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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1804.07137
Kitzmann et al. (2018)
The Peculiar Atmospheric Chemistry of KELT-9b
(KELT-9b の特殊な大気化学)
中心星 KELT-9 から強い紫外線フラックスを受けているにも関わらず,光化学運動学計算を用いることで,KELT-9b の観測可能な範囲の大気は化学平衡に近いと予想される.そのためこの惑星のスペクトルの理論的な解釈は大幅に単純化することができる.
惑星大気の透過光分光観測で探査されている領域の圧力が低いため,水の存在度は大気の縁の方向に向かって温度に依存して数桁変化すると予測される.そのため大気中の水は敏感な温度計として使用できる.
一酸化炭素は,多くの大気モデルにおいて大気の主要な分子であると予測され,水と並行して分析した場合は大気中の金属量の強固な診断法となる.その他の全ての候補分子 (アセチレン,アンモニア,二酸化炭素,シアン化水素,メタン) は,太陽金属量のもとでは subdominant であると予想されるが,酸素原子,鉄とマグネシウムの相対量は 10000 分の 1 と予想される.
中性の鉄原子は,可視光と近赤外でのスペクトル線の forest として観測されると予想される,そのためこの惑星は,HAPRS-N や CARMENES などの装置を用いた,地上からの高分散分光観測の対象として適している.
また,将来のハッブル宇宙望遠鏡やジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡,CHEOPS での観測の期待についても議論を行う.
惑星の平衡温度は 4000 K を超え,z’ バンドで測定した輝度温度は 4600 K である (Gaudi et al. 2017).
Bell & Cowan (2018) は,この惑星の昼と夜側の境界領域は,水素原子と水素分子が遷移する境界と一致する可能性を指摘している.このことは,水素原子から水素分子を形成する際に伴う潜熱が,昼夜間の熱の再分配効率を変化させる可能性があることを示唆している.KELT-9b は WASP-33b よりも 700 倍強い紫外線放射を受けているものの,KELT-9b の大気は化学平衡に近い状態を保持していることが期待される.これは,観測できる範囲の大気の温度が非常に高いためである.化学平衡にある大気は,原子と分子の存在度が温度,圧力と元素存在度のみで決まるため,解釈が容易になる.このため大気中の化学反応は,全球的ではなく局所的な問題として取り扱うことが出来る.
arXiv:1804.07137
Kitzmann et al. (2018)
The Peculiar Atmospheric Chemistry of KELT-9b
(KELT-9b の特殊な大気化学)
概要
非常に高温のホットジュピター KELT-9b の大気温度は,ガス惑星の温度と恒星の大気温度の間にまたがっており,したがって大気化学の伝統的な異なるレジーム (惑星大気化学と恒星大気化学) の間にまたがっている.中心星 KELT-9 から強い紫外線フラックスを受けているにも関わらず,光化学運動学計算を用いることで,KELT-9b の観測可能な範囲の大気は化学平衡に近いと予想される.そのためこの惑星のスペクトルの理論的な解釈は大幅に単純化することができる.
惑星大気の透過光分光観測で探査されている領域の圧力が低いため,水の存在度は大気の縁の方向に向かって温度に依存して数桁変化すると予測される.そのため大気中の水は敏感な温度計として使用できる.
一酸化炭素は,多くの大気モデルにおいて大気の主要な分子であると予測され,水と並行して分析した場合は大気中の金属量の強固な診断法となる.その他の全ての候補分子 (アセチレン,アンモニア,二酸化炭素,シアン化水素,メタン) は,太陽金属量のもとでは subdominant であると予想されるが,酸素原子,鉄とマグネシウムの相対量は 10000 分の 1 と予想される.
中性の鉄原子は,可視光と近赤外でのスペクトル線の forest として観測されると予想される,そのためこの惑星は,HAPRS-N や CARMENES などの装置を用いた,地上からの高分散分光観測の対象として適している.
また,将来のハッブル宇宙望遠鏡やジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡,CHEOPS での観測の期待についても議論を行う.
背景
KELT-9b は,スペクトル型が A/B の恒星を公転するホットジュピターとしては初めての発見例である.惑星の平衡温度は 4000 K を超え,z’ バンドで測定した輝度温度は 4600 K である (Gaudi et al. 2017).
