忍者ブログ
日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1810.11493
Pope et al. (2018)
Exoplanet Transits with Next-Generation Radio Telescopes
(次世代電波望遠鏡での系外惑星トランジット)

概要

これまでの系外惑星の情報の大部分は,可視光天文学によって得られている.
しかし系外惑星のオーロラは低周波の電波周波数 (< 1 GHz) で明るいと予測されているため,ここでは中心星からの電波放射に対する系外惑星トランジットの効果を考慮する.

太陽類似星からの電波放射は表面に見られる活動領域に集中しているため,惑星が恒星黒点を隠すようなトランジットが発生した場合,予想されるよりも深いトランジットが起きる可能性がある,これは Square Lilometre Array (SKA) などの現在開発中の大きな電波干渉計で検出可能である.

SKA の電波の感度を計算したところ,SKA2-mid では最も近い太陽類似星や多くの低温の矮星まわりでの電波トランジットの検出が期待される.

電波での光度曲線の形状はシンチレーションと惑星の磁気圏でのレンズ効果の影響を受けるため,それによって光度曲線には惑星磁気圏のパラメータの情報がエンコードされることになる.さらに,これらのトランジットは恒星表面に渡る恒星の活動の分布を探査し,系外惑星の透過スペクトルと視線速度スペクトルにおける恒星活動によるノイズの混入を取り除く手助けになる可能性がある.

拍手[0回]

PR

論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1810.11060
Hamers & Portegies Zwart (2018)
Catching a planet: A tidal capture origin for the exomoon candidate Kepler 1625b I
(惑星を捕獲する:系外衛星候補ケプラー1625b I の潮汐捕獲起源)

概要

17.2 木星質量の惑星ケプラー1625b の周りに発見が報告されている海王星サイズの系外衛星は,まだ存在は確認されてはいないが,系の形成に対して興味深い制約を与える.特に,推定される衛星の軌道が 40 惑星半径程度という比較的大きな値であることから,これを既存の惑星形成理論で整合的に説明するのは難しい.

ここでは,若い系での二番目の惑星の潮汐捕獲によってこの系において観測されている特徴を説明できることを示す.捕獲後に潮汐円軌道化の急速なフェーズを経験した後,初期は 40 惑星半径よりもずっと近い位置にあった衛星の軌道は,軌道と惑星の自転の潮汐同期により徐々に拡大し,同期した惑星-衛星系を形成することが出来る.興味深いことに,このシナリオでは捕獲された天体はもともと海王星のような惑星であり,捕獲によって衛星に変わったと考えられる.

衛星形成シナリオ

1. 軌道移動と散乱:2 つの惑星が原始惑星系円盤の中にあり,類似した軌道に向かって移動して,力学的不安定な短寿命のフェーズが発生する.

2. 捕獲:力学的不安定のフェーズの間,軽い方の惑星 (以降「衛星」と呼ぶ) はより重い惑星に接近し,捕獲を開始する強い潮汐遭遇を引き起こす距離まで接近する.

3. 円軌道化:捕獲直後の衛星の軌道は,軌道長半径が大きく軌道離心率も大きい (しかし惑星のヒル半径よりは内側の) 軌道になる.その後,潮汐散逸により離心率が減衰し軌道が円軌道化される.

4. 同期:惑星の自転角運動量が徐々に衛星の軌道角運動量へと輸送され,惑星の自転と衛星の公転が同期した状態に至るまで衛星の軌道が拡大する.

シナリオの検証

解析的な議論と数値計算から,上記のシナリオを検証する.

まず 2 つの惑星が低エネルギーの双曲線か放物線の軌道に至り,お互いの 惑星半径+衛星半径 の 2.5 倍程度以内の距離を通過する.この遭遇の際に潮汐散逸が発生し,小さい方の惑星が主惑星に捕獲され,衛星となる.

最初の潮汐遭遇で高軌道離心率で大きな軌道半径を持った軌道となり,捕獲が成功するためには,捕獲時点での衛星軌道の遠点は,惑星のヒル球の中に残っている必要がある.その後軌道は 10 年程度以内で円軌道化され,近接した軌道へと変化する.

その後のより長い十億年程度のタイムスケールで,主惑星は潮汐力を介して自転角運動量を衛星の軌道角運動量に移し,惑星の自転と衛星の公転が同期するまで衛星の軌道が拡大する.現在の軌道と整合的な状態に持っていくために十分な角運動量を衛星に与えるためには,臨界自転速度の少なくとも 40% 程度の初期自転を持っていた必要がある.
現在の軌道進化は非常にゆっくりで,惑星と衛星はほぼ軌道と同期していると予想される.

