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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1809.08147
Clarke et al. (2018)
High resolution millimetre imaging of the CI Tau protoplanetary disc - a massive ensemble of protoplanets from 0.1 - 100 au
(CI Tau 原始惑星系円盤の高解像度ミリメートル撮像:0.1 - 100 au の重い原始惑星の集合)
この系は広がったミリメートル波での放射を持ち,13, 39, 100 au の半径にギャップが存在している.これらのギャップが,円盤中の重い惑星によって生成された可能性について議論する.従って既に発見報告があるホットジュピター候補を含めると,この系はわずか 200 万歳にして 4 つの巨大ガス惑星を持っている可能性がある.
新しく検出された惑星のうち 2 つは,有名な HL Tau (おうし座 HL 星) の原始惑星系円盤内に存在が示唆されている惑星と類似している.CI Tau の場合,追加の観測データにより系の特性のより完全な解析が可能になった.
ダストとガスの力学的モデリングは,得られている全ての観測的制約を満たし,この年齢で検出された中では最も重い系外惑星の集まりが存在することを示している.
4 つの惑星は軌道半径にして 1000 倍の範囲に広がっている.今回の結果は,より年老いた恒星では観測されている,ホットジュピターとより大きな軌道にあるガス惑星との関連が,円盤の初期進化段階で明確に存在していることを示している.
arXiv:1809.08147
Clarke et al. (2018)
High resolution millimetre imaging of the CI Tau protoplanetary disc - a massive ensemble of protoplanets from 0.1 - 100 au
(CI Tau 原始惑星系円盤の高解像度ミリメートル撮像:0.1 - 100 au の重い原始惑星の集合)
概要
若い恒星 CI Tau (おうし座 CI 星) 周囲の円盤の高解像度ミリ波連続波撮像観測を行った.この系は,原始惑星系円盤の内部にホットジュピター候補天体があることが報告されている初めての系である.この系は広がったミリメートル波での放射を持ち,13, 39, 100 au の半径にギャップが存在している.これらのギャップが,円盤中の重い惑星によって生成された可能性について議論する.従って既に発見報告があるホットジュピター候補を含めると,この系はわずか 200 万歳にして 4 つの巨大ガス惑星を持っている可能性がある.
新しく検出された惑星のうち 2 つは,有名な HL Tau (おうし座 HL 星) の原始惑星系円盤内に存在が示唆されている惑星と類似している.CI Tau の場合,追加の観測データにより系の特性のより完全な解析が可能になった.
ダストとガスの力学的モデリングは,得られている全ての観測的制約を満たし,この年齢で検出された中では最も重い系外惑星の集まりが存在することを示している.
4 つの惑星は軌道半径にして 1000 倍の範囲に広がっている.今回の結果は,より年老いた恒星では観測されている,ホットジュピターとより大きな軌道にあるガス惑星との関連が,円盤の初期進化段階で明確に存在していることを示している.
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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1809.07374
Manara et al. (2018)
Why do protoplanetary disks appear not massive enough to form the known exoplanet population?
(なぜ原始惑星系円盤は既知の系外惑星を形成するために十分な重さがないように見えるのか?)
系外惑星検出サーベイと原始惑星系円盤サーベイは,これまでに新しい知見を提供してきた.ここでは,存在が確定した系外惑星の質量の情報を集め,恒星質量に対する惑星の存在度を,100 - 300 万歳程度の年老いた星形成領域において質量が測定されている原始惑星系円盤の存在度と比較した.
原始惑星系円盤の質量を,Gaia DR2 で得られた年周視差から導出された新しい距離の推定値を用いて再計算した.
その結果,系外惑星系における惑星の合計質量は,測定されている円盤質量よりもずっと小さいという予測が存在する一方で,実際には系外惑星系の質量は最も重い部類の円盤質量と同程度か,あるいはそれよりも重い事が判明した.
これと同じ結果は,測定された惑星の質量を重元素存在度に変換し (巨大惑星の場合はコア質量,スーパーアース質量の場合は全質量),これを円盤ダスト質量と比較することによっても見出される.
原始惑星系円盤中のダスト質量が大きく過小評価されていない限り.今回の結果は大きな問題である.円盤内での極めて効率的なダスト粒子のリサイクリングでは,この問題を解決できない.
今回の発見は,惑星のコアは 10 - 100 万年以内に非常に急速に形成され,同じタイムスケールで円盤から大量のガスが取り除かれたか,あるいは円盤は周囲から新鮮な惑星形成物質を継続的に供給されているかであることを示唆している.
これらの仮説は,より若い天体の円盤質量を測定し,円盤物質がその周辺から補充されているか,その場合どの様に補充されているかをよりよく理解することで検証できる.
同様に,200 万歳より若い星団中の若い恒星は,60 - 80 % 以上が原始惑星系円盤を持っていることが分かっている (Fedele et al. 2010など),
これらの惑星がいつ形成されるかを決定するのは,原理的には単純である.系外惑星系の質量の中央値を,年齢に伴う原始惑星系円盤の質量の減少と比較し,その交点を決定すれば良い.
しかし現実的には,原始惑星系円盤の質量測定は大きなサンプル数が存在しないことと,系外惑星検出サーベイの不完全さにより,惑星形成タイムスケールに制約を与えることは難しい.さらに,原始惑星系円盤からのミリメートル放射は小さいダスト (~ cm 未満) の質量のみをトレースしている という事実と,円盤の全質量の推定は未だに不明確であることから (Bergin & Williams 2018),この比較をより困難なものにしている.
特に Greaves & Rice (2010),Williams (2012),Najita & Kenyon (2014) では,質量が測定されている円盤のごく一部だけが,観測されるガス惑星の大部分の質量を説明するのに十分な質量を持っているということが示されている.彼らは,惑星形成はこれらの円盤が観測された段階 (100 - 300 万歳程度) では未だ進行中であるということを提案している.
