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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1801.05806
Calchi Novati et al. (2018)
Spitzer Microlensing Parallax for OGLE-2016-BLG-1067: a sub-Jupiter Orbiting an M-dwarf in the Disk
(OGLE-2016-BLG-1067 のスピッツァーマイクロレンズ視差:円盤内の M 型矮星を公転するサブジュピター)

概要

M 型星まわりのスノーライン外側を公転する,サブジュピター質量の惑星の重力マイクロレンズ法による発見を報告する.中心星 OGLE-2016-BLG-1067 は,銀河円盤に属する恒星であると思われる.今回の検出は,銀河バルジ方向のマイクロレンズを探査する,地上モニタリングとスピッツァー宇宙望遠鏡の共同研究の一環によるものである.

マイクロレンズ現象のパラメータは,特にスピッツァー宇宙望遠鏡によるマイクロレンズの視差の観測によって,光度曲線から強く制約を付けることが出来た.しかし今回のイベントは多くの惑星マイクロレンズイベントとは異なり,焦線 (caustics) を横切らないイベントであり,そのためアインシュタイン角半径は光度曲線のモデリング単独では上限値しか決定することができなかった.
さらに,解析からは 8 個の縮退した天体配置の解が得られた.マイクロレンズの視差における 4 重の縮退と,地上観測の水準での焦線の構造の 2 つの縮退の掛け算によるものである.

物理パラメータを特定し,また同時に視差の縮退を解くため,幾つかの方法を試みた.ここで用いたのは,カイ二乗ヒエラルキー,Rich argument,prior Galactic model である.

もっともらしいモデルは,中心星は距離が 3.73 kpc で 0.30 太陽質量,公転している天体は 0.43 木星質量と土星的な惑星で,射影した軌道長半径が 1.70 au というものである.この軌道長半径は,この系のスノーラインの 2.1 倍の距離に相当する.そのためこの惑星 OGLE-2016-BLG-1067b は,マイクロレンズ法で発見数が増えている,M 型星まわりのスノーライン以遠を公転する,サブジュピター惑星の仲間である事が分かった.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1801.05812
Dipierro et al. (2018)
Rings and gaps in the disc around Elias 24 revealed by ALMA
(ALMA によって明らかにされた Elias 24 まわりの円盤中のリングとギャップ)

概要

Atacama Large Millimeter/sub-millimeter Array (アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計,ALMA) の Cycle 2 観測で,おうし座T型星 Elias 24 周りの原始惑星系円盤の 1.3 mm ダスト連続放射の観測を行った.この観測の角度分解能は ~ 0.2” (~ 28 au) である.

ダスト連続波放射の画像からは,暗いリング構造が 0.47” の距離 (~ 65 au) に検出され,その外側に明るいリング構造が 0.58” の距離 (~ 81 au) に検出された,外側の円盤では,半径方向の強度分布に 2 箇所の変曲点があり,それぞれ 0.71” と 0.87” (~ 99 au と 121 au) の位置である.

円盤の大局的三次元 smoothed particle hydrodynamics のガス・ダストシミュレーションで,降着し軌道移動を起こしている惑星を持つ円盤のシミュレーションを行った.ギャップとリング構造の観測を再現するため,小さいダストと大きいダストの密度分布マップと 3 次元輻射輸送計算を合わせ,様々な円盤モデルで ALMA の模擬観測画像を作成した.

その結果,~ 60 au の位置に ~ 0.7 木星質量の惑星が存在している場合に,観測結果と整合的な構造を再現できることを見出した.今回のモデルでは,半径方向の強度分布における二箇所の変曲点は,大きなダスト粒子の外側円盤からの内側への運動によって作られたものである事が示唆される.

Elias 24

Elias 24 の特徴

Elias 24 は,年齢がおよそ 40 万歳の若い前主系列星 (pre-main sequence star) であり,スペクトル型は K5 である.この天体まわりの円盤の存在が可視光で観測されている (Wilking et al. 2005).
この天体は ρ-Ophiucus Star Forming Region (へびつかい座ロー星形成領域) の中にあり,太陽系から 139 pc の距離にある (Mamajek 2008).最近のより良いへびつかい座ロー星形成領域の観測からは,距離は 137.3 pc と見積もられている (Ortiz-Leo ́n et al. 2017).ただしここでは Mamajek (2008) での距離を使用する.

