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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1607.02525
Wagner et al. (2016)
Direct Imaging Discovery of a Jovian Exoplanet Within a Triple Star System
(三重星系内の木星型惑星の直接撮像による発見)
今回,三重星系である HD 131399 系内の若い木星型惑星を近赤外線での直接撮像で発見し,また大気の特徴付けをおこなった.
惑星の軌道長半径は,他の連星系や三重星系ないで発見されている惑星に比べて近い.そのため,HD 131399 系は他の惑星系とは異なる特徴を持つと考えられる.
今回発見された惑星 HD 131399Ab は,直接撮像で発見された系外惑星の中でも低質量であり (4 ± 1 木星質量),また低温である (850 ± 50 K).
HD 131399 (あるいは HIP 72940) は,年齢が 16 Myr と若い.Upper Centaurus-Lupus association (UCL) 内に存在し,距離は 98 pc である.初めの観測は 2015 年 6 月 12 日に行われ,その後フォローアップ観測が行われた.
これは考えにくいことではあるが,仮に系がもっと古い場合 (数億歳) であっても,質量は 13 木星質量未満となり,この天体は惑星であると言える.
惑星の H バンドでの光度と,H - K の色の比較からは,この天体は hot-start が初期条件で,部分的に雲に覆われた大気を持っているか太陽より大きな金属量を持つ (またはその両方) というモデルと整合的であると考えられる.
"Cold-start",つまり非効率的な惑星へのガスの降着により初期のエントロピーを一部失った初期条件のモデルとは非整合的であった.
HD 131399A のまわりを HD 131399Ab が公転している.また,HD 131399B と HD 131399C の 2 つが連星を成している.さらに,HD 131399A + b の系と,HD 131399 B + C の系同士が,お互いの共通重心のまわりを公転しているという系になっている.
スペクトル型:A1V
質量:1.82 太陽質量
有効温度:9300 K
・HD 131399Ab (今回発見された惑星)
スペクトル型:T2 - T4
質量:4 ± 1 木星質量
有効温度:850 ± 50 K
HD 131399A からの投影距離:0.839 秒角 → 0.830 秒角 (2015年6月→2016年5月)
・HD 131399B
スペクトル型:G
質量:0.96 太陽質量
有効温度:5700 K
HD 131399A からの投影距離:3.149 秒角 → 3.150 秒角 (2015年6月→2016年5月)
・HD 131399C
スペクトル型:K
質量:0.6 太陽質量
有効温度:4400 K
HD 131399A からの投影距離:3.215 秒角 → 3.220 秒角 (2015年6月→2016年5月)
HD 131399Ab が HD 131399A を公転する軌道は,誤差が大きいため暫定的な数値であるが.82 (+23, -27) AU,軌道離心率は 0.35 ± 0.25,天球面に対する軌道面の傾斜角は 40° (+80°, -20°) である.
N 体計算からは,安定な軌道が存在することが示された.ただしアストロメトリ観測から制限されている軌道の範囲では,不安定な軌道である可能性も有り得る.この系はまだ若いため,不安定ではあるが現在はまだ系からはじき出されて自由浮遊惑星 (free-floating planet) になっていないという可能性もある.しかしこのシナリオは最も有りうるシナリオというわけではない.軌道不安定による系からの放出や衝突までのタイムスケールはわずか数百万年だが,この系の年齢はおよそ 1600 万年だからである.
いずれにせよ,HD 131399B, C ペアの影響を受けているため,HD 131399Ab の軌道はケプラー回転ではない状態になっている.
(A) HD 131399A まわり短周期惑星として形成され,惑星同士の遭遇によって弾き飛ばされ,現在のような長周期の軌道へ変化した
この場合,内側にも重いガス惑星が存在するはずである.発見されていないが,検出限界以下の惑星が存在する可能性はある.また,このシナリオを採用する場合,HD 131399Ab の軌道の軌道離心率が若干高いことも説明できる可能性がある.
(B) HD 131399B, C のまわりの周連星惑星 (circumbinary planet) として形成され,他の惑星や連星自身と近接遭遇して散乱された
このシナリオの場合も,(A) と同様に軌道離心率がやや大きいことが説明可能である.
