×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1809.06389
Rafikov (2018)
Spin Evolution and Cometary Interpretation of the Interstellar Minor Object 1I/2017 'Oumuamua
(恒星間小天体オウムアムアの自転進化と彗星としての解釈)
しかし Micheli et al. (2018) の最近のオウムアムアの軌道の測定では,一定の非重力的な加速がこの天体の軌道に影響を及ぼしていることが示唆されており,これは天体の彗星活動に起因すると解釈されている.軌道に影響を及ぼすためには,彗星活動はかなり活発である必要がある.
ここでは,測定された非重力的加速によるオウムアムアの自転状態への影響を調べることによって,この解釈を批判的に再評価した.
脱ガスによる天体へのトルクは,オウムアムアの自転を急速に進化させる.この進化のタイムスケールは,トルクの非対称性を太陽系の彗星に典型的なものと仮定した場合は数日程度と推測される.
しかしこの天体が非常に細長い形状をしていることを考えると,トルクの非対称性は大きくなると考えられるため,より早い進化が起きることが示唆される.これにより,オウムアムアが太陽系に向けて進んでいる最中に,速い自転による分裂を起こす可能性があり,これは測光観測の変動から示唆されるこの天体の比較的安定した自転状態とは明確に両立しない.
これらの議論と,脱ガスの直接的な証拠が見られないことを元にすると,存在が主張されている異常な加速を説明するために提起されている,オウムアムアを彗星と解釈することには疑問の余地があると考えられる.
arXiv:1809.06389
Rafikov (2018)
Spin Evolution and Cometary Interpretation of the Interstellar Minor Object 1I/2017 'Oumuamua
(恒星間小天体オウムアムアの自転進化と彗星としての解釈)
概要
初の恒星間小天体 1I/2017 ’Oumuamua (オウムアムア) の観測では,もし揮発性物質に豊富な組成であった場合に起きることが期待される,脱ガスの直接的な兆候が見られなかった.しかし Micheli et al. (2018) の最近のオウムアムアの軌道の測定では,一定の非重力的な加速がこの天体の軌道に影響を及ぼしていることが示唆されており,これは天体の彗星活動に起因すると解釈されている.軌道に影響を及ぼすためには,彗星活動はかなり活発である必要がある.
ここでは,測定された非重力的加速によるオウムアムアの自転状態への影響を調べることによって,この解釈を批判的に再評価した.
脱ガスによる天体へのトルクは,オウムアムアの自転を急速に進化させる.この進化のタイムスケールは,トルクの非対称性を太陽系の彗星に典型的なものと仮定した場合は数日程度と推測される.
しかしこの天体が非常に細長い形状をしていることを考えると,トルクの非対称性は大きくなると考えられるため,より早い進化が起きることが示唆される.これにより,オウムアムアが太陽系に向けて進んでいる最中に,速い自転による分裂を起こす可能性があり,これは測光観測の変動から示唆されるこの天体の比較的安定した自転状態とは明確に両立しない.
これらの議論と,脱ガスの直接的な証拠が見られないことを元にすると,存在が主張されている異常な加速を説明するために提起されている,オウムアムアを彗星と解釈することには疑問の余地があると考えられる.
PR
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1809.05615
Piskorz et al. (2018)
Ground- and Space-based Detection of the Thermal Emission Spectrum of the Transiting Hot Jupiter KELT-2Ab
(トランジットするホットジュピター KELT-2Ab の熱放射スペクトルの地上と宇宙空間からの検出)
合計で,Keck NIRSPEC L バンドでの観測を 6 回行い,自己無撞着な大気モデルのグリッドと相互相関を行った.
視線方向の投影された惑星のケプラー速度を 148 km s-1 と測定した.この値はトランジット観測からの測定と整合的である.
また,大気中から水蒸気を 3.8σ で検出した.
NIRSPEC L バンドのデータをスピッツァー宇宙望遠鏡の IRAC の二次食データと組み合わせ,この惑星の大気の金属量と炭素・酸素存在比を探査した.NIRSPEC 解析ではスピッツァー宇宙望遠鏡のデータに対して追加の制約をあまり与えることが出来なかったが,金属量と炭素/酸素比に対してはおおむね同じ制約を与えた.これは,将来的な非トランジットホットジュピターの大気の探査に役立つ結果である.
arXiv:1809.05615
Piskorz et al. (2018)
Ground- and Space-based Detection of the Thermal Emission Spectrum of the Transiting Hot Jupiter KELT-2Ab
(トランジットするホットジュピター KELT-2Ab の熱放射スペクトルの地上と宇宙空間からの検出)
概要
トランジットするホットジュピター KELT-2Ab の大気中から水蒸気を検出した.この観測では,恒星-惑星系を分光連星として扱い,地上からの高分散の分光観測を行った.その結果,惑星の運動のシグナルを分解することができた.合計で,Keck NIRSPEC L バンドでの観測を 6 回行い,自己無撞着な大気モデルのグリッドと相互相関を行った.
