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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1910.05853
Luque et al. (2019)
Precise radial velocities of giant stars XIII. A second Jupiter orbiting in 4:3 resonance in the 7 CMa system
(巨星の精密な視線速度 XIII.おおいぬ座7番星系中の 4:3 共鳴で公転する 2 番目の木星型惑星)
周期解析の結果から,視線速度変動中におよそ 745 日と 980 日周期のシグナルを発見した.これを 2 つのケプラー軌道でフィットした結果,2 つの木星に似た惑星で,最小質量が 1.9, 0.9 木星質量と推定され,軌道長半径はそれぞれ 1.75, 2.15 au である.
惑星の軌道間隔が小さく,また惑星の最小質量が大きいことから,観測の期間内で近接遭遇が発生する可能性があるため,より正確な N 体力学モデリングを実行した.
力学的なベストフィット解は惑星が衝突を起こすという結果となったため,惑星系のベイズフレームワーク中での長期間の安定な軌道配置を調査した.その結果 13% のサンプルで少なくとも 1000 万年の間安定となった.
安定性解析の結果からは,2 つの惑星は低軌道離心率の 4:3 平均運動共鳴に捕獲されていることが示唆される.惑星が 4:3 共鳴に入っていることが分かっている系としては 3 番目の発見であり,このような惑星系は惑星形成と軌道進化モデルにおいて重要である.
なお,その他の 4:3 共鳴の発見例は,HD 200964 系と HD 5319 系である.
arXiv:1910.05853
Luque et al. (2019)
Precise radial velocities of giant stars XIII. A second Jupiter orbiting in 4:3 resonance in the 7 CMa system
(巨星の精密な視線速度 XIII.おおいぬ座7番星系中の 4:3 共鳴で公転する 2 番目の木星型惑星)
概要
K 型巨星 7 CMa (おおいぬ座7番星) を公転する,2 つ目の惑星を発見した.これは,Lick,HARPS,UCLES,SONG を用いた 166 セットの高精度視線速度観測に基づくものである.周期解析の結果から,視線速度変動中におよそ 745 日と 980 日周期のシグナルを発見した.これを 2 つのケプラー軌道でフィットした結果,2 つの木星に似た惑星で,最小質量が 1.9, 0.9 木星質量と推定され,軌道長半径はそれぞれ 1.75, 2.15 au である.
惑星の軌道間隔が小さく,また惑星の最小質量が大きいことから,観測の期間内で近接遭遇が発生する可能性があるため,より正確な N 体力学モデリングを実行した.
力学的なベストフィット解は惑星が衝突を起こすという結果となったため,惑星系のベイズフレームワーク中での長期間の安定な軌道配置を調査した.その結果 13% のサンプルで少なくとも 1000 万年の間安定となった.
安定性解析の結果からは,2 つの惑星は低軌道離心率の 4:3 平均運動共鳴に捕獲されていることが示唆される.惑星が 4:3 共鳴に入っていることが分かっている系としては 3 番目の発見であり,このような惑星系は惑星形成と軌道進化モデルにおいて重要である.
なお,その他の 4:3 共鳴の発見例は,HD 200964 系と HD 5319 系である.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1910.06285
Checlair et al. (2019)
No Snowball on Habitable Tidally Locked Planets with a Dynamic Ocean
(力学的な海洋を持ったハビタブルな潮汐固定惑星にはスノーボール状態は無い)
地球型惑星の居住可能性を評価する上では,これらの惑星が全球凍結イベントを経験するかどうかは重要である.海洋熱輸送を伴わない,中程度の複雑さの全球気候モデル (global climate model) を用いた過去の研究では,潮汐固定状態の惑星は滑らかに全球凍結状態に移行することが示唆されている.これは,全球的な氷河作用に伴った二分化とヒステリシスを持った気候になる地球とは対照的な傾向である.
ここでは,海洋・大気 GCM (ROCKE-3D) を用いて,大陸のない潮汐固定惑星の気候をモデル化した.このモデルを採用したのは,海洋が高い熱輸送効率を持つことを考慮するためである.