このような捕獲は恐らく珍しいことではなく,惑星同士の衝突の 2 倍程度の頻度で発生する.しかし,この過程が働く正確な確率はは依然として不明である.潮汐捕獲による衛星形成自体は珍しくはないことが期待される (Ochiai et al. 2014参照).

惑星-衛星系を現在の軌道で同期させるための潮汐散逸の大きさを考えると,捕獲は十億年以上前の,惑星系の進化の初期段階で発生している必要がある.このシナリオは,惑星と衛星の両方の自転を測定することで検証可能.これは軌道と同期しているはずで,惑星-衛星系の軌道角運動量と同じ軸であるはずである.

拍手[0回]


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1810.10792
Zang et al. (2018)
Kmt-2016-blg-1397b: Kmtnet-only discovery of a microlens giant planet
(Kmt-2016-blg-1397b:マイクロレンズ巨大惑星の KMT 単独発見)

概要

マイクロレンズイベント KMT-2016-BLG-1397 の光度曲線から,巨大惑星 KMT-2016-BLG-1397b を発見したことについて報告する.これは,Korea Microlensing Telescope Network (KMTNet) 単独での発見である.

マイクロレンズイベントのタイムスケールは 40.0 日で,中心性と惑星の質量比は 0.016 であった.

惑星による光度曲線への擾乱はスムーズなバンプ構造として現れ,パラメータには古典的な 連星-レンズ/連星-ソース (2L1S/1L2S) の縮退が存在した.1L2S モデルでの仮説上の 2 ソースに対して V-I 色を測定し,ソース天体が連星になっているという解は実効的に否定された.
また,有限ソース効果 (finite source effect) を暫定的に検出した.

ベイズ解析から,レンズ天体は 0.45 太陽質量で 6.60 kpc の距離にあり.伴星はスーパージュピター質量で 7.0 木星質量,中心星との射影距離は 5.1 AU である.この距離は,中心星のスノーラインよりも十分外側である.

拍手[0回]


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1810.10969
Evans et al. (2018)
An optical transmission spectrum for the ultra-hot Jupiter WASP-121b measured with the Hubble Space Telescope
(ハッブル宇宙望遠鏡で測定したウルトラホットジュピター WASP-121b の可視光透過スペクトル)

概要

ハッブル宇宙望遠鏡の STIS を用いて,ウルトラホットジュピター WASP-121b の大気の透過スペクトル観測を行った.観測波長は 0.47 - 1 µm の範囲である.
得られたデータの解析の結果,大気の不透明度 (opacity) は過去の近赤外波長 (1.15 - 1.65 µm) で測定されたものと同程度であったが,ある分光チャンネルでは過去の測定値を超えていた.

大気の不透明度の波長依存性が見られたことから,大気中に雲層が存在する可能性は 3.8σ の信頼度で否定される.代わりに,VO (酸化バナジウム) のスペクトルバンドで観測結果を説明可能である
観測されたスペクトルは,惑星の平衡温度として 1500 K を仮定し,大気の金属量が太陽の 10 - 30 倍とした場合の,雲なし大気モデルが観測結果と最もよく一致する.

Free-chemistry 復元解析を用いて,大気中の VO の存在度は -6.6 dex と推定された.
また TiO (酸化チタン) が存在する兆候は見られなかった.TiO の 3σ での存在度の上限値は -7.9 dex であった.このことは,TiO は惑星の昼夜境界領域ではガス相にはおらず,凝縮している可能性があることを示唆している.


大気の不透明度は短波長側で急激に上昇しており,0.47 µm から 0.3 µm にかけて惑星の見かけの大きさは 5 スケールハイト分大きくなる.この特徴が,大気中に一様に分布しているエアロゾルによるレイリー散乱によって引き起こされていると考えた場合,大気の温度として 6810 K という非物理的に高い値が必要となる.

この特徴の別の説明としては,SH (mercapto radical,メルカプトラジカル) による吸収が短波長側で起きているというものが考えられる.SH は,ホットジュピター大気における非平衡化学の重要な生成物として予測されていたものである.