視線方向の投影された惑星のケプラー速度を 148 km s-1 と測定した.この値はトランジット観測からの測定と整合的である.
また,大気中から水蒸気を 3.8σ で検出した.
NIRSPEC L バンドのデータをスピッツァー宇宙望遠鏡の IRAC の二次食データと組み合わせ,この惑星の大気の金属量と炭素・酸素存在比を探査した.NIRSPEC 解析ではスピッツァー宇宙望遠鏡のデータに対して追加の制約をあまり与えることが出来なかったが,金属量と炭素/酸素比に対してはおおむね同じ制約を与えた.これは,将来的な非トランジットホットジュピターの大気の探査に役立つ結果である.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1809.05967
Huang et al. (2018)
TESS Discovery of a Transiting Super-Earth in the Π Mensae System
(テーブルさん座パイ星系におけるトランジットスーパーアースの TESS による発見)
中心星のテーブルさん座パイ星は太陽型の恒星であり,等級は V = 5.7 と非常に明るい.この恒星は木星型惑星であるテーブルさん座パイ星b を持っていることが既に知られている.この惑星は軌道離心率が大きく,5.7 年周期で公転している.
今回新しく検出されたのは,2.14 地球半径で 6.27 日周期の惑星テーブルさん座パイ星c である.HARPS と AAT/UCLES アーカイブデータから得られた視線速度でも,同じく 6.27 日の周期での変動が検出され,惑星の存在が確認された.また,視線速度から質量は 4.82 地球質量と推定される.
この恒星は近傍にあり明るいため,さらなる探査に適している.例えば惑星大気の分光観測,星震学,ロシター・マクローリン効果,アストロメトリ,直接撮像などである.
TESS に搭載された 4 つの 10 cm 口径の望遠鏡を用いて広視野を反復的に観測し,惑星検出に適した恒星の光度をモニターする.
宇宙機は 2018 年 4 月 18 日に打ち上げられ,7 月 25 日にサーベイを開始した.
ドップラー観測によって,π Men b (テーブルさん座パイ星b) が発見されている.この惑星は質量が木星の 10 倍ほどであり,軌道周期は 5.7 年,軌道離心率が 0.6 である (Jones et al. 2002など).
中心星の実視等級は 5.67 と明るく,TESS によるサーベイの主要ターゲットである.
金属量:[Fe/H] = 0.08
質量:1.094 太陽質量
半径:1.10 太陽半径
光度:1.444 太陽光度
年齢:29.8 億歳
距離:18.27 pc
軌道離心率:0.637
質量:10.02 木星質量
軌道長半径:3.10 AU
質量:4.82 地球質量
半径:2.14 地球半径
平均密度:2.97 g cm-3
軌道長半径:0.06839 AU
平衡温度:1169.8 K
arXiv:1809.07573
Gandolfi et al. (2018)
TESS's first planet: a super-Earth transiting the naked-eye star π Mensae
(TESS の初めての惑星:肉眼で見える恒星テーブルさん座パイ星をトランジットするスーパーアース)
π Men (テーブルさん座パイ星) は,肉眼で見える 5.65 等級の静穏な G0V 星である.この恒星の周りには,準恒星質量の伴星 π Men b (テーブルさん座パイ星b) が 2091 日の長周期で,軌道離心率 0.64 の高軌道離心率で公転していることが知られている.
TESS の測光観測と Gaia による年周視差のデータを合わせ,さらに HARPS による視線速度アーカイブデータも合わせて解析し,内側にある テーブルさん座パイ星c を発見した.軌道周期は 6.25 日,4.51 地球質量,1.838 地球半径である.
軌道周期とサイズから,この惑星はスーパーアースであり,系外惑星の軌道長半径-惑星半径の分布図における半径ギャップかその近くに位置している.ただし,惑星の質量とバルク密度からは,この惑星は一定量の大気を持っていることが示唆される.
