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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1810.04074
Livingston et al. (2018)
60 Validated Planets from K2 Campaigns 5-8
(K2 Campaign 5-8 からの 60 個の立証された惑星)

概要

NASA のケプラー K2 ミッションの Campaign 5-8 の期間に検出された,155 個の系外惑星候補を一様に解析した.その結果,60 個の惑星が統計的に立証された

これらの惑星系のパラメータの中央値は,惑星サイズが 2.5 地球半径,軌道周期 7.1 日,平衡温度 811 K,中心星の J バンド等級は J = 11.3 である.この内,複数の惑星を持つ系は 11 個で,その中に含まれる惑星は計 24 個である.また,惑星候補のうち 18 例は偽陽性であり,残りの 77 例は惑星候補のままとして残る.

興味深いのは,18 個の惑星は 2 地球半径より小さいサイズを持つという点である.
また,5 個は J = 10 よりも明るい恒星を公転している.

ここでは,堅牢な統計的枠組みを用いて惑星のトランジットパラメータと偽陽性確率を計算し,高分解能撮像と分光観測の集中的キャンペーンの結果を含んだ完全な解析結果を提示する.

この発見により,ケプラーの K2 ミッションで発見された惑星は 360 個を超えることとなった.また今回の結果を外挿すると,2018 年後期にケプラーに搭載されている燃料が枯渇するまでの間に,K2 ミッションでは 600 個程度の惑星を発見できると予想される.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1810.03304
Kollmeier & Raymond (2018)
Can Moons Have Moons?
(衛星は衛星を持てるか?)

概要

太陽系内の巨大惑星は大きな衛星を持っているが,それらのどれも自らの衛星 (submoon,孫衛星) は持っていない.ここでは,短周期系外惑星周りの衛星の存在可能性に関する研究と同様に,孫衛星の力学的安定性を調べる.

その結果,惑星から大きく離れた軌道にある 1000 km スケールの大きな衛星を公転する,10 km スケールの孫衛星のみが安定であり長期間生き残れることを発見した

小さい衛星を公転する孫衛星,あるいは惑星に近すぎる距離を公転する衛星を公転する孫衛星の場合,潮汐散逸が孫衛星の軌道を不安定化する.太陽系の衛星の大部分はこの状況に該当する.

ただし一握りの既知の衛星は,長寿命の孫衛星を保持できる可能性がある.孫衛星を持てる可能性があるのは,土星の衛星タイタンとイアペトゥス,木星の衛星カリスト,地球の月である.

また,新しく発見された系外衛星候補天体ケプラー1625b-I についても考察を行った.この天体に対して示唆された質量と軌道間隔に基づくと,原理的には孫衛星を持つことは可能である.ただしこの系外衛星が持っている可能性がある大きな軌道傾斜角は,孫衛星の力学的不安定性に困難をもたらす可能性もある.

ある衛星に孫衛星が存在すること,もしくは存在しないことは,惑星系における衛星の形成と進化に重要な制約を与える可能性がある.

孫衛星の存在可能性について

潮汐進化の影響

潮汐応力は大きさを持った天体を変形させ,天体内部での散逸は天体の自転状態と軌道を変える.

恒星-惑星-衛星系での潮汐進化については,金星と水星が衛星を持たないことに関して研究されている (Counselman 1973,Ward & Reid 1973,Burns 1973).また,より一般的な事例としては,短周期軌道にある系外惑星の衛星についての研究が存在する (Barnes & O’Brien 2002,Sasaki et al. 2012,Sasaki & Barnes 2014,Piro 2018).

孤立した惑星-衛星系での潮汐進化は,惑星の自転が速い場合は衛星の軌道を広げ,自転が遅い場合は軌道を縮小させる.しかし恒星による潮汐摩擦は惑星の自転を減速させ,衛星の移動に直接的な影響を及ぼす.

天体の軌道配置に依存して,衛星は内側へ移動して惑星に衝突したり,あるいは安定性限界に到達するまで外側に移動したりするだろう.ある場合では,衛星は初めは外側に移動し,その後方向を変え惑星が自転を減速するのに伴って内側に移動することもある.

ここでは,Barnes & O’Brien (2002) での議論を拡張し,長寿命の孫衛星を保持できるような衛星の限界サイズを導出した.衛星の軌道移動には潮汐的な移動を仮定している.

その結果,
\[
R_{\rm moon}\geq \left[ \frac{39 M_{\rm sub} k_{\rm 2.moon} T \sqrt{G}}{2\left(4\pi \rho_{\rm moon}\right)^{8/3}Q_{\rm moon}} \left(\frac{3 M_{\rm p}}{\left(f\,a_{\rm moon}\right)^{3}}\right)^{13/6} \right]^{1/3}
\]
という関係式を導出した.\(M_{\rm sub}\) は孫衛星の質量,\(R_{\rm moon}\),\(a_{\rm moon}\),\(\rho_{\rm moon}\),\(Q_{\rm moon}\),\(K_{\rm 2,moon}\) は,それぞれ衛星の半径,軌道半径,バルク密度,潮汐の Q 値,潮汐のラブ数である.\(M_{\rm p}\) は惑星の質量,\(T\) は 46 億年に固定してある.また \(G\) は重力定数である.