(C) HD 131399A - HD 131399B, C 系が現在の配置になる前に,どちらかの周囲で形成された
恒星の軌道は,周囲の円盤や永年効果によって進化し得る.このシナリオでは,2 つ目の内側の惑星は不要である.しかし,結果として落ち着く惑星の軌道は判別することが出来ないため,惑星ははじめに形成された際に公転していた恒星の周りには既に存在していないという可能性もある.
このシナリオの場合,実は HD 131399Ab は 3 つの恒星全てのさらに外側を公転しているという解とも整合的だが,そのような軌道は寿命が短いためその配置であることは考えづらい.
この惑星の発見は,「太陽が 3 つある惑星」としてニュースにもなりました.
arXiv:1607.02525
Wagner et al. (2016)
Direct Imaging Discovery of a Jovian Exoplanet Within a Triple Star System
(三重星系内の木星型惑星の直接撮像による発見)
概要
直接撮像観測では,系外惑星からの熱放射による惑星のパラメータの特徴付けが出来る.今回,三重星系である HD 131399 系内の若い木星型惑星を近赤外線での直接撮像で発見し,また大気の特徴付けをおこなった.
惑星の軌道長半径は,他の連星系や三重星系ないで発見されている惑星に比べて近い.そのため,HD 131399 系は他の惑星系とは異なる特徴を持つと考えられる.
今回発見された惑星 HD 131399Ab は,直接撮像で発見された系外惑星の中でも低質量であり (4 ± 1 木星質量),また低温である (850 ± 50 K).
観測
この発見は,近傍の星団である Upper Scorpius-Centaurus-Lupus association の中の,~ 100 個の単独星・連星の A 型星を,Very Large Telescope (VLT) と Spectro-Polarimetric High-Contrast Exoplanet Research (SPHERE) を用いて観測するサーベイの一環で行われた.このサーベイ観測による初めての惑星の発見である.HD 131399 (あるいは HIP 72940) は,年齢が 16 Myr と若い.Upper Centaurus-Lupus association (UCL) 内に存在し,距離は 98 pc である.初めの観測は 2015 年 6 月 12 日に行われ,その後フォローアップ観測が行われた.
観測からの特徴付け
測光観測から惑星の光度を測定した.その光度と,"hot-start" を初期条件をしたガス惑星の熱進化トラックモデルを用いて質量を推定したところ,4 ± 1 木星質量という結果を得た.これは考えにくいことではあるが,仮に系がもっと古い場合 (数億歳) であっても,質量は 13 木星質量未満となり,この天体は惑星であると言える.
惑星の H バンドでの光度と,H - K の色の比較からは,この天体は hot-start が初期条件で,部分的に雲に覆われた大気を持っているか太陽より大きな金属量を持つ (またはその両方) というモデルと整合的であると考えられる.
"Cold-start",つまり非効率的な惑星へのガスの降着により初期のエントロピーを一部失った初期条件のモデルとは非整合的であった.
※注釈
ガス惑星の形成時の初期条件として,大きく分けて hot-start と cold-start と呼ばれる 2 つのモデルがある.
Hot-start は,ガス惑星が形成される際の質量の降着が効率的に起こり,初期のエントロピーを全て持ち込んだ状態,つまり "熱い" 状態が初期条件となるためこの名前がある.一方の cold-start では,降着が非効率的であったために初期のエントロピーを全ては持ち込めず,一部は外部へ散逸してしまい,比較的 "冷たい" 状態が初期条件となる.
ガス惑星は形成直後は高温であり,その後徐々に放射で熱を失って冷えていく.この冷えていく過程は惑星の質量によって異なる.直接撮像では惑星の光度を直接測定することが出来るが,現在の惑星の光度と惑星の年齢 (惑星がある系の年齢) を組み合わせることによって,惑星の質量を推定することが出来る.
しかしここで,形成直後のガス惑星の温度がどの程度であったのかが問題になる.形成直後が hot-start の初期条件であった場合と cold-start であった場合では,同じ質量であってもその後の熱進化が異なってしまい,質量の推定に幅が出てしまうからである.