Bell & Cowan (2018) は,この惑星の昼と夜側の境界領域は,水素原子と水素分子が遷移する境界と一致する可能性を指摘している.このことは,水素原子から水素分子を形成する際に伴う潜熱が,昼夜間の熱の再分配効率を変化させる可能性があることを示唆している.KELT-9b は WASP-33b よりも 700 倍強い紫外線放射を受けているものの,KELT-9b の大気は化学平衡に近い状態を保持していることが期待される.これは,観測できる範囲の大気の温度が非常に高いためである.化学平衡にある大気は,原子と分子の存在度が温度,圧力と元素存在度のみで決まるため,解釈が容易になる.このため大気中の化学反応は,全球的ではなく局所的な問題として取り扱うことが出来る.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1804.06346
Kislyakova et al. (2018)
Effective induction heating around strongly magnetized stars
(強く磁化された恒星周りでの実効的な誘導加熱)
惑星内部での誘導加熱が効くためには,惑星軌道は恒星の自転軸および磁場の双極軸に対して傾いている必要がある.
恒星の自転軸と磁場の軸が一致している恒星である WX Uma (おおぐま座WX星) を例として用い,傾斜した軌道にある近接惑星の内部では,誘導加熱は木星の衛星イオの内部で発生している潮汐加熱よりも強くなる可能性があることを示す.つまり,2 W m-2 を超える表面熱流量が誘導加熱によって生成可能である.
このような大きさの内部熱源は,惑星表面での非常に活発な火山活動を引き起こす可能性がある.場合によっては,惑星内部の局所的なマグマオーシャンや,惑星軌道に沿って恒星周りにプラズマトーラスが形成される.
火山活動が活発な惑星は,宇宙空間に主に二酸化硫黄を放出する.放出された二酸化硫黄はその後,酸素原子と硫黄原子に解離する.また,若い惑星は二酸化炭素も放出する.そのため,酸素はトーラスの主要成分になると考えられる.
もしトーラス中の酸素原子の柱密度が 1012 cm-2 程度を超えると,1304 Å 周辺の遠紫外線領域での強い酸素原子三重項の吸収特徴によって,トーラスが検出可能である.この条件は,トーラス中の酸素原子が 1 - 10 km s-1 よりも低速で惑星から脱出する時に満たされる.
上記の推定は,誘導加熱ではなく潮汐加熱を受けている惑星にも適用できる.
arXiv:1804.06346
Kislyakova et al. (2018)
Effective induction heating around strongly magnetized stars
(強く磁化された恒星周りでの実効的な誘導加熱)
概要
中心星の変化する磁場の中に存在する惑星は,惑星の軌道運動によって引き起こされる,惑星内部での大きな誘導加熱を経験する可能性がある.惑星内部での誘導加熱が効くためには,惑星軌道は恒星の自転軸および磁場の双極軸に対して傾いている必要がある.
恒星の自転軸と磁場の軸が一致している恒星である WX Uma (おおぐま座WX星) を例として用い,傾斜した軌道にある近接惑星の内部では,誘導加熱は木星の衛星イオの内部で発生している潮汐加熱よりも強くなる可能性があることを示す.つまり,2 W m-2 を超える表面熱流量が誘導加熱によって生成可能である.
このような大きさの内部熱源は,惑星表面での非常に活発な火山活動を引き起こす可能性がある.場合によっては,惑星内部の局所的なマグマオーシャンや,惑星軌道に沿って恒星周りにプラズマトーラスが形成される.
火山活動が活発な惑星は,宇宙空間に主に二酸化硫黄を放出する.放出された二酸化硫黄はその後,酸素原子と硫黄原子に解離する.また,若い惑星は二酸化炭素も放出する.そのため,酸素はトーラスの主要成分になると考えられる.
もしトーラス中の酸素原子の柱密度が 1012 cm-2 程度を超えると,1304 Å 周辺の遠紫外線領域での強い酸素原子三重項の吸収特徴によって,トーラスが検出可能である.この条件は,トーラス中の酸素原子が 1 - 10 km s-1 よりも低速で惑星から脱出する時に満たされる.
上記の推定は,誘導加熱ではなく潮汐加熱を受けている惑星にも適用できる.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1804.05065
Petrovich et al. (2018)
Ultra-short-period planets from secular chaos
(永年カオスからの超短周期惑星)
代替案として,惑星系形成後に何らかの経路で現在の場所まで移動してきた可能性がある.