近紫外線波長での吸収物質の正体が何であれ,それは大気の低圧領域で入射する恒星輻射の多くを吸収している可能性がある.そのため,大気全体のエネルギー収支,熱構造,大気循環に重要な役割を果たすと考えられる.

ホットジュピター大気の透過スペクトル観測

系外ガス惑星の大気透過スペクトルは,ハッブル宇宙望遠鏡を用いて多く観測されている.
ハッブル宇宙望遠鏡に搭載されている Space Telescope Imaging Spectrograph (STIS) は,波長域 0.1–1 μm の紫外線から可視光の範囲の分光観測を行うことが出来る.また Wide Field Camera 3 (WFC3) は 0.8–1.65μm の近赤外線の範囲の分光観測を行うことが出来る.

ハッブル宇宙望遠鏡での透過光分光観測の結果としては,HD 209458b 大気中のナトリウムの検出 (Charnonneau et al. 2002),水分子の複数回の検出 (Deming et al. 2013など),エアロゾルの広い証拠 (Kreidberg et al. 2014など),WASP-107b の広がった大気中のヘリウムの検出 (Spake et al. 2018) などが挙げられる.

また,STIS を用いた紫外線波長の観測では,ホットジュピターの水素外気圏の検出 (Vidal-Madjar et al. 2003など),ウォームネプチューンの水素外気圏の検出 (Ehrenreich et al. 2015など) が報告されている.
一方で,酸素のようなより重い元素は,ハッブル宇宙望遠鏡の Cosmic Origins Spectrograph を用いた観測で検出されている (Fossati et al. 2010など).

これらの他にも,大気中の水分子の吸収の検出 (Beatty et al. 2017,Stevenson et al 2014),水分子の輝線の兆候の検出,(Evans et al. 2017),TiO (酸化チタン) 分子の放射の兆候の検出 (Haynes et al. 2015),可視光の反射スペクトルへの制約 (Evans et al. 2013,Bell et al. 2017),多くの特徴に欠けた熱スペクトルの観測 (Nikolov et al. 2018,Mansfield et al. 2018) などが行われている.

WASP-121b について

WASP-121b の概要

ここでは,ウルトラホットジュピター WASP-121b の大気透過スペクトルの観測結果について報告する.なお,ここでは平衡温度 2500 K 以上のものをウルトラホットジュピターと呼ぶこととする.

WASP-121b は Delrez et al. (2016) によって発見された惑星で,やや明るい V = 10.5 の F6V 星を公転している.中心星 WASP-121 は 1.458 太陽半径で,距離は 272.0 pc である.WASP-121b は1.18 木星質量で,1.7 木星半径と膨張した半径を持っている,
また,惑星の昼側での平衡温度は 2400 K 以上と推定される.

これまでの大気観測

これまでに,WASP-121b の 1.15 - 1.65 µm の範囲での近赤外線の透過スペクトルが,ハッブル宇宙望遠鏡の WFC3 を用いた観測によって取得されている (Evans et al. 2016).この観測では,1.4 µm を中心とした水分子による吸収の特徴が検出されている.
また 2 つ目のスペクトル上のバンプが 1.15 - 1.3 µm の範囲に検出されている,これは FeH か VO (酸化バナジウム) による特徴だと解釈されている.

同じデータセットを用いた解析から,Tsiaras et al. (2018) は 1.15 - 1.3 µm の特徴は TiO と VO の吸収をモデルに含んだ場合によく合うことが示唆されている.しかし FeH については議論されていない.
Evans et al. (2017) では,この惑星の二次食 (secondary eclipse) の観測を,同じくハッブル宇宙望遠鏡 WFC3 の近赤外波長で行った.その結果,惑星の光球面の平均温度はおおむね 2700 K であることが示唆された.
また 1.4 µm の波長で,水分子の吸収ではなく放射の特徴を示すことが分かった.これは昼側半球の大気構造には,鉛直方向の温度逆転層が存在していることを示唆している.


透過スペクトルでは, 1.15 - 1.3 µm 波長域での 2 番目のバンプが検出されており,この特徴は大気中に VO が存在するモデルでフィットすることが出来る.しかし観測結果を説明するためには,化学平衡状態で太陽の 1000 倍の金属量が必要になるため,この解釈には疑問が投げかけられている.

化学平衡の組成を仮定し,惑星大気が太陽に近い組成であった場合は,検出された 2 番目のスペクトルのバンプは再現できない.現段階ではこの特徴を説明可能な仮説は存在しないが,透過スペクトルでも放射スペクトルでも検出されているというのは興味深い事実である.

