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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1811.05460
Fossati et al. (2018)
XUV Radiation from A-stars: Implications for Ultra-hot Jupiters
(A 型星からの XUV 照射:ウルトラホットジュピターへの応用)

概要

早期型星の近くを公転し,極めて強い輻射を受けている惑星は,大量の大気散逸が発生している可能性がある.

ここでは,X 線から可視光波長までの観測から,恒星の X 線や極端紫外線 (extreme ultraviolet, EUV) のフラックスの強度について示している文献をレビューする.過去の文献によると,有効温度が 8250 K 程度より低温の中間質量星に関しては,X 線と EUV フラックスは平均で太陽類似星よりも非常に高い一方で,より高温の中間質量星では表面対流が存在しないことにより逆に太陽類似星よりも低くなる.

また,中間質量星のスペクトルエネルギー分布のプロトタイプを構成し,それを太陽のスペクトルエネルギー分布と比較した.惑星の高層大気の加熱に関連する XUV フラックスは,低温な中間質量星で最も高く,高温な中間質量星では最も低くなる.一方で紫外線フラックスは恒星の温度が高くなるのに伴って増加する.


この恒星フラックスの特徴が近接惑星の質量放出に及ぼす影響を定量化するため,EUV で明るい A 型星 (WASP-33) を公転する惑星と,EUV で暗い A 型星 (KELT-9) を公転する惑星のシミュレーションを行った.

KELT-9b では,恒星からの紫外線と可視光の吸収による加熱に伴う大気の拡大によって,1011 g s-1 の質量放出率が駆動される,一方で恒星からの XUV 放射の吸収による加熱による質量放出率は 1010 g s-1 程度になる.従って,XUV のみを考慮したモデルでは質量放出率を過小評価してしまうことになる

WASP-33b では,高い XUV フラックスによって 1011 g s-1 の質量放出率が得られるという結果になった.EUV で明るい中間質量星を公転する軽い惑星では,より高い質量放出率になる可能性もある.

さらに,KELT-9 のような系で近接ガス惑星が長期間存続している原因についても議論を行った,惑星からの質量放出を制限する,弱い XUV 放射と比較的大きい惑星質量の組み合わせによって惑星が消失せずに存続しているのだろうと考えられる.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1811.03636
Mentiplay et al. (2018)
Super-Earths in the TW Hya disc
(うみへび座 TW 星円盤内のスーパーアース)

概要

うみへび座 TW 星 (TW Hya) の最近の観測で発見されたサブミリメートル波での熱放射と散乱光における円盤のギャップ構造は,惑星と円盤の相互作用で出来ているという仮説を検証した.

大域的な三次元ダスト入りの smoothed particle hydrodynamics (SPH) シミュレーションを実行し,計算結果の模擬観測と,ダスト熱放射,一酸化炭素放射と散乱光観測とを比較した.

その結果,円盤中に観測されている半径 24 au と 41 au のダストのギャップは,4 地球質量程度の 2 つのスーパーアースで説明可能であることが分かった.また,土星程度の質量を持つ一つの惑星で,94 au に発見されている一酸化炭素放射と散乱光に見られるギャップの深さと幅を説明可能である.

このモデルでは円盤中に明確な渦状腕を生成するが,観測データ中には渦状腕は明確には見られず,存在の兆候しか見られない.

円盤中の惑星の暴走成長と移動を防ぐためには,円盤質量は 0.01 太陽質量より小さい必要がある,これは一酸化炭素観測からの質量推定とは一致するが,HD 輝線からの推定よりは 10 - 100 倍低い.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1811.03202
Gupta & Schlichting (2018)
Sculpting the Valley in the Radius Distribution of Small Exoplanets as a by-product of Planet Formation: The Core-Powered Mass-Loss Mechanism
(惑星形成の副産物としての小さい系外惑星の半径分布の谷の形成:コア駆動質量損失機構)

概要

最近の観測では,小さい短周期系外惑星は惑星サイズにおいて二峰性の分布を持ち,1.5 - 2.0 地球半径には惑星存在度の「谷」があることが分かっている.ここでは,惑星自身の冷却光度が熱進化と大気の質量損失 (core-powered mass-loss,コア駆動の質量損失) に与える影響について調査した
.またその結果を,小さい近接系外惑星の半径分布の観測的結果と比較した.