ここでは,これらの超短周期惑星は高軌道離心率移動で現在の軌道に移動してきたと提案する.これは,超短周期惑星の大質量版と言える,ホットジュピターが経験したであろう動力学のスケールダウンバージョンである.このシナリオでは,まず惑星は他の惑星とのカオス的永年相互作用によって大きな軌道離心率を持つ楕円軌道になり,その後惑星での潮汐散逸によって円軌道化されると考える.
この提案の根拠は以下の通りである.
ケプラーによって発見された惑星系はしばしば,無視できない大きさの軌道離心率と傾斜角を持った複数のスーパーアースを持つ.また惑星はおそらく ~ AU の距離を超えて存在している.
超短周期惑星が存在する惑星系のうち,超短周期惑星以外の他のトランジット惑星を持っているのはごく一部であり,また持っている場合でも軌道は近接していないが,ここではそれらの大部分は周期 10 - 50 日の他の惑星を持っているはずであるという点について議論する.
外側の兄弟惑星は永年カオスを介して,元々 5 -10 日程度の周期にいた最も内側の惑星から角運動量を奪う.後者の軌道離心率が 0.8 よりも大きくなると,中心星に潮汐的に捕獲され,超短周期惑星になる.
このシナリオは,大部分の超短周期惑星は,やや長い周期 (1 - 3 日) を持つ惑星と比べて,大きく離れた位置に別のトランジット惑星を持つという観測結果を自然に説明することが出来る.これは,他の提案されている超短周期惑星形成シナリオでは説明されていない特徴である.
またこのシナリオでは,超短周期惑星に関して以下のような特徴の存在を予測する.
(i) spin-orbit angle と 外側惑星との相対的な傾斜角が 10 - 50°
(ii) いくつかの外側惑星は ~ 1 AU を超える距離に分布する
どちらも,TESS とそのフォローアップ観測で検証可能であると考えられる.
arXiv:1804.05065
Petrovich et al. (2018)
Ultra-short-period planets from secular chaos
(永年カオスからの超短周期惑星)
概要
ケプラーミッションで,太陽類似星を公転する非常に短周期の岩石惑星 (軌道周期 1 日程度以下) が 100 個以上発見されている.これらは ultra-short-period (USP) planets (超短周期惑星) として知られており,このような惑星がその場で形成される可能性は低い.また,原始惑星系円盤がまだ存在している時に,軌道移動によって外側から現在の場所に到達した可能性も低いと考えられる.代替案として,惑星系形成後に何らかの経路で現在の場所まで移動してきた可能性がある.
ここでは,これらの超短周期惑星は高軌道離心率移動で現在の軌道に移動してきたと提案する.これは,超短周期惑星の大質量版と言える,ホットジュピターが経験したであろう動力学のスケールダウンバージョンである.このシナリオでは,まず惑星は他の惑星とのカオス的永年相互作用によって大きな軌道離心率を持つ楕円軌道になり,その後惑星での潮汐散逸によって円軌道化されると考える.
この提案の根拠は以下の通りである.
ケプラーによって発見された惑星系はしばしば,無視できない大きさの軌道離心率と傾斜角を持った複数のスーパーアースを持つ.また惑星はおそらく ~ AU の距離を超えて存在している.
超短周期惑星が存在する惑星系のうち,超短周期惑星以外の他のトランジット惑星を持っているのはごく一部であり,また持っている場合でも軌道は近接していないが,ここではそれらの大部分は周期 10 - 50 日の他の惑星を持っているはずであるという点について議論する.
外側の兄弟惑星は永年カオスを介して,元々 5 -10 日程度の周期にいた最も内側の惑星から角運動量を奪う.後者の軌道離心率が 0.8 よりも大きくなると,中心星に潮汐的に捕獲され,超短周期惑星になる.
このシナリオは,大部分の超短周期惑星は,やや長い周期 (1 - 3 日) を持つ惑星と比べて,大きく離れた位置に別のトランジット惑星を持つという観測結果を自然に説明することが出来る.これは,他の提案されている超短周期惑星形成シナリオでは説明されていない特徴である.
またこのシナリオでは,超短周期惑星に関して以下のような特徴の存在を予測する.