WASP-121b 大気中の加熱源と TiO,VO

WASP-121b の大気に関する現在の理解は道半ばである.
昼側半球での温度逆転層の検出は,大気の低圧領域 (100 mbar 以下の高層) に強い加熱源が存在することを示唆している.しかしその加熱の原因は不明確である.

加熱源として可能性があるのは,可視光波長における TiO と VO による恒星放射の吸収である (Hubeny et al. 2003,Fortney et al. 2008).しかしどちらの分子も,検出の兆候については報告されているものの,現段階では明確には検出されていない.

また,非常に高温の惑星であっても,夜側での cold-trap によって TiO と VO は高層大気から取り除かれてしまうという指摘も存在する (Spiegel et al. 2009など).
さらに,この惑星のようなウルトラホットジュピターの昼側の温度は,水分子などのその他の分子で起きるように,TiO や VO が熱解離を起こすのに十分高い温度である (Arcangeli et al. 2018,Kreidberg et al. 2018,Lothringer et al. 2018,Parmentier et al. 2018).とはいえ,WASP-33b の大気では昼側の大気から TiO の兆候が検出されたという報告がある (Haynes et al. 2015,Nugroho et al. 2017),WASP-33b は近赤外波長での光球温度が 3000 K 程度で,WASP-121b よりも高温である.別のウルトラホットジュピター WASP-19b の可視光透過スペクトルでは,TiO バンドの存在が指摘されている (Sedaghati et al. 2017),しかしこれは,惑星に隠されていない恒星黒点の特徴を誤認した可能性も指摘されている (Espinoza et al. 2018).

紫外線波長での吸収

紫外線波長での吸収も惑星の高層大気に大きな影響を及ぼす可能性がある.

例えば Zahnle et al. (2009) では,ホットジュピター大気の文脈で非平衡の硫黄の化学反応に着目し,SH とS2 が 0.24 - 0.4 µm の波長域で重要な吸収源になると結論付けている.これらの分子種は,H2S の光分解と光化学的破壊によって形成される.

結果と議論

WASP-121b の透過スペクトルでは,短波長側で吸収が急激に強くなっているのが検出された
~ 0.47 µm では惑星半径/恒星半径は 0.121 だが,~ 0.28 µm では 0.125 となる.これは惑星の有効半径が,大気スケールハイトの 5 倍分変化したことに対応している.

長波長側の可視光ではチャンネルによってトランジット深さが異なり,大気の不透明度が波長依存性を持つことを示唆している.

レイリー散乱と雲層の有無

ホットジュピター大気では,レイリー散乱によるスペクトルの特徴はよく見られる.ここでは,観測されたスペクトルの特徴がどのようにエアロゾルで説明されうるかについて検証を行った.

スペクトル中のレイリー散乱要素に関しては,Lecavelier Des Etangs (2008) の方法論を採用した.これは透過スペクトルの傾きと惑星大気温度の関係性を与えるものであり,大気の圧力に対して散乱粒子が一様に分布していることを仮定している.

雲層が存在するモデルの場合,予想されるスペクトルは観測と合わなかった.そのためこのモデルは 3.7σ の信頼度で否定される.波長依存性のない雲ありモデルでは,可視光波長のスペクトルを説明できない.


また,スペクトルの要因がレイリー散乱だとした場合,示唆される大気温度は 6980 K となる.
これは,透過スペクトルで探査されている大気圧の範囲では非現実的なほどに高温である.もし惑星が恒星からの輻射を全て吸収した場合でも,恒星直下点での温度は 3280 K にしかならない.また透過スペクトルが観測されている惑星の昼夜境界領域は,恒星直下点での温度よりも低温になると考えられる.

さらにその様な高温環境では,レイリー散乱を起こすような凝縮物は存在し得ず,また水素分子でさえも熱解離する.

近紫外線での強い吸収

短波長側のスペクトルは,水素分子のようなガス相にある分子種や高高度エアロゾルによるレイリー散乱では説明出来ない.また化学平衡モデルでは,水素分子による吸収を超える強い吸収の存在は期待できない.

吸収物質の一つの候補は,メルカプトラジカルの SH である.これは硫黄原子と水素原子からなるラジカルである.SH は Zahnle et al. (2009) によってホットジュピター大気中の強い近紫外線吸収源になりうることが予測されていた.