一般に,直接撮像で発見されるような遠方の大きなガス惑星の場合は,重力不安定によって形成されて効率よく降着が起きるため,hot-start よりの初期条件で形成されると考えられている.一方でコア降着モデルの場合は cold-start よりの初期条件になる.
ガス惑星の形成時の初期条件として,大きく分けて hot-start と cold-start と呼ばれる 2 つのモデルがある.
Hot-start は,ガス惑星が形成される際の質量の降着が効率的に起こり,初期のエントロピーを全て持ち込んだ状態,つまり "熱い" 状態が初期条件となるためこの名前がある.一方の cold-start では,降着が非効率的であったために初期のエントロピーを全ては持ち込めず,一部は外部へ散逸してしまい,比較的 "冷たい" 状態が初期条件となる.
ガス惑星は形成直後は高温であり,その後徐々に放射で熱を失って冷えていく.この冷えていく過程は惑星の質量によって異なる.直接撮像では惑星の光度を直接測定することが出来るが,現在の惑星の光度と惑星の年齢 (惑星がある系の年齢) を組み合わせることによって,惑星の質量を推定することが出来る.
しかしここで,形成直後のガス惑星の温度がどの程度であったのかが問題になる.形成直後が hot-start の初期条件であった場合と cold-start であった場合では,同じ質量であってもその後の熱進化が異なってしまい,質量の推定に幅が出てしまうからである.
一般に,直接撮像で発見されるような遠方の大きなガス惑星の場合は,重力不安定によって形成されて効率よく降着が起きるため,hot-start よりの初期条件で形成されると考えられている.一方でコア降着モデルの場合は cold-start よりの初期条件になる.
HD 131399 系
HD 131399 系の概観
この系には,HD 131399A, HD 131399B, HD 131399C の 3 つの恒星と,HD 131399Ab という 1 つの惑星が存在する.HD 131399A のまわりを HD 131399Ab が公転している.また,HD 131399B と HD 131399C の 2 つが連星を成している.さらに,HD 131399A + b の系と,HD 131399 B + C の系同士が,お互いの共通重心のまわりを公転しているという系になっている.
パラメータ
・HD 131399Aスペクトル型:A1V
質量:1.82 太陽質量
有効温度:9300 K
・HD 131399Ab (今回発見された惑星)
スペクトル型:T2 - T4
質量:4 ± 1 木星質量
有効温度:850 ± 50 K
HD 131399A からの投影距離:0.839 秒角 → 0.830 秒角 (2015年6月→2016年5月)
・HD 131399B
スペクトル型:G
質量:0.96 太陽質量
有効温度:5700 K
HD 131399A からの投影距離:3.149 秒角 → 3.150 秒角 (2015年6月→2016年5月)
・HD 131399C
スペクトル型:K
質量:0.6 太陽質量
有効温度:4400 K
HD 131399A からの投影距離:3.215 秒角 → 3.220 秒角 (2015年6月→2016年5月)
軌道配置と安定性
HD 131399B + C ペアが HD 131399A のまわりを公転する軌道長半径は,アストロメトリ観測から 349 ± 28 AU,軌道長半径は 0.13 ± 0.05 である.また天球面に対する軌道面の傾斜角は 45 - 65° である.HD 131399Ab が HD 131399A を公転する軌道は,誤差が大きいため暫定的な数値であるが.82 (+23, -27) AU,軌道離心率は 0.35 ± 0.25,天球面に対する軌道面の傾斜角は 40° (+80°, -20°) である.
N 体計算からは,安定な軌道が存在することが示された.ただしアストロメトリ観測から制限されている軌道の範囲では,不安定な軌道である可能性も有り得る.この系はまだ若いため,不安定ではあるが現在はまだ系からはじき出されて自由浮遊惑星 (free-floating planet) になっていないという可能性もある.しかしこのシナリオは最も有りうるシナリオというわけではない.軌道不安定による系からの放出や衝突までのタイムスケールはわずか数百万年だが,この系の年齢はおよそ 1600 万年だからである.
いずれにせよ,HD 131399B, C ペアの影響を受けているため,HD 131399Ab の軌道はケプラー回転ではない状態になっている.