まず,抽出した各惑星系における個々の惑星質量を足し上げる.
系外惑星サーベイは依然として不完全であり,また惑星質量の測定に対して \(1/\sin i\) のファクターが存在する.そのため,この足し上げた質量は各惑星系での総質量の下限値に相当する.
ここで議論している系外惑星系の質量は,今後の検出で変更される可能性がある.
一方で系外惑星系の質量は,既知の惑星系内で新たに複数惑星が検出された場合は増加する.しかしこれの影響は,小さいかあるいは無視できる.これは,既に観測されている系で過去に検出されていなかった惑星は,同じ系内で既に発見されている惑星に比べて低質量だからである.
ミリメートル連続波の観測から,ダスト不透明度と温度に単一の値を仮定して,円盤のダスト質量を導出した.従ってこのような測定は,最大で ~ cm サイズの粒子のみに感度があることになる.
円盤ガスの輝線から示唆される円盤の総質量の推定には,依然として大きな不定性がある.そのため,ガス輝線のデータを用いる代わりに,円盤の総質量はダスト質量から推定を行った,ガスとダストの質量比を 100 と固定し,ダスト質量から円盤の総質量の推定を行っている.
また円盤質量と恒星の光度は,Gaia DR2 での視差から新たに算出された距離を用いてスケールし直している.
理論的な観点からは,微惑星と惑星形成を説明する全てのモデルは,非常に非効率的なプロセスに基づいている.例えばペブル降着のようなシナリオでは (Johansen et al. 2007など),ペブル流速の極小さい割合のみが,成長している惑星に捕獲される (Guillot et al. 2014参照).
もし,粒子サイズの分布を仮定して計算された円盤の総ダスト質量が,小さいダスト粒子とペブルの両方の質量を表していると考える場合,円盤ダスト質量は惑星系の重元素の最終質量よりも少なくとも一桁は大きい必要がある.
ここで示したように,系外惑星系に含まれている重元素は,中心星が太陽質量の恒星の場合は 2 - 3 木星質量程度,中心星が褐色矮星の場合は 0.02 木星質量 (6.4 地球質量) となる.
太陽系の場合,地球型惑星の質量,巨大惑星のコア,カイパーベルトとオールトの雲を足し合わせた,合計の重元素量は,130 地球質量,あるいは 0.4 木星質量と推定される (Guillot et al. 2014など).対照的に,100 - 300 万歳の原始惑星系円盤のダスト質量として測定された中で最も大きいものは,太陽質量の恒星周りでは 0.5 - 1 木星質量,褐色矮星まわりでは 0.01 木星質量 (3 地球質量) 程度である.
ここで示した大きな円盤質量は,観測された円盤のうちのごく一部であり,円盤の大部分はそれよりも一桁小さい質量を持っている.この比較から,惑星降着過程は既存の形成モデルが示唆するよりもずっと効率的であるか,あるいは他の形成シナリオが必要であるということが示される.
しかし,円盤サーベイは 100 - 300 万歳でまだ重いものだけをターゲットにしており,そして,例えば近赤外線で光学的に薄い,軽い円盤 (class III の天体) は含まれていないというバイアスがかかっている.そのためこれら 2 つのバイアスは相殺する.
円盤中のダスト質量のいくらかは,光学的に厚い円盤内側にとらわれることが示されている (Tripathi et al. 2017など).また円盤の不透明度と温度の値については議論が残されている.
また,ダスト成分の大部分が cm サイズかそれより大きなサイズに成長しているというのも,ありうる可能性である.大きなサイズのダスト成分は,ミリメートル波の観測では検出できない.
しかし,円盤質量が一桁以上も過小評価されてはいないと信じるに足るいくつかの理由も存在する.
例えば,もし円盤質量が非常に大きいと考えた場合,デブリ円盤のフェーズに遷移している非常に年老いた円盤を除いて,ガス・ダスト比が 100 よりずっと小さい事を意味する弱い CO 輝線の存在を説明することをさらに困難にする.
さらに,測定されている円盤質量・質量降着率は,円盤の粘性進化理論から予測される値と整合的であるが,円盤ダスト質量が大幅に過小評価されていると考えた場合はこの整合性と矛盾を来す.
円盤内での物質のリサイクルが起きるというシナリオでは,内側へ移動したダスト物質がその後円盤の最も内側領域 (1 au 以内) に起源を持つ円盤風に運ばれ,外部円盤 (10 au 以遠) に再供給され,その後ダストは再び内側へ移動できる,と考えられている.
このシナリオは,観測されているカルシウム・アルミニウム豊富な内包物 (CAI) の存在を説明するために使われている.
しかしリサイクル効率が最も高い最良のケースのシナリオでも,惑星降着に利用可能な総質量は円盤のダスト質量が上限であり,観測されている惑星の重元素質量の合計よりも典型的に小さい.さらに,すべての円盤内の物質が再利用されるとは考えづらい.
このシナリオでは,惑星を形成する物質の大部分は円盤内で既に微惑星の形で存在していると考える.
ペブル降着では,微惑星が非常に初期の段階に形成されるというシナリオが提案されている.これは円盤が重く,重力的に不安定だった場合に起きうる (Booth & Clarke 2016).
しかし惑星コアの形成は非常に非効率的で,木星のコアを月質量の半分から 20 地球質量まで成長させるのには,350 地球質量程度のべブルが必要である (Morbidelli et al. 2016).従って円盤は 100 万歳以降の年齢で観測されている質量よりも,初期に 10 - 100 倍重い必要がある.このことも,円盤の大部分は初期に重力的に不安定である必要があることを示唆している.