この天体のスペクトルエネルギー分布からは,この天体が Class II の Young Stellar Object (YSO,若い恒星状天体) である事が分かっている.

ALMA での円盤観測

なお,この論文の査読中に,同じ天体の 870 µm と 1.3 mm での観測結果が公開された (Cox et al. 2017, Cieza et al. 2017).

Cieza et al. (2017) は角度分解能 0.25" ×0.2” の観測で,中心星から ~ 0.18”,0.42”,0.7” の位置にギャップ状の構造を検出している.観測波長は 1.3 mm である.また,visibility の重み付けは一様としている.

Cox et al. (2017) では,870 µm 波長での ALMA 観測で,中心星から ~ 0.42” の位置に一つのギャップ構造を検出している.こちらの角度分解能は 0.21” × 0.18” であり,visibility の重み付けは natural weighting で行っている.

Cox et al. (2017) で検出されたギャップと Cieza et al. (2017) で検出された二番目のギャップは,ここでの 0.47” でのギャップと概ね一致する.また,今回検出された 0.71” での変曲点は,Cieza et al. (2017) の三番目のギャップの位置と一致する.

Cox et al. (2017) の結果と同様に,Cieza et al. (2017) の 0.18” でのギャップは検出されなかった.

過去のこれらの研究では,観測がスナップショットモードで行われており,それぞれ積分時間はおよそ 45 秒である.その結果として uv-coverage が疎になり,画像忠実度 (image fidelity) は今回の結果に比べ低い.今回の結果の積分時間は先行研究より 17 倍長く,感度は 3 倍良く,また空間分解能も良い.そのため,より正確な円盤構造を決定できる.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1801.05850
Chauvin et al. (2018)
Investigating the young Solar System analog HD95086
(若い太陽類似星 HD 95086 の調査)

概要

HD 95086 (A8V 星,年齢 1700 万歳) は,珍しい惑星系を伴っている.この系では,複数の帯のデブリ円盤と,4 - 5 木星質量の巨大惑星が,どちらも直接撮像によって観測されている.

ここでは,視線速度観測と直接撮像観測の組み合わせから,この若い系の全体的な構造を特徴づける研究を行った.主な目的は,惑星 HD 95086b の物理特性と軌道特性の特徴付けと.より短周期・長周期の別の惑星の存在を探査し,低温の外側デブリ帯を散乱光で撮像することである.

視線速度は,European Southern Observatory の 3.6 m 望遠鏡に設置されている HARPS を用いて 2 年以上に渡って観測し,3 au 以内の巨大惑星の存在を探査した.また,Very Large Telescope の SPHERE の IFS 積分場分光器と IRDIS 多バンド撮像 を用いて,2015 - 2017 年の間の 6 回に渡って,10 au 以遠のかすかな星周環境の撮像観測を行った.

その結果,別の巨大惑星は検出されなかった.
IRDIS の視野中に発見された点源については,この系に付随する伴星なのか,あるいは背景天体の混入なのかの性質の同定を行った.

低温の外側ベルトの縁付近に最近 ALMA によって発見された天体に対応するものは検出されなかった.

HD 95086b はまず IFS を用いた観測の J バンドで分解された.その近赤外線のスペクトルエネルギー分布は,L7 - 9 矮星のスペクトルテンプレートか,あるいはそれにわずかにダストを伴ったものでよくフィット出来ることが分かった.1 - 4 µm での非常に赤いスペクトル分布は,L/T 型の遷移にいる低重力の天体に典型的なものであった.

惑星の軌道運動は 2015 年 1 月と 2017 年 5 月の間で分解された.過去の NaCo 測定と併せた解析より,軌道は逆行であり,軌道離心率は低いか中間程度の値である 0.2 (+0.3, -0.2) と推定される.
軌道長半径は 52 au 程度であり,これは軌道周期が 288 年程度であることに対応する.また軌道傾斜角は 141° 程度であり.これは惑星と円盤が同一平面であることを示唆している.