惑星の形成シナリオ
このような特異な系のでの惑星の形成には,以下の 3 つのシナリオが考えられる.(A) HD 131399A まわり短周期惑星として形成され,惑星同士の遭遇によって弾き飛ばされ,現在のような長周期の軌道へ変化した
この場合,内側にも重いガス惑星が存在するはずである.発見されていないが,検出限界以下の惑星が存在する可能性はある.また,このシナリオを採用する場合,HD 131399Ab の軌道の軌道離心率が若干高いことも説明できる可能性がある.
(B) HD 131399B, C のまわりの周連星惑星 (circumbinary planet) として形成され,他の惑星や連星自身と近接遭遇して散乱された
このシナリオの場合も,(A) と同様に軌道離心率がやや大きいことが説明可能である.
(C) HD 131399A - HD 131399B, C 系が現在の配置になる前に,どちらかの周囲で形成された
恒星の軌道は,周囲の円盤や永年効果によって進化し得る.このシナリオでは,2 つ目の内側の惑星は不要である.しかし,結果として落ち着く惑星の軌道は判別することが出来ないため,惑星ははじめに形成された際に公転していた恒星の周りには既に存在していないという可能性もある.
このシナリオの場合,実は HD 131399Ab は 3 つの恒星全てのさらに外側を公転しているという解とも整合的だが,そのような軌道は寿命が短いためその配置であることは考えづらい.
この惑星の発見は,「太陽が 3 つある惑星」としてニュースにもなりました.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1607.03684
Barnes et al. (2016)
The origin of the excess transit absorption in the HD 189733 system: planet or star?
(HD 189733 系でのトランジット時の吸収の超過の起源:惑星か恒星か?)
Ca II H 線と K 線に対して,differential spectrophotometry method を用いて分析した.その結果,吸収の超過は恒星起源だろうという結果を得た.恐らくは,恒星の大気外層,彩層起源だろうと考えられる.
吸収の超過の一部が惑星大気によるものである可能性は排除できないが,この結果は最近報告された,惑星大気中の風の運動を検出したという主張 (Wyttenbach et al. 2015, Louden & Wheatley 2015) には疑問を投げかけるものである.
arXiv:1607.03684
Barnes et al. (2016)
The origin of the excess transit absorption in the HD 189733 system: planet or star?
(HD 189733 系でのトランジット時の吸収の超過の起源:惑星か恒星か?)
概要
HD 189733b のトランジット中に,Ca II H 線と K 線の輝線の過剰な吸収を初めて検出した.また,この吸収の超過は Hα 線と Na I D 線でも見られた.Ca II H 線と K 線に対して,differential spectrophotometry method を用いて分析した.その結果,吸収の超過は恒星起源だろうという結果を得た.恐らくは,恒星の大気外層,彩層起源だろうと考えられる.
吸収の超過の一部が惑星大気によるものである可能性は排除できないが,この結果は最近報告された,惑星大気中の風の運動を検出したという主張 (Wyttenbach et al. 2015, Louden & Wheatley 2015) には疑問を投げかけるものである.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1607.02341
Barros et al. (2016)
Discovery of WASP-113b and WASP-114b, two inflated hot-Jupiters with contrasting densities
(対照的な密度を持つ 2 つの膨張したホットジュピター,WASP-113b と WASP-114b の発見)
2 つの惑星は半径が似ているが,WASP-114b は WASP-113b よりも 4 倍ほど重い.
どちらも膨張した半径を持っており,特に WASP-113b は膨張度を示すパラメータは R = 0.35 である.大気のスケールハイトは ~ 950 km であり,大気のフォローアップ観測対象として適している.
等級:11.771
有効温度:5890 K
金属量:[Fe/H] = 0.10
質量:1.318 太陽質量
半径:1.608 太陽半径
距離:360 pc
質量:0.475 木星質量
半径:1.409 木星半径
平均密度:0.172 g cm-3
軌道長半径:0.05885 AU
平衡温度:1496 K
等級:12.743
有効温度:5940 K
金属量:[Fe/H] = 0.14
質量:1.289 太陽質量
半径:1.43 太陽半径
距離:460 pc
質量:1.769 木星質量
半径:1.339 木星半径
平均密度:0.73 g cm-3
軌道長半径:0.02851 AU
平衡温度:2043 K
Fortney et al. (2007) のモデルを適用すると,惑星が固体コアを持たない場合は WASP-113b の半径は 1.05 木星半径,WASP-114b は 1.15 木星半径となる.これは観測された惑星半径より明らかに小さい.