このモデルの問題点は,もし初期の円盤質量が 100 万歳より年老いた円盤で観測されている質量よりも 10 - 100 倍重い場合,観測されている Class 0 アウトフローの存在と整合的であるためには,極めて効率的な円盤からのガス除去機構が存在する必要がある.
このシナリオは,木星の原始コアが非常に初期の段階で形成されているという最近の結果と一致する.また HL Tau の円盤で観測されている,惑星によって刻まれているかもしれないリング構造とも整合的である.
このシナリオでは,円盤は周囲の星間物質から継続的に,あるいは変動性を持って供給していると考える.
供給されているガスと小さいダスト粒子は中心星へ降着し続ける.円盤内で惑星形成に使われなかった物質はそのまま中心星に降着するか,あるいは円盤風に乗って除去され,また部分的に再利用される可能性がある.
ただし,どの程度の恒星-円盤系が実際に周囲から物質を降着し続けているか,またこのプロセスが継続的か一時的なものかは不明である.
arXiv:1809.07374
Manara et al. (2018)
Why do protoplanetary disks appear not massive enough to form the known exoplanet population?
(なぜ原始惑星系円盤は既知の系外惑星を形成するために十分な重さがないように見えるのか?)
概要
惑星が原始惑星系円盤内で,いつどのように形成されるかは,未だに議論の対象である.系外惑星検出サーベイと原始惑星系円盤サーベイは,これまでに新しい知見を提供してきた.ここでは,存在が確定した系外惑星の質量の情報を集め,恒星質量に対する惑星の存在度を,100 - 300 万歳程度の年老いた星形成領域において質量が測定されている原始惑星系円盤の存在度と比較した.
原始惑星系円盤の質量を,Gaia DR2 で得られた年周視差から導出された新しい距離の推定値を用いて再計算した.
その結果,系外惑星系における惑星の合計質量は,測定されている円盤質量よりもずっと小さいという予測が存在する一方で,実際には系外惑星系の質量は最も重い部類の円盤質量と同程度か,あるいはそれよりも重い事が判明した.
これと同じ結果は,測定された惑星の質量を重元素存在度に変換し (巨大惑星の場合はコア質量,スーパーアース質量の場合は全質量),これを円盤ダスト質量と比較することによっても見出される.
原始惑星系円盤中のダスト質量が大きく過小評価されていない限り.今回の結果は大きな問題である.円盤内での極めて効率的なダスト粒子のリサイクリングでは,この問題を解決できない.
今回の発見は,惑星のコアは 10 - 100 万年以内に非常に急速に形成され,同じタイムスケールで円盤から大量のガスが取り除かれたか,あるいは円盤は周囲から新鮮な惑星形成物質を継続的に供給されているかであることを示唆している.
これらの仮説は,より若い天体の円盤質量を測定し,円盤物質がその周辺から補充されているか,その場合どの様に補充されているかをよりよく理解することで検証できる.
背景
円盤観測と惑星形成時期
これまでの観測から,少なくとも 30% の恒星が惑星を持っている事が示されており (Zhu et al. 2018など),現在の検出限界を考えると,全ての恒星が惑星系を持っていると考えることは妥当である.同様に,200 万歳より若い星団中の若い恒星は,60 - 80 % 以上が原始惑星系円盤を持っていることが分かっている (Fedele et al. 2010など),
これらの惑星がいつ形成されるかを決定するのは,原理的には単純である.系外惑星系の質量の中央値を,年齢に伴う原始惑星系円盤の質量の減少と比較し,その交点を決定すれば良い.
しかし現実的には,原始惑星系円盤の質量測定は大きなサンプル数が存在しないことと,系外惑星検出サーベイの不完全さにより,惑星形成タイムスケールに制約を与えることは難しい.さらに,原始惑星系円盤からのミリメートル放射は小さいダスト (~ cm 未満) の質量のみをトレースしている という事実と,円盤の全質量の推定は未だに不明確であることから (Bergin & Williams 2018),この比較をより困難なものにしている.
円盤質量が小さい問題
ALMA 以前の原始惑星系円盤の質量のサーベイと,視線速度およびトランジットでの惑星探査サーベイの初期結果に基づくと,原始惑星系円盤の質量は検出されている巨大惑星の質量より一般に小さいことが分かっている.特に Greaves & Rice (2010),Williams (2012),Najita & Kenyon (2014) では,質量が測定されている円盤のごく一部だけが,観測されるガス惑星の大部分の質量を説明するのに十分な質量を持っているということが示されている.彼らは,惑星形成はこれらの円盤が観測された段階 (100 - 300 万歳程度) では未だ進行中であるということを提案している.
サンプルとデータ選定
系外惑星データ
系外惑星のデータは,exoplanet.eu から取得した.2018 年 7 月 10 日時点でのデータを使用している.惑星質量と恒星質量の依存性を解析するため,両者のデータが利用可能な惑星のみを抽出している.まず,抽出した各惑星系における個々の惑星質量を足し上げる.
系外惑星サーベイは依然として不完全であり,また惑星質量の測定に対して \(1/\sin i\) のファクターが存在する.そのため,この足し上げた質量は各惑星系での総質量の下限値に相当する.
ここで議論している系外惑星系の質量は,今後の検出で変更される可能性がある.
一方で系外惑星系の質量は,既知の惑星系内で新たに複数惑星が検出された場合は増加する.しかしこれの影響は,小さいかあるいは無視できる.これは,既に観測されている系で過去に検出されていなかった惑星は,同じ系内で既に発見されている惑星に比べて低質量だからである.
