄却した.一方で TRAPPIST-1g に関しては,そのような大気を持つ可能性の排除はできなかった.
スペクトルの特徴を示さない原因として,大気中の高高度に存在する雲やヘイズの影響が考えられる.しかし TRAPPIST-1 まわりの惑星大気中では,日射量を考慮すると高高度の雲やヘイズを形成するのは難しいと考えられる.そのため今回の観測は,これらの惑星は地球型であり,居住可能な性質を持つ可能性を支持するものである.
観測と結果
ハッブル宇宙望遠鏡での観測
ハッブル宇宙望遠鏡を用いて,TRAPPIST-1d, e, f, g のトランジットを観測した.用いた装置は WFC3 で,観測波長は 1.1 - 1.7 µm の近赤外線である.観測結果
観測の結果,いずれの惑星も明確なスペクトルの特徴は示さなかった.そのため,雲のない水素分子主体の大気は,TRAPPIST-1d, e, f では棄却される.TRAPPIST-1g では 2σ であったため,雲無しで水素分子主体の大気を持つ可能性を否定できるほどの有意性はない.TRAPPIST-1b と c については,様々な大気モデルと整合する,例えば水・窒素分子主体の大気,あるいは二酸化炭素主体の大気,様々な化学種で構成される希薄な大気,エアロゾルに占められた大気などである.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1802.01377
Grimm et al. (2018)
The nature of the TRAPPIST-1 exoplanets
(TRAPPIST-1 系外惑星の性質)
TRAPPIST-1 まわりの惑星のサイズは 5% よりも良い精度で推定されているが,惑星質量への制約の精度があまり良くないため,推定の平均密度には 28 - 95% の大きな不定性がある.この論文の目的は,トランジット時刻変動 (transit timing variation, TTV) を用いて,この系の惑星質量と密度に関する現在の我々の知見を改善することである.
TTV の逆問題 (inversion problem) の複雑さは,多重惑星系においては特に深刻 (収束の問題,パラメータ空間の縮退とサイズ) であることが知られている.特に TRAPPIST-1 系のように惑星が共鳴鎖にある惑星系の場合は複雑さが顕著である.
これらの困難を克服するため,N 体計算と組み合わせた遺伝的アルゴリズムを用いた新しい手法を,284 セットのそれぞれのトランジット時刻に対して適用した.この手法によってパラメータ空間を効率的に探索することが可能になり,7 個の惑星の TTV から信頼できる質量と密度を導出できる.
その結果,新しい推定質量によって惑星密度の不定性を 5 - 8 倍改善し,精度を 5 - 12% とすることが出来た.
この新しい値から,TRAPPIST-1 系の惑星の全体の構造について新しい知見を得ることが出来る.TRAPPIST-1c と e は大部分が岩石で占められる内部構造を持つと考えられる.一方で TRAPPIST-1 b, d, f, g, h は,厚い大気,海洋,あるいは氷での揮発性物質のエンベロープが必要と考えられる,大部分のケースでは,惑星全体に占める水の質量割合は 5%未満と推定される.
arXiv:1802.01377
Grimm et al. (2018)
The nature of the TRAPPIST-1 exoplanets
(TRAPPIST-1 系外惑星の性質)
概要
TRAPPIST-1 系は,超低温矮星 (ultra-cool dwarf) を公転する,適度な表面温度の 7 個の地球サイズ惑星を持つ系である.この系は,同じ原始惑星系円盤内で形成された地球型惑星の形成と進化の研究対象として注目に値するサンプルである.TRAPPIST-1 まわりの惑星のサイズは 5% よりも良い精度で推定されているが,惑星質量への制約の精度があまり良くないため,推定の平均密度には 28 - 95% の大きな不定性がある.この論文の目的は,トランジット時刻変動 (transit timing variation, TTV) を用いて,この系の惑星質量と密度に関する現在の我々の知見を改善することである.
TTV の逆問題 (inversion problem) の複雑さは,多重惑星系においては特に深刻 (収束の問題,パラメータ空間の縮退とサイズ) であることが知られている.特に TRAPPIST-1 系のように惑星が共鳴鎖にある惑星系の場合は複雑さが顕著である.
これらの困難を克服するため,N 体計算と組み合わせた遺伝的アルゴリズムを用いた新しい手法を,284 セットのそれぞれのトランジット時刻に対して適用した.この手法によってパラメータ空間を効率的に探索することが可能になり,7 個の惑星の TTV から信頼できる質量と密度を導出できる.
その結果,新しい推定質量によって惑星密度の不定性を 5 - 8 倍改善し,精度を 5 - 12% とすることが出来た.
この新しい値から,TRAPPIST-1 系の惑星の全体の構造について新しい知見を得ることが出来る.TRAPPIST-1c と e は大部分が岩石で占められる内部構造を持つと考えられる.一方で TRAPPIST-1 b, d, f, g, h は,厚い大気,海洋,あるいは氷での揮発性物質のエンベロープが必要と考えられる,大部分のケースでは,惑星全体に占める水の質量割合は 5%未満と推定される.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1802.00049
Dai & Guerras (2018)
Probing Planets in Extragalactic Galaxies Using Quasar Microlensing
(クエーサーマイクロレンズを用いた銀河系外銀河中の惑星探査)
ここでは,背景クエーサーのマイクロレンズ現象が,レンズ銀河中 (背景天体と地球との間にあり,重力レンズの役割を果たしている銀河) にある銀河系外惑星を探査するための手段となりうることを示す.この方法では,背景クエーサーに存在する超大質量ブラックホールの,事象の地平面付近からの放射が受けるマイクロレンズ特性について調査する.
