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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1911.12687
Gu et al. (2019)
Modeling the Thermal Bulge of A Hot Jupiter with the Two-Stream Approximation
(二流近似を用いたホットジュピターの熱バルジのモデル化)

概要

HD 209458b を基準として,非同期回転をしているホットジュピターの熱バルジの問題を再考する.

ここでは,内部構造モデリングの計算コード MESA の二重灰色大気モデルと内部構造を背景状態として用いることで以前の研究を改善し,恒星輻射の半日周期成分に応じて惑星の熱バルジを解くという手法を用いる.

惑星の大気モデルは,エディントンの二流近似による輻射輸送に基づく.また,2 つの不透明度を考慮する.1 つ目は大気の温室効果を再現するもので,2 つ目は強い温度逆転層を再現するものである.

結果として,低次の g モードによって励起された主要な熱バルジについては,今回の結果は Arras & Socrates (2010) による断熱を仮定した場合の結果と定量的に類似している.これは,熱放射の自己吸収による摂動加熱が Newton damping に対して大きくなる可能性があるため (つまり温室効果),それによりほとんど減衰のない熱バルジが生じるためである.

また,対流領域におけるエバネッセント波による熱バルジへの寄与は無視できないものであることを見出した.これは,熱バルジが単に大気と放射エンベロープに限定されないことを意味する.
さらに,熱バルジと重力バルジの間のトルクのバランスを仮定して,観測された惑星半径に一致する惑星の重力的潮汐における潮汐 quality factor を推定した.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1911.12767
Venturini & Helled (2019)
Jupiter's heavy-element enrichment expected from formation models
(形成モデルから予想される木星の重元素増加)

概要

この研究の目的は,木星に降着した重元素の量に注目し,最近の木星の構造モデルと比較することで,木星の成長を調査することである.
今回のモデルでは,木星の形成過程として,初期はコアの成長においてペブル降着が支配的の状況を仮定し,続く 2 番目の成長フェーズでは微惑星とガス両方の穏やかな降着に移行することを仮定する.また 3 番目のフェーズでは,惑星が円盤から切り離された状態になるような,暴走ガス降着が支配的であるとする.

2 番目と 3 番目のフェーズは,2 つの異なる微惑星降着の手法と,円盤から切り離されたフェーズでのガス降着を計算する流体力学的な研究からのフィットを考慮して詳細に計算を行った.

微惑星の降着が支配的になると,構造モデルから示唆される ~20-40 地球質量の重元素量を説明するためには,木星の形成場所は太陽から 1-10 au の範囲内が好ましいことを見出した.また,暴走ガス降着が発生している間に,木星は ~1-15 地球質量の重元素を降着することを見出した.この値は,微惑星の初期面密度と,惑星形成の最終段階の間の重元素降着の推定に用いた手法に依存する.

今回の結果からは,木星のエンベロープに含まれる金属量は太陽の ~0.5 - ~3 倍になることが予測される.固体 (重元素) の分離時期における降着を計算することで,惑星の質量-金属量関係を,微惑星円盤のギャップが形成された段階で \(M_{Z}\sim M_{\rm p}^{2/5}\),微惑星ギャップがない場合は \(M_{Z}\sim M_{\rm p}^{1/6}\) となることが示唆される.

今回想定したハイブリッドべブル・微惑星モデルは,木星の全体及び大気の重元素量増加を説明可能である.
多くの巨大系外惑星で推定されている高い金属量は,一般的な形成モデルで説明するのは難しい.このことは,このような金属量が多い巨大系外惑星は,大きく軌道移動を起こしたか,円盤散逸後の巨大衝突,あるいはその両方を経験したことを示唆している可能性がある.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1911.12357
Belczynski et al. (2019)
The Formation of a 70 Msun Black Hole at High Metallicity
(高金属量での 70 太陽質量ブラックホールの形成)

概要

銀河系円盤内で,8 太陽質量の B 型伴星を持つ長周期 (78.9 日) のほぼ円軌道 (e = 0.03) の連星系 LB-1 で,70 太陽質量のブラックホールの発見が報告された.この B 型星の金属量は太陽金属量と近い.