中心星が明るいため,この系は惑星大気や力学的測定を特徴付けるためのさらなる観測の対象として適している.
また,TESS で得られた光度曲線から星震学的解析も行った.
その結果,2600 µHz 周辺に ~ 120 µHz の間隔を持った独立したピークの兆候を検出した.この結果はシグナルノイズ比が低いものの,このタイプの恒星に見られる振動の周波数として予測されるものと整合的であり,TESS ミッションでの星震学的解析の可能性を示すものである.
今年 4 月に打ち上げられた NASA の新しい系外惑星探査機,TESS による惑星の初発見報告です.
同じ観測対象に関して,ほぼ同時期に 2 つの発見報告論文が投稿されました.
前者の論文の謝辞欄には
arXiv:1809.05967
Huang et al. (2018)
TESS Discovery of a Transiting Super-Earth in the Π Mensae System
(テーブルさん座パイ星系におけるトランジットスーパーアースの TESS による発見)
概要
π Men (テーブルさん座パイ星,HD 39091) 周りのトランジット惑星の検出について報告する.この検出は,最近打ち上げられた Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) のデータを元に行われた.中心星のテーブルさん座パイ星は太陽型の恒星であり,等級は V = 5.7 と非常に明るい.この恒星は木星型惑星であるテーブルさん座パイ星b を持っていることが既に知られている.この惑星は軌道離心率が大きく,5.7 年周期で公転している.
今回新しく検出されたのは,2.14 地球半径で 6.27 日周期の惑星テーブルさん座パイ星c である.HARPS と AAT/UCLES アーカイブデータから得られた視線速度でも,同じく 6.27 日の周期での変動が検出され,惑星の存在が確認された.また,視線速度から質量は 4.82 地球質量と推定される.
この恒星は近傍にあり明るいため,さらなる探査に適している.例えば惑星大気の分光観測,星震学,ロシター・マクローリン効果,アストロメトリ,直接撮像などである.
背景
TESS ミッション
Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) は,太陽系近傍の明るい恒星周りにおける,地球サイズまでの小さいトランジット惑星を検出するのを目的としたミッション,およびその宇宙望遠鏡である.TESS に搭載された 4 つの 10 cm 口径の望遠鏡を用いて広視野を反復的に観測し,惑星検出に適した恒星の光度をモニターする.
宇宙機は 2018 年 4 月 18 日に打ち上げられ,7 月 25 日にサーベイを開始した.
テーブルさん座パイ星について
テーブルさん座パイ星は HD 39091 としても知られ,肉眼で見える恒星である.スペクトル型 G0V の主系列星で,距離は 18.27 pc である (Gaia Collaboration et al. 2018).また質量と半径は 1.1 太陽質量,1.1 太陽半径である.ドップラー観測によって,π Men b (テーブルさん座パイ星b) が発見されている.この惑星は質量が木星の 10 倍ほどであり,軌道周期は 5.7 年,軌道離心率が 0.6 である (Jones et al. 2002など).
中心星の実視等級は 5.67 と明るく,TESS によるサーベイの主要ターゲットである.
パラメータ
テーブルさん座パイ星
有効温度:6037 K金属量:[Fe/H] = 0.08
質量:1.094 太陽質量
半径:1.10 太陽半径
光度:1.444 太陽光度
年齢:29.8 億歳
距離:18.27 pc
テーブルさん座パイ星b
軌道周期:2093.07 日軌道離心率:0.637
質量:10.02 木星質量
軌道長半径:3.10 AU
テーブルさん座パイ星c
軌道周期:6.2682 日質量:4.82 地球質量
半径:2.14 地球半径
平均密度:2.97 g cm-3
軌道長半径:0.06839 AU
平衡温度:1169.8 K
arXiv:1809.07573
Gandolfi et al. (2018)
TESS's first planet: a super-Earth transiting the naked-eye star π Mensae
(TESS の初めての惑星:肉眼で見える恒星テーブルさん座パイ星をトランジットするスーパーアース)
概要
π Men c (テーブルさん座パイ星c) の確認と質量決定について報告する.これは,NASA の TESS ミッションでの初めてのトランジット惑星の発見報告である.π Men (テーブルさん座パイ星) は,肉眼で見える 5.65 等級の静穏な G0V 星である.この恒星の周りには,準恒星質量の伴星 π Men b (テーブルさん座パイ星b) が 2091 日の長周期で,軌道離心率 0.64 の高軌道離心率で公転していることが知られている.