シンプルな解析的記述と数値シミュレーションから,コア駆動の質量損失機構のみで惑星進化を再現し (大気の光蒸発を含めない),半径-軌道周期分布において観測されている分布の「谷」を説明することができた.また,半径-軌道周期パラメータ空間における「谷」の位置,形状および傾きと,谷の上下における惑星存在頻度の相対強度が一致した.

惑星半径-軌道周期平面における谷の傾きは,一次近似として,ボンディ半径における大気質量損失のタイムスケールで決定できることが分かった,
\(d \log R_{\rm p}/d \log P \simeq 1/\left(3\left(1-\beta\right)\right)\simeq -0.11\)
コアの質量と半径の関係は
\(M_{\rm c}\propto R_{\rm c}^{\beta} \)
である.

この近似式では,\(\beta\simeq 4\) のときが観測とよく合う.これは惑星コアの内部圧縮が地球よりも強いことを裏付ける.また谷の位置は非圧縮状態のコア密度の \(\rho_{\rm c*}^{-4/9}\) でスケールできることを見出し,観測された惑星のポピュレーションは岩石コアで典型的な水氷割合が 20% 程度以下であるものが大部分であることを示す.また,谷の上下における惑星存在頻度の相対比は惑星質量分布の詳細に敏感だが,谷の位置はそうではないことを発見した.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1811.02573
von Essen et al. (2018)
An optical transmission spectrum of the ultra-hot Jupiter WASP-33b. First indication of AlO in an exoplanet
(ウルトラホットジュピター WASP-33b の可視光透過スペクトル.系外惑星中の酸化アルミニウムの初めての兆候)

概要

近年の,観測装置,データリダクション,解析技術の改善により,系外惑星のスペクトルを高品質で取得できるようになってきた.特に地上の観測装置での改善が目立っている.高品質のデータを解釈するためには,解析に使うモデルの改良を必要とする.特に,金属酸化物のような化学種の検出を行うことは難しい.

極めて強く輻射を受ける系外惑星 (平衡温度 ~ 3000 K) では,金属酸化物は可視光で強い吸収を示すことが期待される.しかしそのような特徴は,これまでにわずかなホットジュピターでしか検出されていない.

ここでは,ウルトラホットジュピター WASP-33b の大気の特徴付けを行うため,2 回のトランジットを観測した.この 2 回の観測の間は,WASP-33b の公転周期 18 周期分の間隔が空いている.観測データは 10 m Gran Telescopio Canarias に設置された OSIRIS 分光器を用いて取得された.

この観測結果を元にした大気の復元解析から,この惑星の大気組成に制約を与えた.その結果,3.3 σ の有意度で酸化アルミニウム (AlO) の兆候と思われる特徴が検出された

恒星の脈動によって生成される光度曲線の光度変化を取り除き,波長依存して変化する惑星半径は恒星光の大気吸収によるものだと結論付けた.また,2 回の光度曲線の同時フィッティングより,トランジットパラメータの更新を行った.

背景

透過光分光観測と大気の特徴

惑星の透過スペクトルからは大気の様々な特徴が検出されている.例えば,ナトリウム,水,一酸化炭素,雲とヘイズである.

高分散分光観測では大気中の化学種を検出することができる,HD 209458b では,大気中からナトリウムが検出されている (Charbonneau et al. 2002).分解能が 100000 あれば,ナトリウムのような個別の化学種のスペクトル線コアを分光学的に分解することができる,また,軌道運動,自転も測定することが可能となり,極端なケースでは系外惑星大気の風速まで測定することができる (Snellen et al. 2010,Louden & Wheatley 2015).一方で低分散スペクトルと広帯域測光観測では,広い波長域にまたがった幅広いスペクトルの特徴を探査することが出来る.例えば雲,ヘイズ,レイリー散乱の存在などである (Sing et al. 2016など)

大気中の金属酸化物

初期の理論モデルでは,平衡温度 2500 K を超えるホットジュピターは M 型矮星に類似し,TiO や VO といった気体の酸化物が雲なし大気にあると考えられた (Hubeny et al. 2003,Fortney et al. 2008).TiO/VO の可視光波長での強い不透明度は,惑星大気中に温度逆転層を生み出す.これは高高度で温度が上昇するような構造である (Burrows et al. 2008).

温度逆転層の最初の観測的証拠は,より低温のホットジュピターで報告された (Knutson et al. 2008),しかしこの観測やその他のいくつかの観測では,温度逆転層の存在は後に再検討された (Diamond-Lowe et al. 2014,Hansen et al. 2014,Evans et al. 2015など).