また,100 - 300 au の間の低温の外側デブリ帯の偏光微分撮像の検出を報告する,この帯の動径方向の広がりは,最近の ALMA 1.3 mm での観測と整合的である.

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arXiv:1801.06094
Cilibrasi et al. (2018)
Satellites Form Fast & Late: a Population Synthesis for the Galilean Moons
(衛星は速くそして遅く形成する:ガリレオ衛星の種族合成)

概要

木星の衛星は,周惑星円盤 (circumplanetary disk) の中で形成されたと考えられている.
ここでは,木星衛星の形成と軌道進化を,種族合成 (population synthesis) のアプローチから取り組んだ.周惑星円盤のダスト・ガス比,円盤散逸のタイムスケール,ダスト補充タイムスケールを変化させて計算を行った.また,周惑星円盤の初期条件 (密度と温度) は,三次元輻射流体力学シミュレーションの結果から直接引用した.微衛星 (satellitesimal) は流動不安定性 (streaming instability) で形成されると仮定した.

その結果,周惑星円盤内で衛星は急速に形成される事が分かった.形成に必要な時間はしばしば 104 年以内となった.これは,周惑星円盤の軌道タイムスケールの短さに起因している.

衛星は円盤内で順番に形成され,それらは急速な I 型惑星移動で惑星へ向かって落下し,失われる.そのため,落下した衛星によって木星のエンベロープは汚染される.木星エンベロープに落下する金属成分は 0.3 地球質量が典型的な値であり,場合によっては最大で 10 地球質量程度になる.

衛星の最終世代は,巨大惑星の進化の非常に後期に形成可能になる,周惑星円盤が質量の 99% 以上を失ってしまった後の.後期段階の周惑星円盤は水氷を維持できる程度に十分低温になる.そのため,この中で形成された衛星の 85% が氷組成を持つことは驚きでない.

形成される衛星質量の分布は,ガリレオ衛星質量よりやや大きい辺りが極大であり,最大では数地球質量程度になる.この大きさは,中心星から 1 AU の位置を公転する木星類似惑星周りに存在した場合,現在の観測装置で観測可能な範囲である.
また,ガリレオ衛星程度の質量を持つ衛星系は,20% 程度の割合で発生する.これは,周惑星円盤の散逸タイムスケールが長く,ダスト・ガス比が高い時に起きやすい.

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arXiv:1801.06131
Quarles & Lissauer (2018)
Long-Term Stability of Tightly Packed Multi-Planet Systems in Prograde, Coplanar, Circumstellar Orbits within the α Centauri AB System
(ケンタウルス座アルファ星 AB 系中の順行,同一平面の星周軌道における密集した多重惑星系の長期安定性)

概要

ケンタウルス座アルファ星A,B それぞれの周りにおける惑星系の長期安定性についての研究を行った.ここで考慮したのは,地球と同程度の質量を持ち,お互いに近接した配置の軌道で 2 - 6 個の惑星がある系の,最大で 100 億年にわたる長期間の安定性である.また,最も内側の惑星が,初期に恒星の経験的なハビタブルゾーンの内縁か,保守的なハビタブルゾーンの内縁のどちらかを公転しているという状況を仮定した.

その結果,低軌道傾斜角,低軌道離心率の軌道にあるそれぞれの惑星は,どちらの星のハビタブルゾーン内でも生き残ることが出来ることが分かった.しかし長期間安定した軌道を保つためには,ハビタブルゾーン内にある惑星の最小軌道間隔は,単独の恒星周りのハビタブルゾーン内での最小軌道間隔よりもずっと大きい必要がある.これは,伴星からの擾乱が存在するためである.

伴星天体は,もう一方の恒星の周囲を公転する惑星の軌道の軌道離心率を増大させる.適当な位相で,初期の離心率がその強制された軌道離心率に等しい場合は,初期に円軌道でより間隔の狭い軌道配置である場合より高確率で生き残ることが出来るが,安定であるために必要な軌道間隔は単独星周りでの場合よりも大きくなる.