TESS の測光観測と Gaia による年周視差のデータを合わせ,さらに HARPS による視線速度アーカイブデータも合わせて解析し,内側にある テーブルさん座パイ星c を発見した.軌道周期は 6.25 日,4.51 地球質量,1.838 地球半径である.
軌道周期とサイズから,この惑星はスーパーアースであり,系外惑星の軌道長半径-惑星半径の分布図における半径ギャップかその近くに位置している.ただし,惑星の質量とバルク密度からは,この惑星は一定量の大気を持っていることが示唆される.
中心星が明るいため,この系は惑星大気や力学的測定を特徴付けるためのさらなる観測の対象として適している.
また,TESS で得られた光度曲線から星震学的解析も行った.
その結果,2600 µHz 周辺に ~ 120 µHz の間隔を持った独立したピークの兆候を検出した.この結果はシグナルノイズ比が低いものの,このタイプの恒星に見られる振動の周波数として予測されるものと整合的であり,TESS ミッションでの星震学的解析の可能性を示すものである.
今年 4 月に打ち上げられた NASA の新しい系外惑星探査機,TESS による惑星の初発見報告です.
同じ観測対象に関して,ほぼ同時期に 2 つの発見報告論文が投稿されました.
前者の論文の謝辞欄には
We acknowledge the use of TESS Alert data, whichis currently in a beta test phase, from the TESS Sci-ence Office.という文章があり,まだベータテスト段階の運用である TESS のアラートデータを使用した惑星の検出だったようです.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1809.05517
Bailey & Batygin (2018)
The hot Jupiter period-mass distribution as a signature of in situ formation
(その場形成の兆候としてのホットジュピターの周期-質量分布)
従来のシナリオでは,これらの強い輻射を受けている巨大惑星は,木星や土星のように中心星から大きく離れた軌道で形成され,その後大きなスケールの軌道崩壊を経験して現在の軌道に到達したとされている.
より最近のモデルでは対照的に,ホットジュピターの大部分は現在の軌道付近において,急速なガス降着によって形成可能であると提案されている.
この研究では,ホットジュピターなどの近接巨大惑星の軌道周期-質量分布を調査した.その結果,この分布の集団の内側境界は,その場形成シナリオからの予測に従うことを再現した.具体的には,もし惑星が原始惑星系円盤の内縁に近い場合は,惑星の軌道長半径-質量の関係は,\(a\propto M^{-2/7}\) のべき乗則に従うようになる.これは観測データにも明確に見えている傾向である.
さらに,惑星軌道の潮汐崩壊によるこの関係性の変化についても議論を行った.
今回の発見は,軌道移動の結果としてのホットジュピターの形成が主要な物理過程であることを否定するものではないが,巨大惑星が経験する軌道移動の特徴的な範囲は限定的であることを示唆している.
\(\xi\) = 0.1 au 以内に含まれる質量は,Mestel (1961) 型の原始惑星系円盤を考慮し,表面密度分布を \(\Sigma=\Sigma_{0}\left(r_{0}/r\right)\),\(r_{0}\) = 1 au での面密度 \(\Sigma_{0}\)=2000 g cm-3 とすると,
\[
\oint\int^{\xi}_{r_{\rm in}}\Sigma r dr d\phi < 2\pi\Sigma_{0}r_{0}\xi\ll M_{\rm J}
\]
と書くことが出来る.ここで \(r_{\rm in}\) は円盤の内側境界である.
この単純な推定だけでも,必要な質量が足りないため,局所的な惑星形成では短時間でホットジュピターがその場形成できないことが分かる.その代わりに,ガスは粘性降着によって原始惑星へと供給されている必要がある.
原始惑星へのガスの降着を考慮すると,ホットジュピターの質量は以下のように大まかに書くことができるだろう.
\[
M_{\rm HJ}\sim\tau\dot{M}
\]
ここで \(\dot{M}\sim10^{-8}M_{\odot}{\rm yr^{-1}}\) は円盤内縁でのガス降着率,\(\tau\sim10^{5}\) 年は特徴的な降着タイムスケールで,一般には円盤年齢の何割かの値になる.