(i) spin-orbit angle と 外側惑星との相対的な傾斜角が 10 - 50°
(ii) いくつかの外側惑星は ~ 1 AU を超える距離に分布する
どちらも,TESS とそのフォローアップ観測で検証可能であると考えられる.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1804.05148
Dressing et al. (2018)
Characterizing K2 Candidate Planetary Systems Orbiting Low-Mass Stars III: A High Mass & Low Envelope Fraction for the Warm Neptune K2-55b
(低質量星を公転する K2 惑星系候補の特徴付け III:ウォームネプチューン K2-55b の大きな質量と低いエンベロープ比率)
この惑星系について,IRTF/SpeX で得られた近赤外スペクトルを用いて恒星を特徴付けし,さらにスピッツァー宇宙望遠鏡の IRAC を用いてトランジット観測を行い,将来のフォローアップトランジット観測に向けた K2 候補天体の天体暦の精度を確認した.
K2-55b は 4.43 地球半径,軌道周期は 2.8492725 日,平衡温度はおよそ 900 K と推定される.
10 m 口径の Keck I 望遠鏡の HIRES を用いて測定した視線速度から,惑星の質量 44.0 地球質量と推定される.従って平均密度は 2.8 g cm-3 なる.
この惑星の内部構造について,岩石惑星がある程度の量の水素・ヘリウムのエンベロープに覆われているとモデル化し,エンベロープの質量は惑星全体の質量の 12% であると推定した.
K2-55b は,他の似たサイズの惑星の大部分よりも高密度である.これは,中心星の金属量が高いことと関連する可能性がある.
K2-55b の質量が大きいにも関わらず,大量の揮発性物質のエンベロープを保持していないことは,巨大ガス惑星形成における既存の理論に対して問題を提起する.考えられる可能性としては,別の場所から軌道移動で現在の場所にやってきたか,惑星形成の後期段階に形成されるか,もしくは非効率的なコア降着によりガスの暴走降着の発生を免れたか,形成後期の巨大衝突によってエンベロープが剥がされたかなどのシナリオがある.
なお中心星の金属量は [Fe/H] = 0.376 であり,ケプラー K2 の観測ターゲット中では最も金属量が多い恒星の一つである.
arXiv:1804.05148
Dressing et al. (2018)
Characterizing K2 Candidate Planetary Systems Orbiting Low-Mass Stars III: A High Mass & Low Envelope Fraction for the Warm Neptune K2-55b
(低質量星を公転する K2 惑星系候補の特徴付け III:ウォームネプチューン K2-55b の大きな質量と低いエンベロープ比率)
概要
ケプラー K2 ミッションで発見された K2-55b は,海王星サイズの惑星である.中心星は K7 矮星で,0.715 太陽半径,0.688 太陽質量,有効温度は 4300 Kである.この惑星系について,IRTF/SpeX で得られた近赤外スペクトルを用いて恒星を特徴付けし,さらにスピッツァー宇宙望遠鏡の IRAC を用いてトランジット観測を行い,将来のフォローアップトランジット観測に向けた K2 候補天体の天体暦の精度を確認した.
K2-55b は 4.43 地球半径,軌道周期は 2.8492725 日,平衡温度はおよそ 900 K と推定される.
10 m 口径の Keck I 望遠鏡の HIRES を用いて測定した視線速度から,惑星の質量 44.0 地球質量と推定される.従って平均密度は 2.8 g cm-3 なる.
この惑星の内部構造について,岩石惑星がある程度の量の水素・ヘリウムのエンベロープに覆われているとモデル化し,エンベロープの質量は惑星全体の質量の 12% であると推定した.
K2-55b は,他の似たサイズの惑星の大部分よりも高密度である.これは,中心星の金属量が高いことと関連する可能性がある.
K2-55b の質量が大きいにも関わらず,大量の揮発性物質のエンベロープを保持していないことは,巨大ガス惑星形成における既存の理論に対して問題を提起する.考えられる可能性としては,別の場所から軌道移動で現在の場所にやってきたか,惑星形成の後期段階に形成されるか,もしくは非効率的なコア降着によりガスの暴走降着の発生を免れたか,形成後期の巨大衝突によってエンベロープが剥がされたかなどのシナリオがある.