その結果,気候モデルに海洋熱輸送の効果を含むと,全球凍結の二分化は発生しないことを見出した.この結果は,ハビタブルゾーン内で潮汐固定された惑星は,地質学的に有意な時間の間,全球凍結状態にある状態では発見されにくいだろうということを示唆する.
arXiv:1910.06285
Checlair et al. (2019)
No Snowball on Habitable Tidally Locked Planets with a Dynamic Ocean
(力学的な海洋を持ったハビタブルな潮汐固定惑星にはスノーボール状態は無い)
概要
M 型星周りのハビタブルゾーン内を公転する地球型惑星は,1:1 の自転・公転の潮汐固定状態になった配置であると考えられる.このような惑星は,将来の特徴付けを行うための観測の主要な対象でもある.地球型惑星の居住可能性を評価する上では,これらの惑星が全球凍結イベントを経験するかどうかは重要である.海洋熱輸送を伴わない,中程度の複雑さの全球気候モデル (global climate model) を用いた過去の研究では,潮汐固定状態の惑星は滑らかに全球凍結状態に移行することが示唆されている.これは,全球的な氷河作用に伴った二分化とヒステリシスを持った気候になる地球とは対照的な傾向である.
ここでは,海洋・大気 GCM (ROCKE-3D) を用いて,大陸のない潮汐固定惑星の気候をモデル化した.このモデルを採用したのは,海洋が高い熱輸送効率を持つことを考慮するためである.
その結果,気候モデルに海洋熱輸送の効果を含むと,全球凍結の二分化は発生しないことを見出した.この結果は,ハビタブルゾーン内で潮汐固定された惑星は,地質学的に有意な時間の間,全球凍結状態にある状態では発見されにくいだろうということを示唆する.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1910.04563
David et al. (2019)
Four newborn planets transiting the young solar analog V1298 Tau
(若いソーラーアナログおうし座V1298星をトランジットする 4 つの新しい惑星)
V1298 Tau (おうし座V1298星) は 2300 万歳の若いソーラーアナログであり,そのような研究対象の一つである.
この恒星は 24 日周期の木星サイズの惑星おうし座V1298星b を持つことが既に知られている.ここでは,ケプラーの K2 ミッションの Campaign 4 の測光観測から,3 つのさらなる惑星を発見したことを報告する.
今回発見された惑星のサイズは,海王星と土星の間である.おうし座V1298星c と d はそれぞれ 5.6, 6.4 地球半径であり,軌道周期は 8.25 日と 12.40 日で,3:2 平均運動共鳴から 0.25% 外側に外れた関係にある.
おうし座V1298星e は 8.7 地球半径だが,K2 の時系列の中では 1 回のトランジットのみしか観測されなかった.そのため軌道周期は 36 日よりは長い.しかし,おそらく 223 日よりは短いと考えられる.
この系は,ケプラーで多数発見されている,コンパクトな複数惑星系の前駆体である可能性がある.しかし,ケプラーで発見されている複数惑星系の惑星は大多数が 3 地球半径よりも小さく,この系にある大きなサイズの惑星たちは,それらとは対照的である.
シンプルな力学的な考察からは,おうし座V1298星c-d ペアと d-b ペアのそれぞれの総質量は,それぞれ 28 地球質量未満と 120 地球質量未満と推定される.これらの予想質量が小さいことから,これらの惑星はまだ冷却して収縮している最中であることが示唆され,また大気を失っている最中である可能性もある.
その他に前主系列星をトランジットしている惑星としては,Upper Scorpius にある K2-33b (David et al. 2016,Mann et al. 2016),DS Tuc Ab (Newton et al. 2019,Benatti et al. 2019),AU Mic b (Plavchan et al. submitted) がある.
arXiv:1910.04563
David et al. (2019)
Four newborn planets transiting the young solar analog V1298 Tau
(若いソーラーアナログおうし座V1298星をトランジットする 4 つの新しい惑星)
概要
前主系列星を公転する系外惑星は,惑星の進化過程を研究するための研究対象である.この進化過程には,惑星の大気の損失や軌道移動,輻射冷却などを含む.V1298 Tau (おうし座V1298星) は 2300 万歳の若いソーラーアナログであり,そのような研究対象の一つである.