ホットジュピター形成に関するその場モデルの枠組みの中で,ガス降着が可能な最も小さい軌道半径 (円盤内縁半径) は,おおまかには円盤の磁気圏切り取り半径になる.ここで重要なこととして,ホットジュピター質量と同様に,円盤切り取り半径も \(\dot{M}\) によって決まる.この長さスケールは以下のように書くことが出来る.
\[
R_{\rm t}\sim\left(\frac{\mathcal{M}^{2}}{\dot{M}\sqrt{GM_{\star}}}\right)^{2/7}
\]
(Ghosh & Lamb 1979,Koenigl 1991,Shu et al. 1994).ここで \(\mathcal{M}\) は恒星の磁気モーメントである.
物理的には,\(R_{\rm t}\) は円盤物質の粘性拡散が,恒星磁気圏がガスに与えるトルクとバランスする特徴的な長さを意味する.
これらを組み合わせると,
\[
a\sim\left(\frac{\mathcal{M}^{2}\tau}{M_{\rm HJ}\sqrt{GM_{\star}}}\right)^{2/7}\propto M_{\rm HJ}^{-2/7}
\]
となる.
arXiv:1809.05517
Bailey & Batygin (2018)
The hot Jupiter period-mass distribution as a signature of in situ formation
(その場形成の兆候としてのホットジュピターの周期-質量分布)
概要
短周期の軌道を公転する木星クラスの惑星 (ホットジュピター) が多く発見されてから 20 年以上が立つが,これらの力学的な起源は未だに解明されていない.従来のシナリオでは,これらの強い輻射を受けている巨大惑星は,木星や土星のように中心星から大きく離れた軌道で形成され,その後大きなスケールの軌道崩壊を経験して現在の軌道に到達したとされている.
より最近のモデルでは対照的に,ホットジュピターの大部分は現在の軌道付近において,急速なガス降着によって形成可能であると提案されている.
この研究では,ホットジュピターなどの近接巨大惑星の軌道周期-質量分布を調査した.その結果,この分布の集団の内側境界は,その場形成シナリオからの予測に従うことを再現した.具体的には,もし惑星が原始惑星系円盤の内縁に近い場合は,惑星の軌道長半径-質量の関係は,\(a\propto M^{-2/7}\) のべき乗則に従うようになる.これは観測データにも明確に見えている傾向である.
さらに,惑星軌道の潮汐崩壊によるこの関係性の変化についても議論を行った.
今回の発見は,軌道移動の結果としてのホットジュピターの形成が主要な物理過程であることを否定するものではないが,巨大惑星が経験する軌道移動の特徴的な範囲は限定的であることを示唆している.
ホットジュピターのその場形成について
ホットジュピターが現在存在するような,原始惑星系円盤の内側での物質の量について考慮する.\(\xi\) = 0.1 au 以内に含まれる質量は,Mestel (1961) 型の原始惑星系円盤を考慮し,表面密度分布を \(\Sigma=\Sigma_{0}\left(r_{0}/r\right)\),\(r_{0}\) = 1 au での面密度 \(\Sigma_{0}\)=2000 g cm-3 とすると,
\[
\oint\int^{\xi}_{r_{\rm in}}\Sigma r dr d\phi < 2\pi\Sigma_{0}r_{0}\xi\ll M_{\rm J}
\]
と書くことが出来る.ここで \(r_{\rm in}\) は円盤の内側境界である.
この単純な推定だけでも,必要な質量が足りないため,局所的な惑星形成では短時間でホットジュピターがその場形成できないことが分かる.その代わりに,ガスは粘性降着によって原始惑星へと供給されている必要がある.
原始惑星へのガスの降着を考慮すると,ホットジュピターの質量は以下のように大まかに書くことができるだろう.
\[
M_{\rm HJ}\sim\tau\dot{M}
\]
ここで \(\dot{M}\sim10^{-8}M_{\odot}{\rm yr^{-1}}\) は円盤内縁でのガス降着率,\(\tau\sim10^{5}\) 年は特徴的な降着タイムスケールで,一般には円盤年齢の何割かの値になる.
ホットジュピター形成に関するその場モデルの枠組みの中で,ガス降着が可能な最も小さい軌道半径 (円盤内縁半径) は,おおまかには円盤の磁気圏切り取り半径になる.ここで重要なこととして,ホットジュピター質量と同様に,円盤切り取り半径も \(\dot{M}\) によって決まる.この長さスケールは以下のように書くことが出来る.
\[
R_{\rm t}\sim\left(\frac{\mathcal{M}^{2}}{\dot{M}\sqrt{GM_{\star}}}\right)^{2/7}
\]
(Ghosh & Lamb 1979,Koenigl 1991,Shu et al. 1994).ここで \(\mathcal{M}\) は恒星の磁気モーメントである.