なお中心星の金属量は [Fe/H] = 0.376 であり,ケプラー K2 の観測ターゲット中では最も金属量が多い恒星の一つである.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1804.05334
Močnik et al. (2018)
WASP-104b is Darker than Charcoal
(WASP-104b は木炭より暗い)
位相曲線からは ellipsoidal modulation (※注釈:惑星の潮汐力によって恒星が楕円体状に変形することによる光度変化) が高い信頼度で検出され,これは理論的な予測ともよく一致する.一方で,ドップラービーミングと惑星表面での反射の変動は暫定的な検出に留まった.
可視光での WASP-104b の幾何学的アルベドは,95% の信頼度で 0.03 より低いという値が得られた.そのためこの惑星は,知られている中で最も反射率が低い惑星の一つである.
取得した光度曲線は,恒星の自転に伴う変動も示した.恒星の自転周期は,23 日もしくは 46 日程度だと考えられる.
また観測データから,この惑星系のパラメータを更新し,トランジット時刻変動と継続時間変動への厳しい上限値を与えた.また,惑星による黒点掩蔽イベント,WASP-104b 以外の他のトランジット惑星が存在する可能性への上限を与えた.
この恒星はホットジュピター WASP-104b を持っており,軌道周期 1.76 日,円軌道,1.3 木星質量,1.1 木星半径である.他のホットジュピターと異なり,膨張した半径を持たない.
TTV の上限値からは,WASP-104b と 2:1 共鳴の 10% 以内にいる,円軌道を持つ 23 地球質量以上の非トランジット惑星は存在しないことが示唆される.
K2 によるこの天体の観測期間は 80 日程度であり,46 日はその観測期間ベースラインの半分より長いため,周期としては信頼性が低い.もし 23 日周期が恒星の真の自転周期であれば,46 日と 10.5 日のシグナルは,恒星の自転周期の 2 倍と半分のエイリアスだと解釈することが可能である.
Smith et al. (2014) では自転による変動は検出されていなかったが,Smith et al. (2014) による半振幅の上限は 4mmag であったため,これは驚くべきことではない.今回得られた変動の振幅は 400 ppm であり,彼らの検出閾値は K2 データでの検出よりも 1 桁大きいものである.
WASP-104b 以外の他のトランジット惑星の検出もされなかった.0.5 - 30 日周期の,統計的に有意なシグナルは発見されず,WASP-104b 以外の惑星によるトランジット深さの上限値として 110 ppm という値を与えた.
その他には HAT-P-7b があり,可視光での幾何学的アルベドは 0.03 程度以下と推定されている.これは,ケプラーでの二次食の検出に基づく推定値である (Morris et al. 2013).
一般に,ホットジュピターの可視光での幾何学的アルベドは,広い範囲の値を持ちうることが指摘されている (Sheets & Deming 2017).これは,雲の特性を左右している惑星の温度に依存している (Sudarsky et al. 2000).ホットジュピターの典型的な可視光での幾何学的アルベドは 0.1 のオーダーであり (Schwartz & Cowan 2015),これはホットスーパーアース・ホットネプチューンよりも統計的に低い値である (Demory 2014).大気モデルによると,この低いアルベドは,ホットジュピター大気中のアルカリ金属および TiO,VO の存在に起因する可能性があると考えられている.これらの物質は,可視光の波長で大きな吸収を起こす (Demory et al. 2011).
arXiv:1804.05334
Močnik et al. (2018)
WASP-104b is Darker than Charcoal
(WASP-104b は木炭より暗い)
概要
ケプラー K2 ミッションの Campaign 14 得られたデータの解析から,ホットジュピターを持つ恒星 WASP-104 の光度曲線中の位相曲線変動を検出した.位相曲線からは ellipsoidal modulation (※注釈:惑星の潮汐力によって恒星が楕円体状に変形することによる光度変化) が高い信頼度で検出され,これは理論的な予測ともよく一致する.一方で,ドップラービーミングと惑星表面での反射の変動は暫定的な検出に留まった.
可視光での WASP-104b の幾何学的アルベドは,95% の信頼度で 0.03 より低いという値が得られた.そのためこの惑星は,知られている中で最も反射率が低い惑星の一つである.
取得した光度曲線は,恒星の自転に伴う変動も示した.恒星の自転周期は,23 日もしくは 46 日程度だと考えられる.