孫衛星の軌道は,衛星のヒル球の半径の \(f\) 倍のところまで安定である.Domingos et al. (2006) では,孫衛星が順行公転で低軌道離心率の場合,\(f\) は 0.4895 になることを示した.注意点として,この関係式は孫衛星が低質量であることを仮定し,孫衛星が衛星の自転に与える影響や,衛星が惑星の自転に与える影響などは無視している.

孫衛星の存在可能性の具体例

上記の関係式を各惑星とその衛星で示した場合,一般的な傾向としては,惑星から距離が離れた軌道を公転している大きな衛星の場合は,孫衛星が安定して存在できる.これは,質量が大きく惑星から遠方を公転する衛星の場合,衛星のヒル半径も大きくなるからである.

特に,木星のカリスト,土星のタイタンとイアペトゥス,地球の月は,現在の衛星の周りに長周期の孫衛星を安定して持てる領域がある

また,最近存在が示唆されている新しい系外衛星候補ケプラー1625b-I (Teachy & Kipping 2018) も,示唆されている軌道距離と質量・サイズのみに基づくと,大きな孫衛星を安定に保持できる領域が存在することが分かった.しかしこの衛星候補天体は,孫衛星の安定性に影響を及ぼす可能性がある大きな軌道傾斜角を持つことも注記しておく必要がある.巨大惑星周りに存在する大きな規則衛星の大部分は,孫衛星を持つには惑星に近すぎる.これは天王星と海王星のすべての衛星について言える.このような衛星に孫衛星が形成された場合,潮汐に誘起された移動によっていずれ失われる.

孫衛星は存在するか?

それでは何故カリスト,イアペトゥスや月は孫衛星を持たないのか?

もちろん,孫衛星が存在するためには形成経路が必要である.
巨大ガス惑星周りの大きな衛星は,周惑星円盤で形成されたか,あるいは濃い初期リング系の拡散によって形成されたと考えられている.
地球の大きな月は巨大衝突で形成され,火星の小さい衛星は捕獲によって形成されたか,大きな衝突の後に形成されたと考えられている.

もし初期の孫衛星がカリスト,イアペトゥス,月の周りに形成されたとして,それらは自身の潮汐駆動の移動や衛星間の力学的効果によって失われた可能性がある.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1810.02362
Teachey & Kipping (2018)
Evidence for a Large Exomoon Orbiting Kepler-1625b
(ケプラー1625b を公転する大きな系外衛星の兆候)

概要

系外衛星 (exomoon) とは,太陽系の外にある恒星を公転する惑星の周囲にある天然衛星であり,現段階では存在が確認された例は存在しない.

ここでは,ケプラー1625b に付随している可能性のある系外衛星候補 ケプラー1625b-i の新しい観測結果について報告する.観測はハッブル宇宙望遠鏡を用い,系外衛星の存在を確認もしくは否定するのを目的とした.

その結果,惑星であるケプラー1625b のトランジットタイミングのずれと,中心星からのフラックスの減少が検出された.この結果はトランジットする大きな系外衛星の存在と整合的であり,衛星仮説を支持する証拠を見出した.

自己無撞着な光力学モデルからは,惑星ケプラー1625b はおそらく木星質量の数倍程度であり,系外衛星候補天体の質量と半径は海王星に類似していると推定される.

ここでの衛星仮説に関する推測は,観測回数が 1 回のみではあるが非常に精度の高いハッブル宇宙望遠鏡の観測に依拠している.今後のこの系の将来的なモニタリングから,理論モデルの予測を確認し,衛星起源と思われるシグナルが反復的に検出されるかどうかを確認することを提案する.

系外衛星の探査

これまでの系外衛星の探査

系外衛星の探査はまだ初期段階にある.現在のところ存在が確認された系外衛星は存在しないが,それらを検出するための技術は多数提案されている.例えば,重力マイクロレンズ (Han & Han 2002など),直接撮像 (Cabrera & Schneider 2007など),サイクロトロン電波放射 (Noyola et al. 2014),パルサータイミング (Lewis et al. 2008),トランジット (Sartoretti & Schneider 1999など) である.

これらのうち,トランジット法による系外衛星探査は特に魅力的である.これは,現在までにトランジット法によって最小で月半径程度の小さい惑星が既に多数検出されており,またトランジットは候補シグナルを更に研究するための観測機会が反復的に訪れるからである.

トランジットする系外衛星の過去の探査では,軌道長半径が 0.1 - 1 AU の惑星の周りでは,ガリレオ衛星サイズの衛星の存在は一般的ではないことが指摘されている (Teachey et al. 2018).このことは,惑星が内側へ移動する間に,惑星のヒル球が縮小することと,出差共鳴 (evection resonance) に捕獲されうるため,初期に存在した衛星が効率的に失われるという理論的な研究と整合的である (Namouni 2010,Spalding et al. 2016).

系外衛星候補ケプラー1625b-i

しかしながら,285 個のトランジット惑星のトランジットデータ中から,ケプラー1625b が大きな衛星を持っている可能性があることが最近指摘されている (Teachey et al. 2018).