物理的には,\(R_{\rm t}\) は円盤物質の粘性拡散が,恒星磁気圏がガスに与えるトルクとバランスする特徴的な長さを意味する.
これらを組み合わせると,
\[
a\sim\left(\frac{\mathcal{M}^{2}\tau}{M_{\rm HJ}\sqrt{GM_{\star}}}\right)^{2/7}\propto M_{\rm HJ}^{-2/7}
\]
となる.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1809.04897
Anderson et al. (2018)
WASP-189b: an ultra-hot Jupiter transiting the bright A star HR 5599 in a polar orbit
(WASP-189b:明るい HR 5599 を極軌道でトランジットするウルトラホットジュピター)
WASP-South サーベイの装置を用いて,恒星の光度曲線中に周期的な減光が検出された.その後,TRAPPIST-South 望遠鏡を用いた観測でも減光が検出された.
これらの減光が惑星のトランジットによるものであることを,スペクトル線分布のトモグラフィーと視線速度測定を用いて確認した.これらのフォローアップ観測には,HARPS と CORALIE 分光器を使用した.
中心星 WASP-189 は高速自転する A6IV-V 星であり,有効温度 8000 K,天球上に射影した自転速度は \(v \sin i \sim 100 {\rm km/s}\) である.
惑星 WASP-189b は 2.13 木星質量,1.374 木星半径であり,恒星の自転軸と惑星の公転軸の成す角が 89.3° という極軌道を公転している.
予測される惑星の平衡温度は 2641 K である.これは惑星のアルベドをゼロと仮定し,熱の再分配が効率的であると仮定した場合の値である.この温度は,既知の系外惑星の中では三番目に高温なものである.
中心星は,トランジットするホットジュピターを持つ恒星としては最も明るく,またあらゆる種類のトランジット系外惑星を持つ恒星としては 3 番目に明るい恒星である.
ホットジュピターを持っている恒星のうち,有効温度が 7000 K を超えるものは 8 個発見されている.そのうち 7 個の系では惑星は大きく傾いた軌道で公転している.また同じく有効温度が 8000 K を超えるものは 3 個発見されているが,そのうち 2 個の系では惑星は極軌道で公転している (3 つ目の系は軌道は揃っている).
惑星形成理論におけるコア降着モデルでは,重い恒星の周りでは惑星はより一般的に存在することが予測されている (Pollack et al. 1996).
Kennedy & Kenyon (2008) による惑星の存在頻度の予測では,恒星質量が 0.4 - 3 太陽質量の範囲では,惑星の存在頻度は恒星質量に伴って線形で増加すると考えられている.実際に,Cumming et al. (2008) は巨大惑星 (0.3 - 10 木星質量で軌道周期 2 - 2000 日) の存在頻度は,M 型矮星の周りでは FGK 星より 10 倍ほど低く 1% 程度であるのに対し,FGK 星の周りでは 10.5% となる.
ただし,この傾向が A 型星の質量範囲まで続くかは不明である.Borgniet et al. (2017) は A 型星まわりの惑星 (0.1 - 10 木星質量,1 - 1000 日周期) の存在頻度を 4 (+10, -4)% と推定したが,傾向を確認するには精度が良くない.また,高温の恒星周りの惑星を探査するモチベーションとしては,その惑星の特徴付けを行いたいというものもある.
質量:2.20 太陽質量
質量:2.13 木星質量
半径:1.374 木星半径
密度:0.83 木星密度
軌道長半径:0.0497 AU
平衡温度:2641 K
中心星 WASP-189 の有効温度と光度からは,この恒星は不安定帯にあり,WASP-33 と同様に δ-Scuti 型変光星 (たて座デルタ型変光星) である可能性が示唆される.この惑星は中心星が巨星分枝に進化する段階で中心星に飲み込まれる.WASP-189 は今後 3 億 2000 万年の間に,WASP-189b の軌道半径にまで膨張すると予測される (Spada et al. 2017).
Gaudi et al. (2017) が指摘したように,KELT-9 系での場合と同様に,惑星の飲み込みが発生した場合は明るい一時的な増光イベントを起こすと考えられる (Metzger et al. 2012),また惑星の飲み込みの結果,中心星は異常に自転が高速でリチウムが豊富な赤色巨星になると考えられる (Aguilera-G ́omez et al. 2016).