高金属量の恒星でのブラックホールの形成においては,ブラックホール質量は 20 太陽質量未満に制限されるというのが現在のコンセンサスである.これは,恒星風による強い質量損失を起こすためである.これは,銀河系内にあるブラックホールを持つ 20 個の X 線連星のうち,最も重い Cyg X-1 (はくちょう座X-1) が 15 太陽質量を持つことからも支持されている.


ここでは,Hurley et al. (2000) の解析的な進化公式を用いて,もし恒星風の質量放出率が典型的な進化計算で使用される値の 0.2 倍であった場合は,高金属量環境でも 70 太陽質量のブラックホールが形成可能であることを示す.
最近の観測的証拠と理論計算では,Vink et al. (2001) の質量放出の推定は 0.5-0.1 倍程度少ない値であるべきだと示唆されている.また,詳細な恒星進化モデルを計算してこのシナリオを確認した.

自転をしていない 85 太陽質量の恒星の,金属量 Z=0.014 のモデルで恒星風を減らした場合,核が崩壊する前の恒星の質量は 71 太陽質量で,32 太陽質量のヘリウムコアと 28 太陽質量の炭素・酸素コアを持つ.このようなコアは,ブラックホールの質量を厳しく制限する,対不安定脈動超新星の発生を回避し,直接崩壊による 70 太陽質量のブラックホールを形成可能である.

高金属量の環境で 70 太陽質量ブラックホールを形成可能な恒星は,半径が 600 太陽半径という大きな値になる.しかしこれは LB-1 の軌道 (350 太陽半径程度以下) を超えてしまう.恒星の自転を考慮したモデルでは,内部の混合が誘起されるため半径の拡大は減少する.しかしその場合,恒星内部のコアはより重くなり,そのため対不安定脈動による質量放出を起こしてしまうため 70 太陽質量ブラックホールを形成できなくなる.

今回の質量放出率を減らした恒星進化モデルは,70 太陽質量のブラックホールを高金属量環境で形成するためのモデルとして整合的ではあるが,LB-1 のような連星系をエキゾチックな形成シナリオ無しでどの様に形成するかについては説明することができない.

ブラックホール質量について

高金属量の環境では,形成される恒星質量ブラックホールの質量の上限は 20 太陽質量に制限される.観測からもこの上限値は支持されており,恒星質量ブラックホールで最も重いのは,Cyg X-1 の 14.8 太陽質量,および M33 X-7 の 15.7 太陽質量である.

LB-1 系内にあると報告されているブラックホールは,脈動性対不安定型超新星 (pair-instability pulsation supernova, PPSN) と対不安定型超新星 (pair-instability supernova, PSN) の理論と矛盾するように思われる.これらの理論では,形成されるブラックホール質量は 40-50 太陽質量未満に制限される (Bond et al. 1984など).

この理論的な制限は,ゼロではない金属量を持つ恒星では ~55 太陽質量まで大きくなることが最近提案されている (Belczynski et al. 2017).もしブラックホール形成においてニュートリノ質量損失が小さい場合は,最良の場合 70 太陽質量の恒星が PPSN/PSN 不安定の発生を回避し,69 太陽質量のブラックホールを形成しうると考えられる.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1911.11989
Liu et al. (2019)
A wide star-black-hole binary system from radial-velocity measurements
(視線速度測定からの広い恒星・ブラックホール連星系)

概要

これまで,全ての恒星質量ブラックホールは,伴星からブラックホールに降着するガスから放射される X 線を検出することによって同定されていた.このようにして検出された系は全て,30 太陽質量以下のブラックホールとの連星であった.

しかし理論的には,X 線を放射する系は恒星-ブラックホール連星の中では少数派であることが予測されている.ブラックホールが恒星からのガスを降着していない場合,伴星の運動の視線速度測定を介してブラックホールが発見される可能性がある.