ここでは,赤方偏移が z = 0.295 (38 億光年遠方) のレンズ銀河によって重力レンズを受けている背景クエーサーである RXJ 1131−1231 について調査を行った.クエーサーからの放射における頻繁な Fe Kα 線のエネルギーシフトを説明するためには,手前にあるレンズ銀河中に,月質量から木星質量の間の質量を持つ,恒星に束縛されていない惑星の集団が必要であることを示す.
またこの解析から,レンズ銀河中の惑星質量の割合に制約を与えた.その結果,レンズ銀河のハロー質量の 0.0001 倍よりも大きな質量が必要であることが示唆された.この値は,月〜木星質量の天体が,レンズ銀河中の主系列星 1 個に対して 2000 個存在する必要があるということと同等である.
銀河系内での重力マイクロレンズによる惑星探査と同様に,マイクロレンズと銀河スケールの重力レンズを組み合わせることで,系外銀河中の惑星を検出することが出来ると期待される,ここではクエーサー-銀河の強い重力レンズ系に着目した.
背景クエーサーが前景の銀河による重力レンズを受けている場合,重力レンズによってクエーサーの複数の像が生成される (Walsh et al. 1979).これらのクエーサーからの光は,前景の銀河の異なる場所を通過して地球にやってきている.さらに,レンズ銀河中にある光路近くの恒星によっても重力レンズ効果を受ける.
この効果はクエーサーマイクロレンズ (quasar microlensing) と呼ばれる (Wambsganss 2006,Kochanek et al. 2007).
クエーサーマイクロレンズは,銀河中心部の超大質量ブラックホールまわりにあるクエーサー降着円盤の構造の測定や (Kochanek2004,Dai et al. 2010,Chen et al. 2011, 2012,Mosquera et al. 2013,Chartas et al. 2017,Guerras et al.2017など),レンズ銀河の質量分布の特性を測定するために広範囲に使用されている (Morgan et al. 2008,Bate et al.2011,Blackburne et al. 2014など).
超大質量ブラックホールの事象の地平面に近い,降着円盤のより小さい放射領域を調べると,レンズ銀河中の惑星の重力場による全体の重力レンズ効果に寄与が検出できるため,銀河系外銀河中の系外惑星を探査することが出来る可能性がある.
RXJ 1131-1231 は四重極レンズ系であり,背景天体の赤方偏移は z = 0.658,レンズ天体の赤方偏移は z = 0.295 (Sluse et al. 2003) となっている.
背景天体の中心にあるブラックホールの質量は 1.3 × 108 太陽質量 (Dai et al. 2010) であるため,ブラックホールの重力半径は 1.9 × 1013 cm である.対応するアインシュタインリング半径は 7.9 × 1013 (M/ME)1/2 cm となる.従って,特にブラックホール近傍の 10 重力半径以内の X 線の反射成分は,惑星サイズ天体の重力レンズ効果を大きく受ける.
この系は Chandra X-ray Observatory によって過去 10 年の間に 38 回観測されている.観測データの分析からは,ソース天体中の X 線の反射成分にマイクロレンズの特徴が検出されている (Chartas et al. 2009,2012,2017).ここでは特に,Fe Kα 線の特徴に着目した.
この質量比は,月から木星程度の質量範囲にある惑星が,主系列星 1 個あたり 2000 個程度以上存在することと等価である.あるいは,主系列星 1 個あたり火星から木星の質量範囲の惑星が 200 個程度以上存在し,うち 0.08 個が木星質量程度であることと等価である.
この質量に対する制約は,月から木星質量の惑星の理論的な推定値の上限である ~ 105 (Strigari et al. 2012) と整合的である,
また,最近の観測から与えられている,主系列星 1 個当たり 0.25 個の木星型惑星が銀河系内に存在するという制約とも整合的である (Mroz et al. 2017).これらのうち,中心星から遠方にあるが恒星に束縛されている惑星もかなりの割合を占める可能性がある (Sumi et al. 2011).これらの識別については,将来の調査に頼ることになる.
arXiv:1802.00049
Dai & Guerras (2018)
Probing Planets in Extragalactic Galaxies Using Quasar Microlensing
(クエーサーマイクロレンズを用いた銀河系外銀河中の惑星探査)
概要
これまでの系外惑星は,全て銀河系内のみでの発見に限られていた.ここでは,背景クエーサーのマイクロレンズ現象が,レンズ銀河中 (背景天体と地球との間にあり,重力レンズの役割を果たしている銀河) にある銀河系外惑星を探査するための手段となりうることを示す.この方法では,背景クエーサーに存在する超大質量ブラックホールの,事象の地平面付近からの放射が受けるマイクロレンズ特性について調査する.