なお,トランジットを起こさないホットジュピターを持つ系としては,この恒星より明るいものが 6 つ知られている.等級が V = 4.1 - 6.3 の範囲で,ups And (アンドロメダ座ウプシロン星),tau Boo (うしかい座タウ星),51 Peg (ペガスス座 51 番星),HD 217107,HD 179949,HD 75289 である.
惑星質量を限定しない場合,WASP-189 はトランジット系外惑星を持つ恒星としては 3 番目に明るい恒星である.最も明るいのは,トランジットするスーパーアースを持つ HD 219134 で V = 5.57 (Motalebi et al. 2015,Gillon et al. 2017),2 番目は 55 Cnc (かに座 55 番星) で V = 5.95 である (McArthur et al. 2004,Bourrier et al. 2018).
arXiv:1809.04897
Anderson et al. (2018)
WASP-189b: an ultra-hot Jupiter transiting the bright A star HR 5599 in a polar orbit
(WASP-189b:明るい HR 5599 を極軌道でトランジットするウルトラホットジュピター)
概要
WASP-189b の発見について報告する.この惑星は軌道周期が 2.72 日のウルトラホットジュピターで,中心星は等級が V = 6.6 の A 型星,WASP-189 (別名 HR 5599) である.WASP-South サーベイの装置を用いて,恒星の光度曲線中に周期的な減光が検出された.その後,TRAPPIST-South 望遠鏡を用いた観測でも減光が検出された.
これらの減光が惑星のトランジットによるものであることを,スペクトル線分布のトモグラフィーと視線速度測定を用いて確認した.これらのフォローアップ観測には,HARPS と CORALIE 分光器を使用した.
中心星 WASP-189 は高速自転する A6IV-V 星であり,有効温度 8000 K,天球上に射影した自転速度は \(v \sin i \sim 100 {\rm km/s}\) である.
惑星 WASP-189b は 2.13 木星質量,1.374 木星半径であり,恒星の自転軸と惑星の公転軸の成す角が 89.3° という極軌道を公転している.
予測される惑星の平衡温度は 2641 K である.これは惑星のアルベドをゼロと仮定し,熱の再分配が効率的であると仮定した場合の値である.この温度は,既知の系外惑星の中では三番目に高温なものである.
中心星は,トランジットするホットジュピターを持つ恒星としては最も明るく,またあらゆる種類のトランジット系外惑星を持つ恒星としては 3 番目に明るい恒星である.
ホットジュピターを持っている恒星のうち,有効温度が 7000 K を超えるものは 8 個発見されている.そのうち 7 個の系では惑星は大きく傾いた軌道で公転している.また同じく有効温度が 8000 K を超えるものは 3 個発見されているが,そのうち 2 個の系では惑星は極軌道で公転している (3 つ目の系は軌道は揃っている).
背景
これまで発見されている系外惑星系では,有効温度が 7000 K より高い恒星の周りでは惑星の発見個数が少ない.これは高温で自転が高速な恒星ではスペクトル線の分布がまばらになり,かつスペクトル線の幅が広がってしまうためである.このような恒星では視線速度の観測が難しくなる.そのため高温の恒星周りでの惑星の形成と進化はこれまでにあまり研究が進んでいない.惑星形成理論におけるコア降着モデルでは,重い恒星の周りでは惑星はより一般的に存在することが予測されている (Pollack et al. 1996).
Kennedy & Kenyon (2008) による惑星の存在頻度の予測では,恒星質量が 0.4 - 3 太陽質量の範囲では,惑星の存在頻度は恒星質量に伴って線形で増加すると考えられている.実際に,Cumming et al. (2008) は巨大惑星 (0.3 - 10 木星質量で軌道周期 2 - 2000 日) の存在頻度は,M 型矮星の周りでは FGK 星より 10 倍ほど低く 1% 程度であるのに対し,FGK 星の周りでは 10.5% となる.
ただし,この傾向が A 型星の質量範囲まで続くかは不明である.Borgniet et al. (2017) は A 型星まわりの惑星 (0.1 - 10 木星質量,1 - 1000 日周期) の存在頻度を 4 (+10, -4)% と推定したが,傾向を確認するには精度が良くない.また,高温の恒星周りの惑星を探査するモチベーションとしては,その惑星の特徴付けを行いたいというものもある.