円盤質量データ
原始惑星系円盤の質量は ALMA の観測データを元にしている.100 - 300 万歳の年老いた Lupus and Chamaeleon I 星形成領域のデータを用いた.これは ALMA で集中的に研究されている最も若い星形成領域である (ANsdell et al. 2016,Pascucci et al. 2016).ミリメートル連続波の観測から,ダスト不透明度と温度に単一の値を仮定して,円盤のダスト質量を導出した.従ってこのような測定は,最大で ~ cm サイズの粒子のみに感度があることになる.
円盤ガスの輝線から示唆される円盤の総質量の推定には,依然として大きな不定性がある.そのため,ガス輝線のデータを用いる代わりに,円盤の総質量はダスト質量から推定を行った,ガスとダストの質量比を 100 と固定し,ダスト質量から円盤の総質量の推定を行っている.
また円盤質量と恒星の光度は,Gaia DR2 での視差から新たに算出された距離を用いてスケールし直している.
原始惑星系円盤が軽すぎるという問題
非効率な惑星形成モデルにおける問題点
今回得られた結果は,原始惑星系円盤は 100 - 300 万歳の段階で,惑星を形成するのに十分な質量を持っていない可能性があるという,深刻な問題を提示している.理論的な観点からは,微惑星と惑星形成を説明する全てのモデルは,非常に非効率的なプロセスに基づいている.例えばペブル降着のようなシナリオでは (Johansen et al. 2007など),ペブル流速の極小さい割合のみが,成長している惑星に捕獲される (Guillot et al. 2014参照).
もし,粒子サイズの分布を仮定して計算された円盤の総ダスト質量が,小さいダスト粒子とペブルの両方の質量を表していると考える場合,円盤ダスト質量は惑星系の重元素の最終質量よりも少なくとも一桁は大きい必要がある.
ここで示したように,系外惑星系に含まれている重元素は,中心星が太陽質量の恒星の場合は 2 - 3 木星質量程度,中心星が褐色矮星の場合は 0.02 木星質量 (6.4 地球質量) となる.
太陽系の場合,地球型惑星の質量,巨大惑星のコア,カイパーベルトとオールトの雲を足し合わせた,合計の重元素量は,130 地球質量,あるいは 0.4 木星質量と推定される (Guillot et al. 2014など).対照的に,100 - 300 万歳の原始惑星系円盤のダスト質量として測定された中で最も大きいものは,太陽質量の恒星周りでは 0.5 - 1 木星質量,褐色矮星まわりでは 0.01 木星質量 (3 地球質量) 程度である.
ここで示した大きな円盤質量は,観測された円盤のうちのごく一部であり,円盤の大部分はそれよりも一桁小さい質量を持っている.この比較から,惑星降着過程は既存の形成モデルが示唆するよりもずっと効率的であるか,あるいは他の形成シナリオが必要であるということが示される.
質量の不一致の原因に関する考察
観測バイアスの可能性
この質量の不一致を説明する素朴な可能性としては,現在の系外惑星のサーベイは重い惑星を発見しやすいというバイアスがかかっており,実際の系外惑星の集団の全体は我々が観測しているものよりもずっと低質量である,というものである.しかし,円盤サーベイは 100 - 300 万歳でまだ重いものだけをターゲットにしており,そして,例えば近赤外線で光学的に薄い,軽い円盤 (class III の天体) は含まれていないというバイアスがかかっている.そのためこれら 2 つのバイアスは相殺する.
ダスト質量の過小評価の可能性
その他の可能性としては,円盤のダスト質量が大きく過小評価されているというものが考えられる.円盤中のダスト質量のいくらかは,光学的に厚い円盤内側にとらわれることが示されている (Tripathi et al. 2017など).また円盤の不透明度と温度の値については議論が残されている.
また,ダスト成分の大部分が cm サイズかそれより大きなサイズに成長しているというのも,ありうる可能性である.大きなサイズのダスト成分は,ミリメートル波の観測では検出できない.
しかし,円盤質量が一桁以上も過小評価されてはいないと信じるに足るいくつかの理由も存在する.
例えば,もし円盤質量が非常に大きいと考えた場合,デブリ円盤のフェーズに遷移している非常に年老いた円盤を除いて,ガス・ダスト比が 100 よりずっと小さい事を意味する弱い CO 輝線の存在を説明することをさらに困難にする.
さらに,測定されている円盤質量・質量降着率は,円盤の粘性進化理論から予測される値と整合的であるが,円盤ダスト質量が大幅に過小評価されていると考えた場合はこの整合性と矛盾を来す.
円盤内でのダストのリサイクル
円盤内のダスト物質の効率的なリサイクルはこの矛盾を説明するのに十分ではないと考えられる.円盤内での物質のリサイクルが起きるというシナリオでは,内側へ移動したダスト物質がその後円盤の最も内側領域 (1 au 以内) に起源を持つ円盤風に運ばれ,外部円盤 (10 au 以遠) に再供給され,その後ダストは再び内側へ移動できる,と考えられている.
このシナリオは,観測されているカルシウム・アルミニウム豊富な内包物 (CAI) の存在を説明するために使われている.
しかしリサイクル効率が最も高い最良のケースのシナリオでも,惑星降着に利用可能な総質量は円盤のダスト質量が上限であり,観測されている惑星の重元素質量の合計よりも典型的に小さい.さらに,すべての円盤内の物質が再利用されるとは考えづらい.
質量の不一致を解決する仮説の提案
矛盾を説明しうる 2 つのシナリオとして,ここでは惑星コアの初期形成と,コンベアベルトとしての円盤というシナリオを提案する.惑星コアの早期形成
1 つ目は,惑星のコアは原始惑星系円盤進化の非常に初期段階に形成されたというものである.あるいは,円盤がまだ形成中の埋め込まれた時期に形成されたという可能性もある.このシナリオでは,惑星を形成する物質の大部分は円盤内で既に微惑星の形で存在していると考える.