Laughlin et al. (2011) での半径異常 (radius anomaly) の指標を用いると,それぞれ R = 0.35, 0.189 となる.
近年の観測で分かっていることは,惑星半径を膨張させているものが何であるかに関わらず,惑星が受け取る日射量と半径異常は相関があるということである (Laughlin et al. 2011, Weiss et al. 2013).
惑星が受ける日射が穏やかな場合は惑星は膨張半径を持たない (Demory & Seager 2011).惑星の平衡温度を比較すると,WASP-114b > WASP113b となっているため,一見この傾向に反しているように見える.WASP-113b は,Laughlin et al. (2011) で示されている半径以上の指標の温度依存性 R ∝ Teq1.4 に従っているが,WASP-114b はその依存性を下回っている.
しかし両者は質量が大きく異なる.WASP-114b は WASP-113b よりも 3.7 倍重い.そのため重元素も多く,さらに大きな重力束縛エネルギーがあるため,これらが半径を小さくする方向にはたらく.
ホットジュピターの半径を大きくしている機構としては,潮汐加熱 (Bodenheimer et al. 2001),大気の不透明度 (opacity) によるとするもの (Burrows et al. 2007),惑星大気中での風による運動学的加熱 (Guillot & Showman 2002),オーム加熱 (Batygin et al. 2011) が提案されている.後者 2 つの説は惑星が受ける日射フラックスと関係しているが,全ての半径異常を説明することは出来ないことも分かっている (Spiegel & Burrows 2013など).
arXiv:1607.02341
Barros et al. (2016)
Discovery of WASP-113b and WASP-114b, two inflated hot-Jupiters with contrasting densities
(対照的な密度を持つ 2 つの膨張したホットジュピター,WASP-113b と WASP-114b の発見)
概要
WASP サーベイと,SOPHIE, CORALIE によるフォローアップ観測によって,WASP-113b と WASP-114b を発見した.中心星のスペクトル型はどちらも早期の G 型であり,有効温度も ~ 5900 K と似ている.しかし WASP-113 は WASP-114 よりも年老いている.2 つの惑星は半径が似ているが,WASP-114b は WASP-113b よりも 4 倍ほど重い.
どちらも膨張した半径を持っており,特に WASP-113b は膨張度を示すパラメータは R = 0.35 である.大気のスケールハイトは ~ 950 km であり,大気のフォローアップ観測対象として適している.
パラメータ
WASP-113 系
WASP-113
スペクトル型:G1等級:11.771
有効温度:5890 K
金属量:[Fe/H] = 0.10
質量:1.318 太陽質量
半径:1.608 太陽半径
距離:360 pc
WASP-113b
軌道周期:4.54216874538 日質量:0.475 木星質量
半径:1.409 木星半径
平均密度:0.172 g cm-3
軌道長半径:0.05885 AU
平衡温度:1496 K
WASP-114 系
WASP-114
スペクトル型:G0等級:12.743
有効温度:5940 K
金属量:[Fe/H] = 0.14
質量:1.289 太陽質量
半径:1.43 太陽半径
距離:460 pc
WASP-114b
軌道周期:1.5487743 日質量:1.769 木星質量
半径:1.339 木星半径
平均密度:0.73 g cm-3
軌道長半径:0.02851 AU
平衡温度:2043 K
ホットジュピターの膨張半径について
巨大ガス惑星の質量-半径依存性では,惑星半径は初期の組成に依存する.重元素の存在は惑星半径を小さくする方向にはたらく.Fortney et al. (2007) のモデルを適用すると,惑星が固体コアを持たない場合は WASP-113b の半径は 1.05 木星半径,WASP-114b は 1.15 木星半径となる.これは観測された惑星半径より明らかに小さい.
Laughlin et al. (2011) での半径異常 (radius anomaly) の指標を用いると,それぞれ R = 0.35, 0.189 となる.