入れ子構造 (惑星が A,B それぞれの周りを公転する場合) で順行軌道の場合,合計で最大 9 個の惑星が経験的なハビタブルゾーンの内部で現在の年齢まで生き残ることが出来る.ケンタウルス座アルファ星B の周りが最大 5 個,ケンタウルス座アルファ星A の周りが最大 4 個である.

ケンタウルス座アルファ星について

ケンタウルス座アルファ星系は,合計で 3 つの恒星からなる三重連星系である.2 つの大きな恒星 ケンタウルス座アルファ星A と B があり,お互いの周りを離心軌道で公転しており,近点距離は ~ 11 AU である.A と B の質量は太陽に近く (それぞれ 1.133,0.972 太陽質量,Pourbaix & Boffin 2016),光度はそれぞれ 1.519,0.5 太陽光度である Th ́evenin et al. (2002).

さらに,3 個目の緩く束縛された恒星 ケンタウルス座アルファ星C があり,こちらは A,B よりもずっと小さく暗い.C の軌道長半径は,系の重心から ~ 9000 AU と推定されている (Kervella et al. 2017).
ケンタウルス座アルファ星C は太陽系に最も近い恒星であるため,Proxima Centauri (プロキシマ・ケンタウリ) とも呼称される.

惑星降着の理論モデルは,ケンタウルス座アルファ星A と B のまわりにそれぞれ惑星系が形成されることを示唆している (Quintana et al. 2002など).


近年この系は,系外惑星の検出という観点で注目を集めている.例えば,プロキシマ・ケンタウリの周囲にはプロキシマb が発見されている (Gillon et al. 2016).さらに,ケンタウルス座アルファ星B では恒星に近接した軌道を持つ惑星ケンタウルス座アルファ星Bb の検出も報告されている (Dumusque et al. 2012),しかし,解析方法の精密な調査からはこの検出には疑念が投げかけられている (Hatzes 2013,Rajpaul et al. 2016).この連星系は継続的に観測されており,ケンタウルス座アルファ星B でのいくらか遠い軌道でのトランジットかもしれないシグナル (単一イベント) の検出報告も存在する (Demory et al. 2015),なお,地上からの視線速度観測からは,恒星に近接した軌道を持つ,非常に重い惑星の存在は否定されている (Endl et al. 2015).

Zhao et al. (2017) では,これまでのデータに基づき,古典的に定義されたハビタブルゾーン内での惑星の検出の閾値は,ケンタウルス座アルファ星A のまわりでは 50 地球質量程度以下,B では 10 地球質量程度以下としている.また,ケンタウルス座アルファ星A と B のまわりのハビタブルゾーン内を公転するかもしれない惑星の,宇宙空間からの直接撮像の可能性についても研究中である (Belikov & ACESat Team 2015など).






arXiv:1801.06116
Quarles et al. (2018)
Long-Term Stability of Planets in the α Centauri System, II: Forced Eccentricities
(ケンタウルス座アルファ星系の惑星の長期安定性 II:強制離心率)

概要

ケンタウルス座アルファ星AB 系内での,小さい惑星が十億年のタイムスケールで安定して公転できる範囲についての研究 (Quarles & Lissauer 2016) の拡張を行った.主な目的は,初期の軌道配置の強制離心率 (forced eccentricity) を最小化する効果について調べることである.

初期に順行で円軌道を持っている場合は,強制された離心率を軌道長半径の関数として正確に近似するためには区分的な二次関数を必要とするが,逆行軌道の場合は線形関数でモデル化出来ることを発見した.

ケンタウルス座アルファ星AB の周連星軌道 (circum-binary orbit) の場合は,結果は強制された軌道離心率にあまり影響されない.離心率ベクトルが強制された値に近い状態で始まった周連星軌道にいる惑星は,一般的に最大で 109 年にわたって安定である.安定した領域が拡大する量は,順行軌道よりも逆行軌道のほうが大きい.

2 惑星が順行で円軌道にいる系での安定境界の場所は,類似した単独惑星系の場合よりも初期の離心率状態に遥かに敏感である.

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