ペブル降着では,微惑星が非常に初期の段階に形成されるというシナリオが提案されている.これは円盤が重く,重力的に不安定だった場合に起きうる (Booth & Clarke 2016).
しかし惑星コアの形成は非常に非効率的で,木星のコアを月質量の半分から 20 地球質量まで成長させるのには,350 地球質量程度のべブルが必要である (Morbidelli et al. 2016).従って円盤は 100 万歳以降の年齢で観測されている質量よりも,初期に 10 - 100 倍重い必要がある.このことも,円盤の大部分は初期に重力的に不安定である必要があることを示唆している.
このモデルの問題点は,もし初期の円盤質量が 100 万歳より年老いた円盤で観測されている質量よりも 10 - 100 倍重い場合,観測されている Class 0 アウトフローの存在と整合的であるためには,極めて効率的な円盤からのガス除去機構が存在する必要がある.
このシナリオは,木星の原始コアが非常に初期の段階で形成されているという最近の結果と一致する.また HL Tau の円盤で観測されている,惑星によって刻まれているかもしれないリング構造とも整合的である.
コンベアベルトとしての円盤
2 つ目は,原始惑星系円盤はコンベアベルトと同じ様に,物質を周囲から中心星へ向かって輸送している存在である,というシナリオである,このシナリオでは,円盤は周囲の星間物質から継続的に,あるいは変動性を持って供給していると考える.
供給されているガスと小さいダスト粒子は中心星へ降着し続ける.円盤内で惑星形成に使われなかった物質はそのまま中心星に降着するか,あるいは円盤風に乗って除去され,また部分的に再利用される可能性がある.
ただし,どの程度の恒星-円盤系が実際に周囲から物質を降着し続けているか,またこのプロセスが継続的か一時的なものかは不明である.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1809.07709
Anderson et al. (2018)
A low-density hot Jupiter in a near-aligned, 4.5-day orbit around a V = 10.8, F5V star
(V = 10.8,F5V 星まわりのほぼ揃った,4.5 日軌道にある低密度ホットジュピター)
中心星は 10.8 等級の F5V 星である.この惑星は NGTS チームによっても探査され,NGTS-2b と命名されている Raynard et al. (2018).ここでは WASP-179b と呼称する.
WASP-South と TRAPPSIT-South での測光観測からトランジットが検出された,また CORALE と HARPS でスペクトルを取得した.CORALE では惑星の軌道周期全ての期間に渡って取得し,HARPS ではトランジットの間のスペクトルの取得を行った.
観測と解析の結果,惑星の軌道は恒星の自転とほぼ揃っていることが判明した.ロシター・マクローリン効果の検出から,天球に射影した恒星の自転軸傾斜角は -19 ± 6° と推定される.またスペクトル線トモグラフィーを同じスペクトルから分析した結果,同じく角度を -11 ± 5° と推定した.
惑星は 0.67 木星質量,1.54 木星半径で低密度である.
中心星がやや明るいため,透過光分光観測の良い対象である.
中心星は 1,30 太陽質量と低質量で,NGTS チームが報告している 1.64 太陽質量より小さいが,その違いは 1.5σ である.
有効温度:6450 K
質量:1.302 太陽質量
半径:1.62 太陽半径
金属量:[Fe/H] = -0.09
距離:350 pc
年齢:27 億歳
質量:0.670 木星質量
半径:1.536 木星半径
密度:0.183 木星密度
軌道長半径:0.0584 AU
平衡温度:1638 K
arXiv:1809.07709
Anderson et al. (2018)
A low-density hot Jupiter in a near-aligned, 4.5-day orbit around a V = 10.8, F5V star
(V = 10.8,F5V 星まわりのほぼ揃った,4.5 日軌道にある低密度ホットジュピター)
概要
TYC 7282-1298-1 の周りにホットジュピターを独立して発見し,特徴付けを行った.中心星は 10.8 等級の F5V 星である.この惑星は NGTS チームによっても探査され,NGTS-2b と命名されている Raynard et al. (2018).ここでは WASP-179b と呼称する.
WASP-South と TRAPPSIT-South での測光観測からトランジットが検出された,また CORALE と HARPS でスペクトルを取得した.CORALE では惑星の軌道周期全ての期間に渡って取得し,HARPS ではトランジットの間のスペクトルの取得を行った.
観測と解析の結果,惑星の軌道は恒星の自転とほぼ揃っていることが判明した.ロシター・マクローリン効果の検出から,天球に射影した恒星の自転軸傾斜角は -19 ± 6° と推定される.またスペクトル線トモグラフィーを同じスペクトルから分析した結果,同じく角度を -11 ± 5° と推定した.
惑星は 0.67 木星質量,1.54 木星半径で低密度である.
中心星がやや明るいため,透過光分光観測の良い対象である.
中心星は 1,30 太陽質量と低質量で,NGTS チームが報告している 1.64 太陽質量より小さいが,その違いは 1.5σ である.
パラメータ
WASP-179
スペクトル型:F5V有効温度:6450 K
質量:1.302 太陽質量
半径:1.62 太陽半径
金属量:[Fe/H] = -0.09
距離:350 pc
年齢:27 億歳
WASP-179b
軌道周期:4.5111204 日質量:0.670 木星質量
半径:1.536 木星半径
密度:0.183 木星密度
軌道長半径:0.0584 AU
平衡温度:1638 K
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1809.06941
Meshkat et al. (2018)
A deep search for planets in the inner 15 au around Vega
(ベガの 15 au 以内での深い惑星探査)
ベガは若く明るい太陽系近傍の恒星である.ベガの周囲にはフェイスオン (円盤面が観測者の方を向いている) の 2 つの帯を持つデブリ円盤が検出されている.この円盤の構造は,不可視の惑星によって形作られている可能性が指摘されているため,高コントラスト撮像で惑星を探査するのに理想的な対象である.