パラメータ
WASP-189
有効温度:8000 K質量:2.20 太陽質量
WASP-189b
軌道周期:2.7240330 日質量:2.13 木星質量
半径:1.374 木星半径
密度:0.83 木星密度
軌道長半径:0.0497 AU
平衡温度:2641 K
WASP-189 系について
これまでのウルトラホットジュピターとの比較
WASP-189b のアルベドをゼロとし,熱の再分配が効率的だとした場合,平衡温度は 2641 K と推定される.これは,既知の系外惑星の平衡温度の中では 3 番目に高い値である.なお,1 番目は KELT-9b で 4050 K (Gaudi et al. 2017),その次が WASP-33b で 2710 K である (Collier Cameron et al. 2010).中心星 WASP-189 の有効温度と光度からは,この恒星は不安定帯にあり,WASP-33 と同様に δ-Scuti 型変光星 (たて座デルタ型変光星) である可能性が示唆される.この惑星は中心星が巨星分枝に進化する段階で中心星に飲み込まれる.WASP-189 は今後 3 億 2000 万年の間に,WASP-189b の軌道半径にまで膨張すると予測される (Spada et al. 2017).
Gaudi et al. (2017) が指摘したように,KELT-9 系での場合と同様に,惑星の飲み込みが発生した場合は明るい一時的な増光イベントを起こすと考えられる (Metzger et al. 2012),また惑星の飲み込みの結果,中心星は異常に自転が高速でリチウムが豊富な赤色巨星になると考えられる (Aguilera-G ́omez et al. 2016).
中心星の明るい光度
WASP-189 は等級が V = 6.64 であり,これはその他のトランジットするホットジュピターを持つ恒星よりもほぼ 1 等級明るい.このような恒星の中で WASP-189 の次に明るいのは KELT-9 で V = 7.56,次が KELT-20/MASCARA-2 の V = 7.59 である (Lund et al. 2017,Talens et al. 2018).また,よく研究されている晩期型の恒星 HD 209458 は V = 7.65 でスペクトル型は G0V (Charbonneau et al. 2000,Henry et al. 2000),HD 189733 は V = 7.68 でスペクトル型は K1-2V である (Bouchy et al. 2005).なお,トランジットを起こさないホットジュピターを持つ系としては,この恒星より明るいものが 6 つ知られている.等級が V = 4.1 - 6.3 の範囲で,ups And (アンドロメダ座ウプシロン星),tau Boo (うしかい座タウ星),51 Peg (ペガスス座 51 番星),HD 217107,HD 179949,HD 75289 である.
惑星質量を限定しない場合,WASP-189 はトランジット系外惑星を持つ恒星としては 3 番目に明るい恒星である.最も明るいのは,トランジットするスーパーアースを持つ HD 219134 で V = 5.57 (Motalebi et al. 2015,Gillon et al. 2017),2 番目は 55 Cnc (かに座 55 番星) で V = 5.95 である (McArthur et al. 2004,Bourrier et al. 2018).
※関連記事
天文・宇宙物理関連メモ vol.524 Lund et al. (2017) および Talens et al. (2017) A 型星をトランジットするホットジュピター KELT-20b/MASCARA-2b の発見
天文・宇宙物理関連メモ vol. 33 Motalebi et al. (2015) 太陽系に最も近いトランジット惑星の発見
天文・宇宙物理関連メモ vol.398 Gillon et al. (2017) 近傍の恒星 HD 219134 をトランジットする 2 つの岩石惑星
天文・宇宙物理関連メモ vol.955 Bourrier et al. (2018) かに座55番星系の再評価および惑星 e の特徴付け
天文・宇宙物理関連メモ vol.524 Lund et al. (2017) および Talens et al. (2017) A 型星をトランジットするホットジュピター KELT-20b/MASCARA-2b の発見
天文・宇宙物理関連メモ vol. 33 Motalebi et al. (2015) 太陽系に最も近いトランジット惑星の発見
天文・宇宙物理関連メモ vol.398 Gillon et al. (2017) 近傍の恒星 HD 219134 をトランジットする 2 つの岩石惑星
天文・宇宙物理関連メモ vol.955 Bourrier et al. (2018) かに座55番星系の再評価および惑星 e の特徴付け
天文・宇宙物理関連メモ vol.948 Micheli et al. (2018) オウムアムアの軌跡における脱ガスによる非重力的加速