1 次元光化学運動学コードを用いた結果,SH の存在度は大気圧が 1 - 100 mbar となる高度で極大になることが予測され,その場合の混合比は 10 ppm 程度となる.この圧力領域では,硫黄を含む分子種で最も多いのは,化学平衡を仮定した場合は H2S である (Visscher et al. 2006).

一方で水素原子と硫黄原子は,水素分子や水分子などの分子の光解離により生成可能.SH は H2S,H,S を含む多くの化学的経路で生成されうる.

SH が 20 - 100 ppm 程度存在する場合,観測されたスペクトルの特徴を説明できると推定される.これは,惑星大気の金属量が太陽の 20 倍で,大気の鉛直混合パラメータ Kzz = 109 cm2 s-1 を仮定した場合の推定である.ただし SH の吸収断面積は,実験的データが足りないため不定性が大きいことにも注意が必要である.現時点では,SH の存在をはっきりと確定も否定もできない状態である.

その他の硫黄化合物で存在度が大きい可能性がある SiS も同じく近紫外線で強い吸収を持つが,この分子種に関してもモデル化が不足している.

また,Lothringer et al. (2018) はガス相の鉄もウルトラホットジュピターの大気中では重要な近紫外線の吸収源になると指摘した,しかし今回測定されたスペクトルは,鉄の吸収とは適合しない.

近紫外線の吸収源と大気特性への影響

仮説上の近紫外線吸収源が何であれ,これは高層大気を大きく加熱する要因となる.

1 次元大気モデル中では,mbar 程度の圧力で 500 K 程度の加熱を引き起こすと推定される.このような加熱は例えば,VO や TiO が凝縮せずガスとして存在し続けるのを助ける可能性があり,その結果として VO や TiO による可視光の吸収によって高層大気をさらに加熱することとなる.そのため,これらの効果を正しく取り扱うことは,大気の循環とエネルギー収支の正確なモデル化において重要である.


入射する紫外線の予測を超えた吸収は,太陽系の惑星でも報告されている.有名なのは金星と木星である.

木星では 0.3 µm 付近での反射効率の減少が報告されており,これは高高度のダストかヘイズの影響である可能性がある.この吸収源の組成は不明であり,一般的には S, N, C, P の非平衡の組み合わせだろうと考えられている.

同様に金星では,紫外線波長での大気中での暗い模様の原因がまだ理解されていない.これは発見から 40 年以上経った今でも未解明である (Esposito et al. 1997など),これらの特徴は,おそらくは硫黄を含んだ吸収体の非平衡化学が関与している可能性がある.

拍手[0回]


論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1810.10009
Brewer et al. (2018)
Compact multi-planet systems are more common around metal poor hosts
(コンパクトな複数惑星系は金属欠乏星の周りにより多い)

概要

これまでに検出された系外惑星系では,ホットジュピターを持つ惑星系と複数の惑星を持つコンパクトな系は,お互いにほぼ排他的であることが分かっている.この 2 つの構造を持つ惑星系の相対的な存在度を比較し,惑星形成における金属量の役割について調査した.

惑星を持つ恒星 700 個以上のに対して分光学的に導出された金属量のデータを使用して調査した結果,コンパクトな複数惑星系は,金属量が低い恒星の周りに多く存在することが分かった

恒星の金属量が高い場合,惑星を持つ恒星がコンパクトな複数惑星系を持っている頻度は一定の割合を示した一方で,ホットジュピターか低温な木星型惑星を持つ恒星の割合は急激に上昇した.金属欠乏星周りでの惑星探査では現時点で不十分であることから,この結果はこれまでに報告されているよりも,コンパクトな複数惑星系の存在頻度が高いことを意味している.

視線速度法を用いた系外惑星探査は,観測的な限界を理由として,巨大惑星が発見される可能性の高い高金属量星をターゲットにしている場合が多い.今後の新しい極めて高精度な視線速度装置はこれらのコンパクトな複数惑星系を検出する能力があるため,これらを発見するためにより低い金属量を持つ恒星を観測対象にすることができる.

背景

惑星の存在と金属量の関連

系外惑星探査において,恒星の周りに巨大惑星が存在している割合と恒星の金属量との間には正の相関が見られる (Santos et al. 2004,Fischer & Valenti 2005).

このことは,惑星形成は重力不安定経由ではなくコア降着を介して形成されたとするモデル (Pollack et al. 1996) への強い支持となる.つまり,重いコアは金属量豊富な重い円盤ではより急速に形成されるということを示している.