Palomar Observatory (パロマー天文台) のコロナグラフ積分場分光 Project 1640 (P1640) を用いて,J バンド と H バンドで観測を行った.
2016 年の 2 夜でデータを取得したが,この時はシーイングの条件が悪く,2017 年により好ましいコンディションで 2 夜追加で観測を行った.合計で,積分時間が 5.5 時間,中程度から良好なシーイングコンディション (1”.5 以下) でベガの観測を行った.
結果として,今回の観測ではこの系内にはいかなる低質量天体も検出されなかった.
今回のデータは,ベガの周りにおける非常に小さい軌道距離 (2-15 au) での最も感度の高いコントラスト限界を提供する,また,ベガ系を形作っている可能性のある伴星天体に対する新しい制約を課すことができた.
ベガは比較的若い恒星であり (4 億 4500 万歳,Yoon et al. 2010),2.5 太陽質量の A0V 星で,距離は 7.68 pc (van Leeuwen 2007) と太陽系に近い.
また 0 等星の明るい星であり,補償光学を用いた補正に適している.そのため低質量の惑星を検出するのに必要なコントラスト限界を満たしている.
さらに,JCMT による 450 µm と 850 µm での撮像観測では,滑らかで軸対称な構造の,73, 135 au の大きさの円盤がそれぞれ検出された (Holland et al. 2017).これらのデータからは,低温なデブリ帯の中心は恒星の位置から 2” ずれていることも判明した.このずれの大きさは,過去に検出されていた干渉系データによるピークのずれである 8-14” よりも小さい (Koener et al. 2001,WIlner et al. 2002),
ハーシェル宇宙望遠鏡の 70 - 500 µm でのデータは,恒星からのピークのずれが無い,滑らかな円盤構造と整合的な結果が得られている (Sibthorpe et al. 2010),
ハーシェルとスピッツァーのデータからは,水の凍結線近くの温かいダストからの放射が発見されている,この放射の位置は ~ 14 au であり,外側の ~ 80 au にある円盤とは空間的に離れている (Su et al. 2013).
内側の温かいデブリと外側の冷たいデブリの間に大きな間隔が空いていることから,また高コントラスト撮像観測からの制約から,Su et al. (2013) はベガのデブリ構造とフォーマルハウト周囲の構造は,凍結線以遠に複数の惑星が存在することを示していると示唆した.
Janson et al. (2015) はスピッツァー宇宙望遠鏡と MMT 観測の結果 (Heinze et al. 2018) を組み合わせ,ベガ系に存在する可能性のある惑星質量に制約を与えた.
スピッツァー宇宙望遠鏡のデータから,ベガから 100 - 200 au の範囲に存在する惑星の質量上限値として ~ 1-3 木星質量という値を与えた.また MMT データからは,20 - 80 au の範囲に ~ 5 - 20 木星質量という上限値を与えた.
また,Macintosh et al. (2003) では Keck/NIRC2 で取得された K バンドデータから,50 au 以遠で ~ 5 木星質量という上限値を与えた.
観測結果から,内側の温かいデブリ円盤を形成している天体として,~ 12 au の位置に 20 木星質量以上の天体が存在する可能性は否定された (H バンドの観測を元にした場合).J バンドでの観測を元にした場合,同じ位置に 30 木星質量以上の天体が存在する可能性は否定される.
Raymond & Bonsor (2014) では力学的シミュレーションを行い,ベガ系に存在する可能性のある惑星質量への制約を与えている.そこでは,5 - 10 au の範囲にある低質量の惑星 (木星質量以下) によってデブリ円盤の形状を再現可能であることが示されている.
今回の観測では,そのシミュレーションに対して意味のある制約を与えるほどの感度はない.
arXiv:1809.06941
Meshkat et al. (2018)
A deep search for planets in the inner 15 au around Vega
(ベガの 15 au 以内での深い惑星探査)
概要
高コントラスト撮像観測による,Vega (ベガ) のまわりの惑星探査の結果について報告する.ベガは若く明るい太陽系近傍の恒星である.ベガの周囲にはフェイスオン (円盤面が観測者の方を向いている) の 2 つの帯を持つデブリ円盤が検出されている.この円盤の構造は,不可視の惑星によって形作られている可能性が指摘されているため,高コントラスト撮像で惑星を探査するのに理想的な対象である.
Palomar Observatory (パロマー天文台) のコロナグラフ積分場分光 Project 1640 (P1640) を用いて,J バンド と H バンドで観測を行った.
2016 年の 2 夜でデータを取得したが,この時はシーイングの条件が悪く,2017 年により好ましいコンディションで 2 夜追加で観測を行った.合計で,積分時間が 5.5 時間,中程度から良好なシーイングコンディション (1”.5 以下) でベガの観測を行った.
結果として,今回の観測ではこの系内にはいかなる低質量天体も検出されなかった.
今回のデータは,ベガの周りにおける非常に小さい軌道距離 (2-15 au) での最も感度の高いコントラスト限界を提供する,また,ベガ系を形作っている可能性のある伴星天体に対する新しい制約を課すことができた.
ベガについて
ベガの特徴
ベガは北半球における最もよく研究された天体の一つで,高コントラスト観測の良いターゲットである.ベガは比較的若い恒星であり (4 億 4500 万歳,Yoon et al. 2010),2.5 太陽質量の A0V 星で,距離は 7.68 pc (van Leeuwen 2007) と太陽系に近い.
また 0 等星の明るい星であり,補償光学を用いた補正に適している.そのため低質量の惑星を検出するのに必要なコントラスト限界を満たしている.