ここでは,銀河内の恒星 LB-1 の視線速度測定について報告する.この恒星は B 型星で,2 年以上にわたって視線速度を測定した.
その結果,この B 型星の運動と,それに伴う Hα 放射のスペクトル線からは,質量が 68 (+11, -13) 太陽質量の暗い天体の存在が必要であることを見出した.そのような天体は,ブラックホール以外にはありえない.78.9 日と長い周期を持つことから,広い間隔を持った連星である.

重力波観測では同程度の重いブラックホールが検出されているが,このような重いブラックホールを高金属量の環境で形成するのは,現在の恒星進化理論では非常に困難である.

LB-1 について

LB-1 は B 型星であり,太陽系から見て銀河系中心の反対方向に位置している.金属量は太陽金属量の 1.2 倍であり,銀河円盤面に存在する若い B 型星に予想される値と整合的である.有効温度は 18100 K である.

ヘルツシュプルング・ラッセル上での転回点付近にある主系列星の恒星モデルから,LB-1 は 8.2 太陽質量,9 太陽半径,年齢は 3500 万歳と推定される.ベストフィットモデルでは,B 型準巨星で,主系列星の転回点を通過して 20 万年経っていると推定される.距離は 4.23 kpc である.

観測と解析

LAMOST,GTC,Keck の観測から LB-1 の視線速度を測定した.その結果,78.9 日周期,視線速度の半振幅が 52.8 km/s,離心率 0.03 との結果が得られた.

B 型星の質量は既知であり,傾斜角 90° の edge-on 配置にある場合,暗い主星の最小質量は 6.3 太陽質量と計算される.これはブラックホールに違いないと考えられる.これは,6 太陽質量の質量を持つ主系列星は B 星よりわずかに 4-6 倍暗いだけであり,Keck のスペクトル中に容易に特徴が検出されるはずだからである.

ブラックホールの質量は,Hα 放射でブラックホールの動きをトレースし,それを見えている恒星の動きと比較することで推定可能である.Hα線の視線速度を 78.9 日周期で折りたたみ,見えている恒星の逆位相の制限曲線でフィットした.
ただしスペクトル線の中心は周連星物質による寄与がある可能性があり,それらの物質の降着点は系統的にはブラックホールを中心としていないため,ブラックホールの示唆される動きを減少させ得る.そのためこの動きは除去する必要がある.

この解析を用いて,ブラックホールの質量は 68 (+11, -13) 太陽質量と推定され,ここから連星の傾斜角は 15-18° と推定される.

70 太陽質量ブラックホール

LIGO/VIRGO による重力波観測では,太陽質量の数十倍の質量のブラックホールの存在が明らかになっており,これらはこれまでに知られていた銀河系内のブラックホールよりもずっと大きな質量を持つ.今回の LB-1 での 70 太陽質量ブラックホールの発見は,このようなブラックホールが銀河系内にも存在することを確認するものである.

しかし,重いブラックホールは低金属量環境で主に形成されるが (0.2 太陽金属量未満),伴星は太陽金属量と同程度である.現在の理論では,太陽金属量の環境では 25 太陽質量までのブラックホールの形成しかできず,この発見は恒星進化モデルへの重大な挑戦となる.

より重いブラックホールを形成するためには,太陽金属量の環境下で質量損失率が少ない必要があり,このことがさらにブラックホール質量を厳しく制限する.また広く受け入れられた恒星進化モデルである,対不安定脈動を乗り越える必要もある.

これらの強い制限からは,LB-1 のブラックホールは単一の星が崩壊してできたのではない可能性を示唆する.


代替案としては,この系が元々三重連星だった可能性というものがある.観測されている B 型星は最も外側で最も軽い天体であり,ブラックホールは初期の内側連星で形成されたという仮説である.

「通常の」恒星質量ブラックホールが,連星のコモンエンベロープ進化の間に 60 太陽質量以上のコアへと合体し,その後の重い恒星からブラックホールコアへの降着によって,70 太陽質量ブラックホールが形成される可能性がある.