近年の観測で分かっていることは,惑星半径を膨張させているものが何であるかに関わらず,惑星が受け取る日射量と半径異常は相関があるということである (Laughlin et al. 2011, Weiss et al. 2013).
惑星が受ける日射が穏やかな場合は惑星は膨張半径を持たない (Demory & Seager 2011).惑星の平衡温度を比較すると,WASP-114b > WASP113b となっているため,一見この傾向に反しているように見える.WASP-113b は,Laughlin et al. (2011) で示されている半径以上の指標の温度依存性 R ∝ Teq1.4 に従っているが,WASP-114b はその依存性を下回っている.
しかし両者は質量が大きく異なる.WASP-114b は WASP-113b よりも 3.7 倍重い.そのため重元素も多く,さらに大きな重力束縛エネルギーがあるため,これらが半径を小さくする方向にはたらく.
ホットジュピターの半径を大きくしている機構としては,潮汐加熱 (Bodenheimer et al. 2001),大気の不透明度 (opacity) によるとするもの (Burrows et al. 2007),惑星大気中での風による運動学的加熱 (Guillot & Showman 2002),オーム加熱 (Batygin et al. 2011) が提案されている.後者 2 つの説は惑星が受ける日射フラックスと関係しているが,全ての半径異常を説明することは出来ないことも分かっている (Spiegel & Burrows 2013など).
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1607.01755
Pepper et al. (2016)
KELT-11b: A Highly Inflated Sub-Saturn Exoplanet Transiting the V=8 Subgiant HD 93396
(KELT-11b:8 等星の準巨星 HD 93396 をトランジットする大きく膨張した土星未満質量の系外惑星)
KELT-11 は進化した準巨星であり,南天の空でトランジット惑星を持つ恒星の中では最も明るく,他のトランジット惑星を持つ恒星達よりも 1 等級以上明るい.また,全天の全てのトランジット惑星を持つ恒星の中では 6 番目に明るい.
KELT-11b は最も膨張した半径を持つ惑星のうちのひとつであり,大気のスケールハイトは非常に大きい (2763 km).期待される大気の透過光スペクトルのシグナルは 5.6%であり,惑星大気の観測と特徴付け,膨張半径を持つ惑星の研究として良い対象である.
半径:2.72 太陽半径
光度:5.55 太陽光度
有効温度:5370 K
金属量:[Fe/H] = 0.180
軌道長半径:0.06229 AU
質量:0.195 木星質量
半径:1.37 木星半径
平均密度:0.093 g cm-3
平衡温度:1712 K
惑星の平均密度は 0.093 g cm-3 である.この密度は,不定性が 20%よりも小さい精度で測定された惑星の中では 3 番目に低密度である.KELT-11b と同程度の低い密度を持つ惑星は,WASP-94Ab (Neveu-VanMalle et al. 2014),ケプラー12b (Fortney et al. 2011) がある.しかしこれらは KELT-11 よりもずっと暗い恒星の周りを公転している.
arXiv:1607.01755
Pepper et al. (2016)
KELT-11b: A Highly Inflated Sub-Saturn Exoplanet Transiting the V=8 Subgiant HD 93396
(KELT-11b:8 等星の準巨星 HD 93396 をトランジットする大きく膨張した土星未満質量の系外惑星)
概要
準巨星 (subgiant) HD 93396 (あるいは KELT-11) を公転する惑星 KELT-11b の発見を報告する.KELT-11 は進化した準巨星であり,南天の空でトランジット惑星を持つ恒星の中では最も明るく,他のトランジット惑星を持つ恒星達よりも 1 等級以上明るい.また,全天の全てのトランジット惑星を持つ恒星の中では 6 番目に明るい.
KELT-11b は最も膨張した半径を持つ惑星のうちのひとつであり,大気のスケールハイトは非常に大きい (2763 km).期待される大気の透過光スペクトルのシグナルは 5.6%であり,惑星大気の観測と特徴付け,膨張半径を持つ惑星の研究として良い対象である.
