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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1906.06123
Numazawa et al. (2019)
Suzaku observation of Jupiter's X-rays around solar maximum
(太陽極大付近での木星の X 線のすざくによる観測)

概要

X 線天文衛星すざくで観測した,木星からの X 線放射の撮像観測とスペクトル研究の結果について報告する.

2006 年にすざくは,木星の内部放射線帯に付随した 1-5 keV の拡がった X 線放射を発見した.これは,木星の磁気圏内での超相対論的 (~50 MeV) な逆コンプトン散乱によるものだと示唆されている.
この放射の存在を確定させるため,また放射ち太陽活動との関連性を理解するため,24th solar cycle の太陽活動の極大周辺である 2014 年にすざくを用いた観測を実行した.

その結果,1-5 keV の拡がった放射を木星の周りで再び発見し,また 0.4-1 keV の点源状の放射も発見した

点源状の放射は,おそらくは太陽 X 線の散乱や電荷交換,オーロラ制動放射からなると考えられ,2006 年よりも 5 倍程度増加した.これは太陽活動の増加によるものである可能性が高い.

1-5 keV での拡がった放射スペクトルは,過去の観測にあるように平坦なべき乗則の関数でよくフィットでき,逆コンプトン散乱説を支持するものである.しかし,その空間分布は ~12 × 4 木星半径から ~20 × 7 木星半径まで変化している.また,拡がった放射の光度は 3 倍と小さい変化量を示した.このことは,拡がった放射は単に太陽活動を反映しているわけではないことを示唆している.

また,太陽活動は木星の周りの高エネルギー電子の分布にはほとんど影響を及ぼさないことが知られている.木星の磁気圏の中でどのように高エネルギー粒子が加速されているかを理解するためには,拡がった高エネルギー X 線放射の空間分布とスペクトル分布のさらなる高感度の研究が必要である.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1906.06308
Isella et al. (2019)
Submillimeter emission associated with candidate protoplanets
(原始惑星候補に付随したサブミリメートル波放射)

概要

若い原始惑星 PDS 70c に付随した,波長 855 µm のサブミリ波連続放射の,空間的に分解されていない放射源の発見について報告する.

この惑星では最近 Hα 線の放射が検出されており,500 万歳の恒星 PDS 70 を公転している.

今回検出された放射は,ダストを多く含む周惑星円盤に起源を持つと解釈され,周惑星円盤が含むダスト質量は 2 × 10-3 - 4.2 × 10-3 地球質量の間と推定された.ガス・ダスト比として一般的な値 100 を仮定すると,周惑星円盤の総質量と中心の惑星質量の比は 10-4 - 10-5 となる.

さらに,この系の別の惑星 PDS 70b の南西 0.074” の位置にも,別のコンパクトな連続波源を発見したことを報告する.これは惑星の近傍を公転するダストを捉えているものだと予想される,しかしその性質を明らかにするには,さらなる感度の良い観測が必要である.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1906.06302
Casassus & Perez (2019)
Kinematic detections of protoplanets: a Doppler-flip in the disk of HD100546
(原始惑星の運動学的検出:HD 100546 の円盤におけるドップラーフリップ)

概要

原始惑星と周惑星円盤は,それら自身の熱赤外線放射では観測するのが難しい.それでも,他に代替理論が存在するとした場合でも,これらはガスとダスト密度で観測された原始惑星系円盤の構造の解釈として最も一般的な土台である.

円盤ガスの速度場も,惑星と円盤の相互作用の兆候を明らかにする.これは分子輝線のチャネルマップ中における非ケプラー運動の存在を示す微細構造を見ることによって可能となる.このような小刻みな揺れは円盤の大局スケールの中に存在することが予想され,可視光での深さ構造と合成撮像の制約によって影響を受けるが,これらの詳細は原理的には流体力学シミュレーションとの比較を行うことによって,擾乱を起こしている天体の特徴と結びつけることが出来る.

円盤の速度場の歪みをは HD 163296 で確認されており,この速度場のずれは円盤内に存在する惑星によるものだと解釈されている.