また観測データから,この惑星系のパラメータを更新し,トランジット時刻変動と継続時間変動への厳しい上限値を与えた.また,惑星による黒点掩蔽イベント,WASP-104b 以外の他のトランジット惑星が存在する可能性への上限を与えた.
WASP-104 系について
WASP-104 は等級が V = 11.1 の G8 主系列星である (Smith et al. 2014).過去の観測では,95% の信頼度で自転による変動は非検出であり,変動の上限は 4 mmag であった.この恒星はホットジュピター WASP-104b を持っており,軌道周期 1.76 日,円軌道,1.3 木星質量,1.1 木星半径である.他のホットジュピターと異なり,膨張した半径を持たない.
主な結果
TTV と TDV の非検出
光度曲線からは,トランジット時刻変動 (transit timing variation, TTV) とトランジット継続時間変動 (transit duration variation, TDV) に関して,統計的に有意な変動が存在する証拠は認められなかった.それぞれの変動の半振幅への上限値として,TTV は 20 秒,TDV は 47 秒を与え,周期の上限値は 80 日未満とした.TTV の上限値からは,WASP-104b と 2:1 共鳴の 10% 以内にいる,円軌道を持つ 23 地球質量以上の非トランジット惑星は存在しないことが示唆される.
恒星の自転の検出
恒星の自転による変動も検出された.46 (+15, -7) 日,23.4 ± 2.7 日の 2 つの周期性を検出し,前者のほうが大きいピークを示した.自転周期はこのどちらかであると考えられる.また,10.5 日周期でも小さいピークが検出された.K2 によるこの天体の観測期間は 80 日程度であり,46 日はその観測期間ベースラインの半分より長いため,周期としては信頼性が低い.もし 23 日周期が恒星の真の自転周期であれば,46 日と 10.5 日のシグナルは,恒星の自転周期の 2 倍と半分のエイリアスだと解釈することが可能である.
Smith et al. (2014) では自転による変動は検出されていなかったが,Smith et al. (2014) による半振幅の上限は 4mmag であったため,これは驚くべきことではない.今回得られた変動の振幅は 400 ppm であり,彼らの検出閾値は K2 データでの検出よりも 1 桁大きいものである.
黒点の掩蔽および他惑星の非検出
また,惑星による黒点の掩蔽は発生していないと結論づけた.恒星の自転による変動が存在することは,恒星表面には黒点が存在する事を示唆している.しかし,惑星が黒点を掩蔽した証拠は検出されなかった.WASP-104b 以外の他のトランジット惑星の検出もされなかった.0.5 - 30 日周期の,統計的に有意なシグナルは発見されず,WASP-104b 以外の惑星によるトランジット深さの上限値として 110 ppm という値を与えた.
結論
WASP-104b と同様に非常に暗い表面を持つ惑星には,TrES-2b が例として挙げられる.この惑星の可視光での幾何学的アルベドは,ケプラーで得られた位相曲線変動が全て惑星表面での反射によるものとした場合,0.025 ± 0.007 となる (Kipping & Spiegel 2011).また惑星からの熱放射の影響を加味した場合は,幾何学的アルベドは 1% よりも低くなりうることも報告されている.その他には HAT-P-7b があり,可視光での幾何学的アルベドは 0.03 程度以下と推定されている.これは,ケプラーでの二次食の検出に基づく推定値である (Morris et al. 2013).
一般に,ホットジュピターの可視光での幾何学的アルベドは,広い範囲の値を持ちうることが指摘されている (Sheets & Deming 2017).これは,雲の特性を左右している惑星の温度に依存している (Sudarsky et al. 2000).ホットジュピターの典型的な可視光での幾何学的アルベドは 0.1 のオーダーであり (Schwartz & Cowan 2015),これはホットスーパーアース・ホットネプチューンよりも統計的に低い値である (Demory 2014).大気モデルによると,この低いアルベドは,ホットジュピター大気中のアルカリ金属および TiO,VO の存在に起因する可能性があると考えられている.これらの物質は,可視光の波長で大きな吸収を起こす (Demory et al. 2011).
天文・宇宙物理関連メモ vol.488 Scott Gaudi et al. (2017) 表面温度が 4600 K のホットジュピター KELT-9b の発見