ベガ周りの円盤の観測
ベガは,小さい粒子からなる円盤ハロー状の大きなフェイスオンの円盤を持っている.この円盤はスピッツァー宇宙望遠鏡によって最初に発見された (Su et al. 2005).さらに,JCMT による 450 µm と 850 µm での撮像観測では,滑らかで軸対称な構造の,73, 135 au の大きさの円盤がそれぞれ検出された (Holland et al. 2017).これらのデータからは,低温なデブリ帯の中心は恒星の位置から 2” ずれていることも判明した.このずれの大きさは,過去に検出されていた干渉系データによるピークのずれである 8-14” よりも小さい (Koener et al. 2001,WIlner et al. 2002),
ハーシェル宇宙望遠鏡の 70 - 500 µm でのデータは,恒星からのピークのずれが無い,滑らかな円盤構造と整合的な結果が得られている (Sibthorpe et al. 2010),
ハーシェルとスピッツァーのデータからは,水の凍結線近くの温かいダストからの放射が発見されている,この放射の位置は ~ 14 au であり,外側の ~ 80 au にある円盤とは空間的に離れている (Su et al. 2013).
内側の温かいデブリと外側の冷たいデブリの間に大きな間隔が空いていることから,また高コントラスト撮像観測からの制約から,Su et al. (2013) はベガのデブリ構造とフォーマルハウト周囲の構造は,凍結線以遠に複数の惑星が存在することを示していると示唆した.
ベガ周囲の惑星探査
円盤がフェイスオンの向きであるため,円盤と同一平面にある惑星の撮像観測に適している.対照的に,フェイスオンで高速自転星の場合は,視線速度で惑星を探査するのは非常に困難になる.Janson et al. (2015) はスピッツァー宇宙望遠鏡と MMT 観測の結果 (Heinze et al. 2018) を組み合わせ,ベガ系に存在する可能性のある惑星質量に制約を与えた.
スピッツァー宇宙望遠鏡のデータから,ベガから 100 - 200 au の範囲に存在する惑星の質量上限値として ~ 1-3 木星質量という値を与えた.また MMT データからは,20 - 80 au の範囲に ~ 5 - 20 木星質量という上限値を与えた.
また,Macintosh et al. (2003) では Keck/NIRC2 で取得された K バンドデータから,50 au 以遠で ~ 5 木星質量という上限値を与えた.
観測結果
今回取得したデータ中には,いかなる点源も検出されなかった.観測結果から,内側の温かいデブリ円盤を形成している天体として,~ 12 au の位置に 20 木星質量以上の天体が存在する可能性は否定された (H バンドの観測を元にした場合).J バンドでの観測を元にした場合,同じ位置に 30 木星質量以上の天体が存在する可能性は否定される.
Raymond & Bonsor (2014) では力学的シミュレーションを行い,ベガ系に存在する可能性のある惑星質量への制約を与えている.そこでは,5 - 10 au の範囲にある低質量の惑星 (木星質量以下) によってデブリ円盤の形状を再現可能であることが示されている.
今回の観測では,そのシミュレーションに対して意味のある制約を与えるほどの感度はない.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1809.07242
Vanderspek et al. (2018)
TESS Discovery of an ultra-short-period planet around the nearby M dwarf LHS 3844
(近傍の M 矮星 LHS 3844 まわりの超短周期惑星の TESS による発見)
発見された惑星 LHS 3844b は 1.32 地球半径で,11 時間の周期で公転している.
このような強く輻射を受けている惑星の周りに大気が存在するかは疑問だが,恒星は十分明るい (I=11.9,K=9.1) ため,トランジットと二次食の分光観測で探査できる可能性がある.また恒星が明るく惑星は短周期なので,ドップラー分光による惑星の質量測定も可能だろう.
半径:0.189 太陽半径
光度:0.00272 太陽光度
有効温度:3036 K
距離:14.9 pc
半径:1.32 地球半径
軌道長半径:0.00623 AU
平衡温度:805 K
また,太陽近傍の M 型星周りの惑星の一員となった.その他には GJ 1214b (Charbonneau et al. 2009),GJ 1132b (Berta-Thompson et al. 2015),TRAPPIST-1b-h (Gillon et al. 2016),LHS 1140b-c (Dittmann et al. 2017,Ment et al. 2018) がある.
この惑星は,木星サイズ未満の既知の超短周期惑星の中では,最も大きなトランジット深さを持つ.また,その他の既知の系である CoRoT-7 (L ́eger et al. 2009),ケプラー10 (Batalha et al. 2011),ケプラー42 (Muirheadet al. 2012),ケプラー78 (Sanchis-Ojeda et al. 2013) よりも明るく,地球に近い.
この惑星の平衡温度は 805 K で,軌道半径は恒星半径の 7.1 倍であり,どのようなタイプの大気を持つのかは不明である.
もし惑星が現在の位置やその付近で形成された場合,惑星が過去に持っていた初期大気は,中心星が若い時期の,より明るく彩層が活発な時期に完全に吹き飛ばされてしまうだろう.
ケプラーで発見された短周期惑星で観測されている惑星半径の関数では,1.8 地球半径の所に存在個数のへこみが見られる.これは惑星からの大気損失の結果だと解釈されている.つまり,1.8 地球半径より小さい惑星は,初期の水素・ヘリウム大気を光蒸発によって失っていると考えられる (Fulton et al. 2017,Lopez & Fortney 2013,Owen & Wu 2013).
この惑星の半径は 1.32 地球半径であり,この惑星も光蒸発による大気損失の過程を経ただろうと考えられる.この場合,トランジット分光観測では波長によって惑星半径に変化を示さないと考えられる.しかし掩蔽の分光観測では,惑星の表面からの放射スペクトルを測定することができるだろう.