パラメータ
KELT-11 (HD 93396)
質量:1.438 太陽質量半径:2.72 太陽半径
光度:5.55 太陽光度
有効温度:5370 K
金属量:[Fe/H] = 0.180
KELT-11b
軌道周期:4.736529 日軌道長半径:0.06229 AU
質量:0.195 木星質量
半径:1.37 木星半径
平均密度:0.093 g cm-3
平衡温度:1712 K
KELT-11 系の特徴
膨張半径を持つための惑星が受ける日射の経験的な閾値は,~ 2 × 108 erg cm-2 s-1 である (Demory & Seager 2011).KELT-11b が受けている日射量は 1.95 × 109 erg cm-2 s-1 であり,閾値より大きい.また,恒星進化の一生を通じて閾値よりも大きい日射を受け続けてきたと考えられる.惑星の平均密度は 0.093 g cm-3 である.この密度は,不定性が 20%よりも小さい精度で測定された惑星の中では 3 番目に低密度である.KELT-11b と同程度の低い密度を持つ惑星は,WASP-94Ab (Neveu-VanMalle et al. 2014),ケプラー12b (Fortney et al. 2011) がある.しかしこれらは KELT-11 よりもずっと暗い恒星の周りを公転している.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1607.01397
Hamers & Portegies Zwart (2016)
White dwarf pollution by planets in stellar binaries
(連星系内の惑星による白色矮星の汚染)
ここでは,惑星は別の伴星による Lidov-Kozai 振動によって擾乱を受け,さらに中心星の質量放出によって不安定がさらに加速されるというモデルを考えることによって,長い冷却時間の白色矮星に対しても表面の重元素汚染が説明できることを示した.
計算結果からは,観測から得られている物質の降着率である 0.01 - 1 火星質量を整合的である.しかし,0.3 火星質量未満の場合では非重力的効果が重要であると言うことが示された.
シミュレーションの結果,惑星物質によって表面が汚染される白色矮星の割合は ~ 0.05 でああり,冷却時間が 0.1 - 1 Gyr の中間的な年齢の白色矮星に対しては観測と整合的である.
しかし冷却時間が 0.1 Gyr 以下の場合と 1 Gyr 以上の場合では,観測されている汚染の割合である ~ 0.7 は,今回提案しているシナリオでは説明はできない.しかし,今回の計算結果は,白色矮星の伴星探しの動機となり得る.
arXiv:1607.01397
Hamers & Portegies Zwart (2016)
White dwarf pollution by planets in stellar binaries
(連星系内の惑星による白色矮星の汚染)
概要
およそ 20%の白色矮星は,重元素による表面の汚染を示す.これは,潮汐破壊された惑星物質によるものと考えられている.しかし一般的には,白色矮星形成後の惑星-惑星相互作用によるモデルでは,白色矮星の冷却時間が数十億年の場合は汚染を説明できない.ここでは,惑星は別の伴星による Lidov-Kozai 振動によって擾乱を受け,さらに中心星の質量放出によって不安定がさらに加速されるというモデルを考えることによって,長い冷却時間の白色矮星に対しても表面の重元素汚染が説明できることを示した.
計算結果からは,観測から得られている物質の降着率である 0.01 - 1 火星質量を整合的である.しかし,0.3 火星質量未満の場合では非重力的効果が重要であると言うことが示された.
シミュレーションの結果,惑星物質によって表面が汚染される白色矮星の割合は ~ 0.05 でああり,冷却時間が 0.1 - 1 Gyr の中間的な年齢の白色矮星に対しては観測と整合的である.
しかし冷却時間が 0.1 Gyr 以下の場合と 1 Gyr 以上の場合では,観測されている汚染の割合である ~ 0.7 は,今回提案しているシナリオでは説明はできない.しかし,今回の計算結果は,白色矮星の伴星探しの動機となり得る.


Association とは同じ起源を持ち,重力的には束縛されていない状態で同じ方向に運動している星の集団である.
Upper Centaurus-Lupus association は,Scorpius-Centaurus(-Lupus) Association (さそり座-ケンタウルス座アソシエーション) という大きな association の一部分であり,この大きな association は Upper Scorpius, Upper Centaurus-Lupus, Lower Centaurus-Crux の 3 領域に分割される.
詳細は Scorpius-Centaurus Association - Wikipedia, the free encyclopedia