この恒星は 24 日周期の木星サイズの惑星おうし座V1298星b を持つことが既に知られている.ここでは,ケプラーの K2 ミッションの Campaign 4 の測光観測から,3 つのさらなる惑星を発見したことを報告する.
今回発見された惑星のサイズは,海王星と土星の間である.おうし座V1298星c と d はそれぞれ 5.6, 6.4 地球半径であり,軌道周期は 8.25 日と 12.40 日で,3:2 平均運動共鳴から 0.25% 外側に外れた関係にある.
おうし座V1298星e は 8.7 地球半径だが,K2 の時系列の中では 1 回のトランジットのみしか観測されなかった.そのため軌道周期は 36 日よりは長い.しかし,おそらく 223 日よりは短いと考えられる.
この系は,ケプラーで多数発見されている,コンパクトな複数惑星系の前駆体である可能性がある.しかし,ケプラーで発見されている複数惑星系の惑星は大多数が 3 地球半径よりも小さく,この系にある大きなサイズの惑星たちは,それらとは対照的である.
シンプルな力学的な考察からは,おうし座V1298星c-d ペアと d-b ペアのそれぞれの総質量は,それぞれ 28 地球質量未満と 120 地球質量未満と推定される.これらの予想質量が小さいことから,これらの惑星はまだ冷却して収縮している最中であることが示唆され,また大気を失っている最中である可能性もある.
おうし座V1298星系について
おうし座V1298星は,主系列星の前段階である前主系列星である.この系では,木星サイズの惑星 V1298 Tau b (おうし座V1298星b) がトランジット法で発見されている (David et al. 2019).その他に前主系列星をトランジットしている惑星としては,Upper Scorpius にある K2-33b (David et al. 2016,Mann et al. 2016),DS Tuc Ab (Newton et al. 2019,Benatti et al. 2019),AU Mic b (Plavchan et al. submitted) がある.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1910.02070
Ninan et al. (2019)
Detection of He I 10830 Å~ absorption during the transit of a warm Neptune around the M-dwarf GJ 3470 with the Habitable-zone Planet Finder
(Habitable-zone Planet Finder による M 型矮星 GJ 3470 の周りのウォームネプチューンのトランジット中の中性ヘリウム 10830 Å 吸収の検出)
ここでは M 型矮星を公転するウォームネプチューン GJ 3470b の外気圏から,ヘリウムの吸収を検出したことを報告する.吸収線の等価幅は ~0.012 Å である.Habitable Zone Planet Finder (HPF) の近赤外線分光器を使用して,計 3 回のトランジットを観測した.
今回の結果は,M 型星まわりの惑星におけるヘリウムの初めての検出報告である.
検出された吸収線は広く,青方偏移側は -36 km/s にまで広がっている.これは,これまでのヘリウム吸収の検出報告の中では最も大きいものである.
中心星の紫外線と X 線の影響を元にして惑星の外気圏内にあるヘリウムの状態をモデル化した.その結果,フラックスで重み付けした準安定ヘリウムの柱密度は,観測から導出した値である 2.4 × 1010 cm-2 と,モデルの不定性の範囲内で整合的であることを見出した.
紫外線波長の Lyα は,蒸発する惑星大気を探る重要な手段であるが,2 つの大きな問題点がある.
一つは,Lyα は星間吸収によって減衰してしまい,また地球コロナ放射からの混入の影響もウケる.そのため Lyα 線のコア部分は使うことができず,ウィング部分のフィッティングから,外気圏の高速度成分しか探査できない.
また,紫外線観測は宇宙空間からしか行うことができず,多くの系の探査を行うにはコストが掛かり困難である.
ヘリウムのスペクトルの探査自体は新しい発想というわけではない,
例えば,Seager & Sasselov (2000) では,F9V 星 HD 209458 ではヘリウムの吸収は大きな兆候を示すと指摘した.しかし Moutou et al. (2003) での VLT/ISAAC を用いた HD 209458 の観測では,ヘリウムの吸収は検出されなかった.