軌道周期が十分短いため,数夜の観測で一回の周期を観測できるだろう.また軌道周期は恒星の自転周期より 280 倍も短いので,惑星の軌道運動によるドップラーシグナルと,その他の恒星に起因する疑わしいドップラーシグナルとは明確に分離できるだろう.
arXiv:1809.07242
Vanderspek et al. (2018)
TESS Discovery of an ultra-short-period planet around the nearby M dwarf LHS 3844
(近傍の M 矮星 LHS 3844 まわりの超短周期惑星の TESS による発見)
概要
新しい Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) によって取得されたデータから,LHS 3844 まわりのホットアースを検出した.この恒星は 15 pc の距離にある M 型星である.発見された惑星 LHS 3844b は 1.32 地球半径で,11 時間の周期で公転している.
このような強く輻射を受けている惑星の周りに大気が存在するかは疑問だが,恒星は十分明るい (I=11.9,K=9.1) ため,トランジットと二次食の分光観測で探査できる可能性がある.また恒星が明るく惑星は短周期なので,ドップラー分光による惑星の質量測定も可能だろう.
パラメータ
LHS 3844
質量:0.151 太陽質量半径:0.189 太陽半径
光度:0.00272 太陽光度
有効温度:3036 K
距離:14.9 pc
LHS 3844b
軌道周期:0.46292792 日半径:1.32 地球半径
軌道長半径:0.00623 AU
平衡温度:805 K
考察
類似した性質を持つ系外惑星
LHS 3844b は,地球からも最も近い部類の系外惑星であり,中心星からも最も近い部類の系外惑星でもある.また,太陽近傍の M 型星周りの惑星の一員となった.その他には GJ 1214b (Charbonneau et al. 2009),GJ 1132b (Berta-Thompson et al. 2015),TRAPPIST-1b-h (Gillon et al. 2016),LHS 1140b-c (Dittmann et al. 2017,Ment et al. 2018) がある.
※関連記事
天文・宇宙物理関連メモ vol.123 Berta-Thompson et al. (2015) 太陽近傍での岩石惑星 GJ 1132bの発見
天文・宇宙物理関連メモ vol.389.5 Gillon et al. (2016) TRAPPIST-1 まわりでの 3 惑星の発見
天文・宇宙物理関連メモ vol.389 Gillon et al. (2017) TRAPPIST-1 まわりの 7 つの惑星の発見
天文・宇宙物理関連メモ vol.450 Dittmann et al. (2017) 近傍のハビタブルスーパーアース LHS 1140b
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また ultra-short period (USP) planet (超短周期惑星) の一員でもある.これは軌道周期が 1 日未満の惑星を指す (Sanchis-Ojeda et al. 2014,Winn et al. 2018).天文・宇宙物理関連メモ vol.123 Berta-Thompson et al. (2015) 太陽近傍での岩石惑星 GJ 1132bの発見
天文・宇宙物理関連メモ vol.389.5 Gillon et al. (2016) TRAPPIST-1 まわりでの 3 惑星の発見
天文・宇宙物理関連メモ vol.389 Gillon et al. (2017) TRAPPIST-1 まわりの 7 つの惑星の発見
天文・宇宙物理関連メモ vol.450 Dittmann et al. (2017) 近傍のハビタブルスーパーアース LHS 1140b
天文・宇宙物理関連メモ vol.970 Ment et al. (2018) LHS 1140 周りの 2 つ目の惑星の発見
この惑星は,木星サイズ未満の既知の超短周期惑星の中では,最も大きなトランジット深さを持つ.また,その他の既知の系である CoRoT-7 (L ́eger et al. 2009),ケプラー10 (Batalha et al. 2011),ケプラー42 (Muirheadet al. 2012),ケプラー78 (Sanchis-Ojeda et al. 2013) よりも明るく,地球に近い.
大気の存在の有無
トランジットと二次食の分光観測で,惑星大気の特徴付けを行うことが期待される.この惑星の平衡温度は 805 K で,軌道半径は恒星半径の 7.1 倍であり,どのようなタイプの大気を持つのかは不明である.
もし惑星が現在の位置やその付近で形成された場合,惑星が過去に持っていた初期大気は,中心星が若い時期の,より明るく彩層が活発な時期に完全に吹き飛ばされてしまうだろう.
ケプラーで発見された短周期惑星で観測されている惑星半径の関数では,1.8 地球半径の所に存在個数のへこみが見られる.これは惑星からの大気損失の結果だと解釈されている.つまり,1.8 地球半径より小さい惑星は,初期の水素・ヘリウム大気を光蒸発によって失っていると考えられる (Fulton et al. 2017,Lopez & Fortney 2013,Owen & Wu 2013).
この惑星の半径は 1.32 地球半径であり,この惑星も光蒸発による大気損失の過程を経ただろうと考えられる.この場合,トランジット分光観測では波長によって惑星半径に変化を示さないと考えられる.しかし掩蔽の分光観測では,惑星の表面からの放射スペクトルを測定することができるだろう.
視線速度観測の可能性
組成が地球と同じだった場合,惑星質量は 2.8 地球質量だと推定される.この質量を仮定した場合,ドップラーシグナルの大きさは 8 m/s になる.これは岩石惑星としては非常に高い値である.軌道周期が十分短いため,数夜の観測で一回の周期を観測できるだろう.また軌道周期は恒星の自転周期より 280 倍も短いので,惑星の軌道運動によるドップラーシグナルと,その他の恒星に起因する疑わしいドップラーシグナルとは明確に分離できるだろう.
天文・宇宙物理関連メモ vol.256 Johns-Krull et al. (2016) おうし座CI星まわりの若く重い惑星候補天体の検出
天文・宇宙物理関連メモ vol.909 おうし座 CI 星まわりの ALMA 円盤観測と遠方惑星候補