ここでは,中間的な傾斜角を持つ円盤への拡張を行うことでこれまでの回転曲線を改良し,深く微細な角度分解能の CO 同位体置換体のデータセットに適用して解析を行った.

その結果,HD 97048 と HD 16396 での試行では惑星の兆候は検出されなかった.
しかし,HD 100546 では明確なドップラーフリップを検出した.連続波で観測されているリング構造と一致が見られることから,その周囲での垂直方向および動径方向の流れが存在することを示唆している.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1906.06305
Pérez et al. (2019)
Long baseline observations of HD100546 with ALMA: a possible circumplanetary disk detected in dust continuum and gas kinematics
(ALMA を用いた HD 100546 の長基線観測:ダスト連続波とガス運動学から検出された可能性のある周惑星円盤)

概要

巨大惑星は星周円盤全体と力学的に相互作用を起こしながら成長し,惑星の成長は周惑星円盤とそれに隣接した環境によって律速される.周惑星円盤に,ガスに加えてどれくらいのダストが存在するかは,惑星形成理論においての問題点である.

ここでは Atacama Large Millimeter/submillimeter Array (ALMA) を用いて HD 100546 を観測した.この天体は,周囲に深く広いギャップを持つ明確な円盤を持っている.ここでは,1.3 mm 連続放射の点源を 6σ の確度で円盤中の広いギャップの真ん中に検出したことを報告する

SPHERE のスパース開口マスキングデータ中では,いかなるシグナルも検出されなかった.これにより,ギャップ内の点源が恒星起源である可能性は否定される.

6σ のシグナルは,中心星から 51 arcsec の位置で,位相角 37° の場所に存在している (2017 年 9 月時点).点源が円盤と同一平面の配置である場合,点源は中心星から 7.8 au の距離の 16 年周期の軌道上にあると考えられ,これは木星の軌道と同程度である.

今回の発見は,点源の位置での速度マップの歪みから示される CO ガスの運動からも支持される.

ミリメートル波長でのフラックス,円盤の運動の歪み,放射領域への上限サイズは,検出された点源は周惑星円盤からの放射だとする考えと整合的である

また,ギャップ内の特徴に加えて,円盤と惑星の相互作用の強い特徴を,北西方向 0”.25 の連続波のリングに隣接して検出した.

背景

これまでに,いくつかの原始惑星系円盤がその内部に周惑星円盤を持つ可能性があるとの報告がある.これらは,赤外線と可視光波長での高コントラスト直接撮像から得られたものであり,HD 100546 (Quanz et al. 2013など),LkCa 15 (Kraus & Ireland 2012など),HD 169142 (Quanz et al. 2013など),MWC 758 (Reggiani et al. 2018) で報告されている.

ただし上記の検出は,原始惑星系円盤の特徴の残差である可能性があるとの指摘もある.特に角微分撮像 (angular differential imaging) の事後処理が適用されている場合は残差が発生してしまう場合がある.
あるいは未発見の原始惑星や渦状腕構造によるショック加熱の生成物が見えているだけである可能性もある (Hord et al. 2017).

Hα 線での放射は惑星への降着を示すトレーサーになると考えられているが (Aoyama et al. 2018),フィルターされた広がった放射だという疑問も示されている (Mendigut ́ıa et al. 2018).

現在の所,PDS 70 のギャップの中の原始惑星候補だけが唯一確実な検出例として残っている (Keppler et al. 2018).最近,PDS 70b のスペクトル中に見られる赤外超過が,周惑星円盤の存在を示す兆候である可能性が報告されている (Christiaens et al. 2019).

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1906.06326
Mikal-Evans et al. (2019)
An emission spectrum for WASP-121b measured across the 0.8-1.1 micron wavelength range using the Hubble Space Telescope
(ハッブル宇宙望遠鏡を用いて測定された 0.8-1.1 マイクロメートル波長での WASP-121b の放射スペクトル)

概要

WASP-121b は,中心星のロッシュ限界付近を公転するトランジット巨大ガス系外惑星である.
木星のおよそ 2 倍の膨張した半径を持ち,昼側の温度は晩期 M 型星の光球と同程度の高温となっている.