最近は,K 型星周りの惑星でヘリウムの検出が報告されている.WASP-107b (Spake et al. 2018,Allart et al. 2019),HD 189733b (Salz et al. 2018),HAT-P-11b (Mansfield et al. 2018,Allart et al. 2018),WASP-69b (Nortmann et al. 2018) である.
今回は M 型矮星をトランジットするウォームネプチューンからのヘリウム吸収の発見報告である.
arXiv:1910.02070
Ninan et al. (2019)
Detection of He I 10830 Å~ absorption during the transit of a warm Neptune around the M-dwarf GJ 3470 with the Habitable-zone Planet Finder
(Habitable-zone Planet Finder による M 型矮星 GJ 3470 の周りのウォームネプチューンのトランジット中の中性ヘリウム 10830 Å 吸収の検出)
概要
最近,地上望遠鏡による観測で準安定ヘリウム原子の 10830 Å 波長の共鳴吸収の観測が行われており,系外惑星大気の流出を駆動する基本的な環境を探る強力なツールとして用いられている.ここでは M 型矮星を公転するウォームネプチューン GJ 3470b の外気圏から,ヘリウムの吸収を検出したことを報告する.吸収線の等価幅は ~0.012 Å である.Habitable Zone Planet Finder (HPF) の近赤外線分光器を使用して,計 3 回のトランジットを観測した.
今回の結果は,M 型星まわりの惑星におけるヘリウムの初めての検出報告である.
検出された吸収線は広く,青方偏移側は -36 km/s にまで広がっている.これは,これまでのヘリウム吸収の検出報告の中では最も大きいものである.
中心星の紫外線と X 線の影響を元にして惑星の外気圏内にあるヘリウムの状態をモデル化した.その結果,フラックスで重み付けした準安定ヘリウムの柱密度は,観測から導出した値である 2.4 × 1010 cm-2 と,モデルの不定性の範囲内で整合的であることを見出した.
系外惑星の外気圏観測
過去の紫外線波長での観測
これまでに,ホットジュピターやホットネプチューン,ウォームネプチューンの外気圏の観測が Lyα 線波長で行われてきた.検出例としては,HD 209458b (Vidal-Madjar et al. 2003),GJ 436b (Kulow et al. 2014),GJ 3470b (Bourrier et al. 2018) がある.これらは全てハッブル宇宙望遠鏡を用いた観測である.紫外線波長の Lyα は,蒸発する惑星大気を探る重要な手段であるが,2 つの大きな問題点がある.
一つは,Lyα は星間吸収によって減衰してしまい,また地球コロナ放射からの混入の影響もウケる.そのため Lyα 線のコア部分は使うことができず,ウィング部分のフィッティングから,外気圏の高速度成分しか探査できない.
また,紫外線観測は宇宙空間からしか行うことができず,多くの系の探査を行うにはコストが掛かり困難である.
近年の近赤外線ヘリウム吸収での観測
Oklopˇci ́c & Hirata (2018) は,準安定ヘリウムの 10830 Å 波長が,蒸発する系外惑星大気を探査するための代替策になると提案した.この波長は星間吸収で影響を受けず,地上の高分散近赤外線分光器で検出可能である.また,スペクトル線のコアを検出可能なので,外気圏の低速度成分も検出可能である.ヘリウムのスペクトルの探査自体は新しい発想というわけではない,
例えば,Seager & Sasselov (2000) では,F9V 星 HD 209458 ではヘリウムの吸収は大きな兆候を示すと指摘した.しかし Moutou et al. (2003) での VLT/ISAAC を用いた HD 209458 の観測では,ヘリウムの吸収は検出されなかった.
最近は,K 型星周りの惑星でヘリウムの検出が報告されている.WASP-107b (Spake et al. 2018,Allart et al. 2019),HD 189733b (Salz et al. 2018),HAT-P-11b (Mansfield et al. 2018,Allart et al. 2018),WASP-69b (Nortmann et al. 2018) である.