ここでは,赤方偏移が z = 0.295 (38 億光年遠方) のレンズ銀河によって重力レンズを受けている背景クエーサーである RXJ 1131−1231 について調査を行った.クエーサーからの放射における頻繁な Fe Kα 線のエネルギーシフトを説明するためには,手前にあるレンズ銀河中に,月質量から木星質量の間の質量を持つ,恒星に束縛されていない惑星の集団が必要であることを示す.
またこの解析から,レンズ銀河中の惑星質量の割合に制約を与えた.その結果,レンズ銀河のハロー質量の 0.0001 倍よりも大きな質量が必要であることが示唆された.この値は,月〜木星質量の天体が,レンズ銀河中の主系列星 1 個に対して 2000 個存在する必要があるということと同等である.
クエーサーマイクロレンズ
過去 20 年あまりに渡る研究により,惑星は銀河系内で普遍的な存在であることが分かっている.これを系外銀河に外挿すると,惑星は系外銀河中でも一般的に存在する天体であると仮定するのは自然である.しかし,これを検証する観測技術は存在しなかった.これは,銀河系外惑星は非常に遠く,分離して観測するのが困難だからである.銀河系内での重力マイクロレンズによる惑星探査と同様に,マイクロレンズと銀河スケールの重力レンズを組み合わせることで,系外銀河中の惑星を検出することが出来ると期待される,ここではクエーサー-銀河の強い重力レンズ系に着目した.
背景クエーサーが前景の銀河による重力レンズを受けている場合,重力レンズによってクエーサーの複数の像が生成される (Walsh et al. 1979).これらのクエーサーからの光は,前景の銀河の異なる場所を通過して地球にやってきている.さらに,レンズ銀河中にある光路近くの恒星によっても重力レンズ効果を受ける.
この効果はクエーサーマイクロレンズ (quasar microlensing) と呼ばれる (Wambsganss 2006,Kochanek et al. 2007).
クエーサーマイクロレンズは,銀河中心部の超大質量ブラックホールまわりにあるクエーサー降着円盤の構造の測定や (Kochanek2004,Dai et al. 2010,Chen et al. 2011, 2012,Mosquera et al. 2013,Chartas et al. 2017,Guerras et al.2017など),レンズ銀河の質量分布の特性を測定するために広範囲に使用されている (Morgan et al. 2008,Bate et al.2011,Blackburne et al. 2014など).
超大質量ブラックホールの事象の地平面に近い,降着円盤のより小さい放射領域を調べると,レンズ銀河中の惑星の重力場による全体の重力レンズ効果に寄与が検出できるため,銀河系外銀河中の系外惑星を探査することが出来る可能性がある.
クエーサーマイクロレンズによる惑星探査
ここでは,RXJ 1131-1231 の重力レンズの観測データの一部は,惑星からのレンズ効果で説明できることを示す.RXJ 1131-1231 は四重極レンズ系であり,背景天体の赤方偏移は z = 0.658,レンズ天体の赤方偏移は z = 0.295 (Sluse et al. 2003) となっている.
背景天体の中心にあるブラックホールの質量は 1.3 × 108 太陽質量 (Dai et al. 2010) であるため,ブラックホールの重力半径は 1.9 × 1013 cm である.対応するアインシュタインリング半径は 7.9 × 1013 (M/ME)1/2 cm となる.従って,特にブラックホール近傍の 10 重力半径以内の X 線の反射成分は,惑星サイズ天体の重力レンズ効果を大きく受ける.
この系は Chandra X-ray Observatory によって過去 10 年の間に 38 回観測されている.観測データの分析からは,ソース天体中の X 線の反射成分にマイクロレンズの特徴が検出されている (Chartas et al. 2009,2012,2017).ここでは特に,Fe Kα 線の特徴に着目した.
議論
マイクロレンズ現象から推定される惑星の表面質量密度は,レンズ銀河の全体質量の 0.0001 倍程度以上と推定される.また,惑星と恒星の質量比は 0.001 程度以上と推定される.この質量比は,月から木星程度の質量範囲にある惑星が,主系列星 1 個あたり 2000 個程度以上存在することと等価である.あるいは,主系列星 1 個あたり火星から木星の質量範囲の惑星が 200 個程度以上存在し,うち 0.08 個が木星質量程度であることと等価である.
この質量に対する制約は,月から木星質量の惑星の理論的な推定値の上限である ~ 105 (Strigari et al. 2012) と整合的である,
また,最近の観測から与えられている,主系列星 1 個当たり 0.25 個の木星型惑星が銀河系内に存在するという制約とも整合的である (Mroz et al. 2017).これらのうち,中心星から遠方にあるが恒星に束縛されている惑星もかなりの割合を占める可能性がある (Sumi et al. 2011).これらの識別については,将来の調査に頼ることになる.
天文・宇宙物理関連メモ vol.389.5 Gillon et al. (2016) TRAPPIST-1 まわりでの 3 惑星の発見
天文・宇宙物理関連メモ vol.389 Gillon et al. (2017) TRAPPIST-1 まわりの 7 つの惑星の発見