この惑星の 1.1-1.6 µm 波長での二次食観測からは,惑星昼側の半球での大気の温度逆転層の存在が明らかになっている.この温度逆転層は,大気高高度での可視光波長の吸収によって引き起こされていると考えられる.

ここでは,ハッブル宇宙望遠鏡の Wide Field Camera 3 分光器を用いた WASP-121b の二次食観測について報告する.観測波長は 1.1-0.8 µm である.

測定された二次食スペクトルから惑星大気の特性を決定するために,熱解離と電離を考慮した化学平衡を仮定したリトリーバル解析を実行した.
その結果,ベストフィットモデルは観測データをよく再現できた.

観測データは黒体スペクトルからの乖離が見られ,かわりに 1.1 µm より短波長側で H- による放射が存在することが判明した.ベストフィットモデルでは過去に検出が報告されていた 1.25 µm でのスペクトルのバンプは再現されなかった.これは,過去に暫定的に存在が示唆されていた VO (酸化バナジウム) の放射ではなく,統計的なばらつきの特徴を見ている可能性を示唆するものである.

また,惑星大気の金属量を [M/H] = 1.09 と推定し,炭素と酸素の存在度を [C/Csolar] = -0.29,[O/Osolar] = 0.18 と測定した.これに対応する炭素-酸素比は C/O = 0.49 (+0.65, -0.37) である.これは太陽の値である 0.54 を含んでいるが,推定値は不定性が大きい.

研究背景

過去の WFC3 での観測例

ハッブル宇宙望遠鏡の WFC3 を用いた観測では,これまでに WASP-43b の大気中の水の吸収が検出されている (Stevenson et al. 2014など).その他にも,HD 189733b (Crouzet et al. 2014),HD 209458b (Line et al. 2016),ケプラー13Ab (Beatty et al. 2017) でも検出されている.
また,WASP-121b では水の放射スペクトルが検出されている (Evans et al. 2017).

その他の分子の特徴としては,WASP-33b で TiO の放射 (Haynes et al. 2015),WASP-18b で CO 吸収 (Sheppard et al. 2017) が報告されている.ただし後者の検出報告には異議もある (Arcangeli et al. 2018).

最近の観測では,ウルトラホットジュピター WASP-18b,HAT-P-7b,WASP-103b といった惑星で特徴をかいたスペクトルが検出されており,これは水分子自身の熱解離による H- の連続波オパシティを考慮することで説明可能であることが示唆されている (Arcangeli et al. 2018など).これは,惑星昼側の温度が 2000 K を超える場合で特に顕著である.

WASP-121b について

同じくウルトラホットジュピターである WASP-121b も上記の研究対象である.

Delrez et al. (2016) によって発見されたこの惑星は,半径が 1.8 木星半径と特に大きく膨張した半径を持っている.また昼側の光球温度はおよそ 2700 K である(Evans et al. 2017).これは中心星 WASP-121 が F6V 型で,軌道長半径が 0.025 AU と非常に近いことに由来している.

この惑星は中心星からの強い潮汐力を受け,またロッシュローブオーバーフローを介した大気散逸が進行中であると考えられる.この描像は,最近 Swift UVOT の近紫外線トランジット測定で,可視光波長よりも著しく深いトランジット深さが得られたことから推定された (Salz et al. 2019).

この深いトランジットは,惑星のロッシュローブを満たす,近紫外線波長で比較的厚い広がった大気の存在によって説明可能である.例えば重元素の吸収線などである.

近赤外線波長では,ハッブル宇宙望遠鏡の WFC3 がこの惑星の透過光 (Evans et al. 2016) と放射スペクトル (Evans et al. 2017) の両方を取得している.透過スペクトル中には 1.4 µm の水のバンドに由来する吸収が観測されている,一方で同じバンドで二次食の際には放射が検出されている.このことから,惑星の昼側半球での温度逆転層の存在が明らかにされた.

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