今回は M 型矮星をトランジットするウォームネプチューンからのヘリウム吸収の発見報告である.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1910.01567
Mansfield et al. (2019)
Evidence for H2 Dissociation and Recombination Heat Transport in the Atmosphere of KELT-9b
(KELT-9b の大気中の H2 解離と再結合熱輸送の証拠)
ホットジュピターの位相曲線の特性を説明するための理論は,惑星大気中での熱の再分配をコントロールする主要なパラメータとして,輻射と力学のバランスに重きを置いてきた.しかし最近の位相曲線の観測では,この理論から外れる傾向が報告されている.
そのため,ホットジュピターのエネルギー収支に影響を与える,さらなるプロセスの研究が行われてきた.その一つが,大気中の水素分子の解離と再結合である.これは温度が 2000 K 程度を超えるウルトラホットジュピターでのエネルギー再分配を促進する.
ウルトラホットジュピターでの水素分子の解離の影響を調べるため,スピッツァー宇宙望遠鏡の 4.5 µm で観測された KELT-9b の位相曲線について調査した.この惑星はトランジットする惑星の中で最も高温なものであり,4.5 µm 波長での昼側の輝度温度は 4566 K,夜側の温度は 2556 K,位相曲線の振幅は 0.609,ホットスポットのずれは 18.7° であった.
今回観測された位相曲線の振幅は,輻射と移流の間のシンプルなバランスでは説明できないほど小さいものであった.
General circulation models (GCMs) とエネルギーバランスモデルにおいて,水素の解離・再結合の効果を含めたモデルは,より良く観測データと一致した.しかし GCMs の計算では,ホットスポットのずれの最大値は 5° と予測され,これは観測結果と 5σ 以上の乖離を示す.このずれはおそらく,高い電離度を持った大気中での磁場の影響によるものである可能性がある.
arXiv:1910.01567
Mansfield et al. (2019)
Evidence for H2 Dissociation and Recombination Heat Transport in the Atmosphere of KELT-9b
(KELT-9b の大気中の H2 解離と再結合熱輸送の証拠)
概要
系外惑星の位相曲線の観測をもとに,惑星の昼側から夜側への熱の再分配の量を定量化することによって,系外惑星の全体のエネルギー総量を調べる事ができる.ホットジュピターの位相曲線の特性を説明するための理論は,惑星大気中での熱の再分配をコントロールする主要なパラメータとして,輻射と力学のバランスに重きを置いてきた.しかし最近の位相曲線の観測では,この理論から外れる傾向が報告されている.
そのため,ホットジュピターのエネルギー収支に影響を与える,さらなるプロセスの研究が行われてきた.その一つが,大気中の水素分子の解離と再結合である.これは温度が 2000 K 程度を超えるウルトラホットジュピターでのエネルギー再分配を促進する.
ウルトラホットジュピターでの水素分子の解離の影響を調べるため,スピッツァー宇宙望遠鏡の 4.5 µm で観測された KELT-9b の位相曲線について調査した.この惑星はトランジットする惑星の中で最も高温なものであり,4.5 µm 波長での昼側の輝度温度は 4566 K,夜側の温度は 2556 K,位相曲線の振幅は 0.609,ホットスポットのずれは 18.7° であった.
今回観測された位相曲線の振幅は,輻射と移流の間のシンプルなバランスでは説明できないほど小さいものであった.
General circulation models (GCMs) とエネルギーバランスモデルにおいて,水素の解離・再結合の効果を含めたモデルは,より良く観測データと一致した.しかし GCMs の計算では,ホットスポットのずれの最大値は 5° と予測され,これは観測結果と 5σ 以上の乖離を示す.このずれはおそらく,高い電離度を持った大気中での磁場の影響によるものである可能性がある.
天文・宇宙物理関連メモ vol.269 David et al. (2016) 若い海王星サイズの惑星 K2-33b
天文・宇宙物理関連メモ vol.1126 Benatti et al. (2019) TESS による若い恒星きょしちょう座DS星A まわりの惑星の発見
天文・宇宙物理関連メモ vol.1174 Newton et al. (2019) 4500 万歳のアソシエーション内にある若い系外惑星きょしちょう座DS星Ab の TESS による発見