ホットジュピターを持つ系とコンパクトな複数惑星系の対比

系外惑星の探査では, 惑星系の分類として 2 つの注目すべき特徴が同定されている.狭い範囲に複数の小さい惑星の軌道が集まっている,コンパクトな複数惑星系 (Lissauer et al. 2011) と,短周期軌道にある重い惑星,ホットジュピターが存在する惑星系である.

これらの 2 つの軌道配置は,お互いにほとんど排他的であることが分かっている.つまり,ホットジュピターの近くに近接した軌道の別の惑星を持っている系は少なく,またコンパクトな複数惑星系の中に恒星近傍の巨大惑星を持っている系は存在しない.

ホットジュピターは惑星全体の中では希少な存在だが,重元素を多く持つ恒星の周りではより多く存在することが分かっている (Santos et al. 2004,Fischer & Valenti 2005).一方で小さい惑星は,広い範囲の恒星金属量において存在している (Buchhave et al. 2012,Wang & Fischer 2015,Petigura et al. 2018).コンパクトな複数惑星系にある惑星は小型であるため,多くが現在の視線速度サーベイの検出限界付近か検出限界以下にある.しかしこれらの惑星は軌道が同一平面上によく揃っている傾向があり (Fabrycky et al. 2014),ケプラーのトランジット惑星サーベイでは検出されやすい.

いくつかの研究グループは,これらのコンパクトな複数惑星系を持つ恒星の平均金属量を惑星半径の関数として調査を行い,より小さい惑星はより低い平均金属量を持つ恒星の周りに発見されやすいことを見出した (Buchhave et al. 2014,Wang & Fischer 2015,Owen & Murray-Clay 2018).
このことは,固体の少ない原始惑星系円盤では大きな惑星は形成しづらく,あるいは惑星そのものも形成しづらいことを示唆している.

しかし観測の選択バイアスと検出の完全性の問題が,依然として惑星系の完全な描像を理解するのを妨げている.これらの問題を回避するため,ここでは検出された惑星を持つ系だけをピックアップし,それぞれの構造を持つ惑星系の特性を比較した.

結果

ホットジュピターを持つ系

それぞれの惑星の配置の比率に関して,中心星の鉄の存在度,あるいは [Fe/H] に対して対象的な傾向が存在することを発見した.

ホットジュピターを持つ惑星系では,過去の観測と同様に,惑星の存在頻度と中心星の金属量の間に相関が見られた.すなわち,ホットジュピターの存在頻度は中心星の金属量の増加とともに増加する傾向が見られる.

コンパクトな複数惑星系

最も高い金属量を持つ恒星の周りでは,コンパクトな複数惑星系の存在頻度も増加するが,金属量が -0.3 < [Fe/H] < 0.3 の範囲では,存在頻度の依存性はほとんど平坦とみなすことができる.

しかし,中心星の金属量が [Fe/H] < -0.3 と低い場合,コンパクトな複数惑星系の存在頻度は鋭い上昇を示した.[Fe/H] が 0.2 dex のみ変化する間に,コンパクトな複数惑星系が存在する確率密度は,ファクターで 3 も上昇した.

低温な巨大惑星を持つ系

最近の研究では,中心星から 1 AU より離れた位置にある低温な巨大惑星 (クールジュピター) は,相互軌道傾斜角が大きいため我々からは観測できない,コンパクトな複数惑星系の一員である可能性が示唆されている (Morton & Winn 2014,Zhu et al. 2018).

クールジュピターは中心星から離れた距離にあるため,視線速度やトランジットで検出することはより難しく,そのためクールジュピターの探査はより不完全である.しかしその分布を他の惑星を持つ恒星と比較して,別のタイプの惑星を持つ恒星の分布と明確に関連しているかどうかを確認することは有益である.

クールジュピターの存在頻度を中心星の金属量の関数として考えた場合,ホットジュピターが示す傾向をトレースしているように見える.金属量が -0.3 より大きい範囲では.元々の惑星存在頻度-金属量に関する研究は軌道周期が 4 年よりも短い惑星を持つ系が含まれていたため,この結果はそれほど驚くべきことではない.

しかし [Fe/H] < -0.3 の系では,コンパクトな複数惑星系が示す傾向と類似して,クールジュピターの存在頻度も上昇している様子が見られる.ただしその傾向は弱い.

拍手[0回]