温度逆転層の探査と並行して,なぜガス相の TiO が大気高層で物理的な役割を果たしていないように見えるのかを説明するための,いくつかの機構が調べられた.これは,分子が冷たい低層に凝縮して重力的に沈降し,また炭素対酸素比も低下するというメカニズムなどを含む (Spiegel et al. 2009; Parmentier et al. 2013; Madhusudhan 2012).

酸化チタンの検出報告

最近になって,最も高温な部類の巨大ガス惑星で TiO の検出報告がされている.

有効温度 2400 K の WASP-121b の昼夜境界において,Evans et al. (2016) は可視光での大きな不透明度の兆候を発見し,TiO による吸収によるものだと示唆した.その後すぐに,Evans et al. (2017) は同じ惑星で TiO の強い証拠と昼側での温度逆転層を発見した.

有効温度 2100 K の WASP-19b の透過スペクトルでは,TiO の可視光吸収バンドがスペクトル的に分解されている (Sedaghati et al. 2017).

しかし同様に高温 (2600 K) の WASP-12b では,昼夜境界で TiO の吸収は見られなかった.これは惑星大気のうちトランジットで探査できる範囲からは,これらの元素が取り除かれている可能性を示唆している (Sing et al. 2013).

これらの非常に高温なガス惑星 3 つの間の違いとしては,透過スペクトル中に雲とヘイズの兆候がどれだけ見られるかというものがある.WASP-12b の透過スペクトルは特徴を欠いており雲やヘイズによる影響が見られるが (Sing et al. 2013),WASP-19b と WASP-121b のスペクトルは雲やヘイズの影響を受けていないように思われる.

WASP-33b について

最も高温な KELT-9b に次ぐ温度である WASP-33b は,昼側の輝度温度が 3398 K である (von Essen et al. 2015).最近,Nugroho et al. (2017) はこの惑星の昼側半球から有意な TiO のシグナルを検出し,温度逆転層の存在も指摘している.これは Haynes et al. (2015) でも示唆されている.この惑星の位相曲線の研究では,大気中の熱循環は低温なホットジュピターのものと似ているとされている (Zhang et al. 2018).

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arXiv:1811.02060
Pearson et al. (2018)
Ground-based Spectroscopy of the Exoplanet XO-2b using a Systematic Wavelength Calibration
(系統的な波長較正を用いた系外惑星 XO-2b の地上分光)

概要

中心星の近くを公転する系外惑星は,太陽系で見られるよりも大きな圧力で広がる大きな電離圏を持っていることが期待される.これらの電離圏は,大気中のアルカリ金属の吸収を,地上からのトランジット観測で可視光の波長域で探査可能である.しかし大部分の地上からのトランジットスペクトルは,惑星大気中のアルカリ金属の存在度を制限するために必要な,スペクトル線のウィングの特徴と連続成分を系統的に分解できない.

ここでは,系外惑星 XO-2b の大気におけるナトリウム二重線をカバーする,可視光のトランジットスペクトルの新しい観測と解析について報告する.解析結果の整合性を評価するため,観測は 2 つの異なるプラットフォーム Gemini/GMOS と Matall/KOSMOS で得られたものを使用する,

結果のシステマティックな誤差を軽減するため,解析対象として XO-2 を選択した.これは,この天体は同じ輝度と恒星のタイプの連星を持っており,地球の大気の影響をモデル化する際に理想的な参照星として伴星を使用できるからである.

データの解釈は,検出器に沿った時間変動する変換に非常に敏感であり,これは波長とターゲットと参照星の間の違いに伴って変化することを見出した.観測した波長ビンを整列させ,大気の微分屈折を補正するためには,時間依存性のある相互相関を使用する必要があった.このアプローチにより,ナトリウムのスペクトル線のウィング構造を 5 つの波長ビンで分解することが出来た.分解能は ~ 1.6 nm であり,ナトリウムの存在度に制約を与える事ができる.

GMOS と KOSMOS の両方で整合的な結果となり,ナトリウムの強度はそれぞれ 521 ± 161 ppm と 403 ± 186 ppm であった.得られた結果を電離の効果を含んだ輻射輸送モデルで解析した.その結果,~ 1 - 100 mbar の圧力領域で晴れた大気の場合,ナトリウムの下限値は 0.4 ppm と推定され,これは太陽の存在度と整合的である.しかし ~ 10 mbar に雲が存在する可能性は否定できなかった,その場合,恒星で測定されている金属量と整合的な存在度となる.

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