その他の興味深い可能性としては,見えない質量は 1 つではなく 2 つのブラックホールを含んでおり,お互いを内側伴星の状態で公転し,観測されている B 型星は三重連星系の 3 番目の天体であるというものがある.この場合,それぞれのブラックホール質量は 35 太陽質量程度であり,形成への問題点は少なくなる.





70 太陽質量のブラックホールが発見されたという論文です.この質量範囲のブラックホールは,太陽に近い金属量の環境下では恒星進化理論の観点からは形成が困難であるとされています.そのためこのブラックホールの発見は理論的には驚くべきものとされています.

ただし発見報告後すぐに,このブラックホールの検出は間違いであったとする指摘が複数されています.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1911.11273
Nielsen et al. (2019)
The Gemini Planet Imager Exoplanet Survey: Dynamical Mass of the Exoplanet beta Pictoris b from Combined Direct Imaging and Astrometry
(Gemini Planet Imager 系外惑星サーベイ:直接撮像と位置天文学の組み合わせによる系外惑星がか座ベータ星b の力学的質量)

概要

がか座ベータ星b の Gemini Planet Imager (GPI) による 2018 年の観測について報告する.これは,この惑星が合を迎えてから初めての観測である.

新しい観測結果に基づいて,過去の参照可能な地上望遠鏡による撮像観測からの相対位置天文観測,ヒッパルコスによる Intermediate Astrometric Data (IAD),および Gaia DR2 の位置天文のデータと合わせて惑星の軌道を適合した.

計算された質量について,ホットスタートの進化モデルからの予測,および過去の同様の手法を用いた推定値と整合的な値を得たが,不定性は大きく,12.8 (+5.3, -3.2) 木星質量となった.軌道離心率は 0.12 (+0.04, -0.03) で,円軌道とは否定的な結果となった.

軌道のフィッティングについては複数の異なる撮像データセットを用いて行い,撮像データのそれぞれの組み合わせにおいて一般に同様の質量の事後値を得た.今回の解析は,軌道要素間の強い共分散を考慮すると,絶対的位置測定と相対的位置測定を同時にフィットすることの重要性を強調するものである.

合の時間の推定は 2017 年 9 月 13 日の 2.8 日以内とよく制約をかけることができ,恒星は惑星のヒル球の背後に 2017 年 4 月 11 日から 2018 年 2 月 16 日 (±18 日) の間存在していたと推定される.

また,最近の視線速度観測による 2 番目の惑星 β Pic c (がか座ベータ星c) の発見報告に基づき,2 惑星での軌道フィッティングも実行した.これらのフィッティングからは,撮像されたがか座ベータ星b の質量はずっと小さく,8.0 ± 2.6 木星質量と推定され,また軌道はより円軌道に近いものとなる.
将来の地上望遠鏡による観測で,Gaia DR4 のデータ公開に先駆けて惑星の質量と軌道にさらなる制約がかけられるだろう.

がか座ベータ星系について

がか座ベータ星は,若く,近傍にある (19.44 pc),中間質量 (~1.8 太陽質量) の恒星で,明るい edge-on のデブリ円盤を持つ.β Pic 運動星団の一員であり,このことから恒星の年齢は 2600万 ± 300万年と推定される (Nielsen et al. 2016).

がか座ベータ星b は初めて直接撮像された系外惑星のひとつであり,2003 年に恒星の北東側で初めて観測され (Lagrange et al. 2009),存在が確定する前に恒星の背後を通過して南西側に移った (Lagrange et al. 2010)

惑星の軌道平面は円盤面と非常に近いことが分かっており,トランジット類似のイベントが 1981 年に観測されていた (Lecavelier des Etangs & Vidal-Madjar 2009).しかし相対的な位置天文観測では,惑星そのものによるトランジットが起きる可能性は否定されているが,惑星のヒル球は恒星の手前を通過する (Millar-Blanchaer et al. 2015,Wang et al. 2016など).

この論文の投稿後に,Lagrange et al. (2019) によって視線速度測定からさらなる内側の巨大惑星 がか座ベータ星c が 2.7 au に存在するとの報告がされている.

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