ケプラー1625b は存在が確定した木星サイズの惑星で (Morton et al. 2016),太陽質量の恒星を公転している (Mathur et al. 2017).軌道は恐らく円軌道で,中心星から 1 AU の距離を公転している.そのため系外衛星探査のための先験的な候補である.

上記の事実に基づき,またケプラーで観測されていた 2 つのトランジットに見られる系外衛星の兆候を元に,ハッブル宇宙望遠鏡での観測を提案して採択された.その結果,ハッブル宇宙望遠鏡によって 2017 年 10 月 28-29 日に通算 4 回目となるトランジットが 1 回観測された.

観測結果

解析から得られた明確な結果として,ハッブル宇宙望遠鏡で得られたケプラー1625b のトランジットは,理論的な予測よりも 77.8 分早く発生した.これは,この系でのトランジット時刻変動 (transit timing variation, TTV) の存在を示唆している.

TTV を同定することは,系外衛星を発見するために最初に提案された手法の一つである (Sartoretti & Schneider 1999).しかし実際には,惑星系内における未発見の惑星の存在も TTV の原因となりうる.

今回の解析では,TTV 振幅が 25 分程度であれば,外側に存在する惑星によって説明できることを見出した.しかし今手元にあるのは 4 回のトランジットのデータのみであり,外側に存在する可能性のある惑星の質量や位置を制約することは不可能である.また,これまでに系内に他の惑星は発見されていない.

系外衛星の最も有力な証拠は,惑星の TTV が検出されることに加えて,系外衛星自身のトランジットが観測されることである.
もし惑星が実際に衛星の影響によって予測よりも早いトランジットを起こしているのであれば,惑星-衛星の共通重心の反対側にある衛星は,惑星よりも後にトランジットを起こすことが予測される.過去に言及した,観測期間の終わりに向かって見かけのフラックスの減少が検出されていることは,この衛星仮説のもとで予測されるものである.

この減光は天体物理的な現象である可能性が高いと考えているが,その有意性や自己無撞着な衛星モデルとの整合性についてはまだ検討を行っていない.

解析結果

系外衛星候補の軌道配置

検出された系外衛星候補に対して示唆されるパラメータについて検討する.

まず,衛星の軌道は円軌道であることを仮定する.これは,惑星の潮汐力による円軌道化が急速に働くだろうと考えられるため正当化される.

しかし衛星の可能な 3 次元軌道を探査した結果,非同一平面上に存在する可能性がある兆候が見出された.衛星軌道は惑星の軌道面から 45度傾いている可能性があり,また順行と逆行はどちらも可能性がありうる.

このような傾いた軌道にあり,比較可能な既知の大きな衛星は海王星の衛星トリトンのみである.海王星とトリトンの系は,カイパーベルト天体を捕獲して形成された可能性があると一般に考えられている.

しかし注意すべき点として,ここでの軌道配置に関する制約は弱いものであり.実際の軌道が同一平面上であったとしても驚くことではない.

惑星-衛星系の規模

この惑星-衛星系の厄介な要素の一つは,その絶大な規模にある.系外衛星は 4 地球半径あり,サイズとしては海王星や天王星に非常に近い.解析から推定した質量は \(\log\left(M_{\rm S}/M_{\oplus}\right)=1.2\pm0.3\) であり,これも海王星や天王星に近い (ただしこの解は経験的な質量-半径関係によって事前に部分的に情報が与えられていることに注意).

この海王星的な衛星は,木星とほとんど同程度のサイズ (11.4 地球半径) を持つ惑星を公転しているが,惑星質量は木星よりも数倍重い可能性が高い.

系外衛星の物理要素と環境

最後に,この系外衛星の物理要素について考察する.

衛星の軌道周期の解は大きく縮退している.また多峰性の分布ではあるが,軌道長半径は惑星半径の 40 倍程度と比較的大きな軌道長半径を持つことを見出した.惑星のヒル半径は 200 ± 50 惑星半径であることから,衛星はヒル球の内部にあり,また衛星が十分に安定な領域として期待される範囲内にある.

惑星と衛星の黒体平衡温度は,アルベドがゼロであると仮定すると ~ 350 K となる.より現実的なアルベドの値をを採用すると ~ 300 K となる.おそらくはガス天体のペアであることから,ここでは惑星と衛星の居住可能性については見込みが薄い.しかし,ハビタブルゾーンの楽観的な定義の温度領域に入っていると思われる.

この系について特に興味深い点は,恒星は太陽質量であり,主系列段階を離れようとしている段階にあるということである.最近の Gaia DR2 の結果や独自の等時線の解析から,この恒星が実際に太陽よりも年老いており,年齢は 90 億星と推定される.そのため現在の惑星と衛星の位置での過去の日射は現在よりも低かったことが期待される.

中心星の光度は一生の大部分において太陽に近かったと考えられ,木星のアルベドを仮定した場合の惑星と衛星の平衡温度は ~ 250 K にまで下がる.

この系の年齢が古いことは潮汐進化のための十分な時間があったことを指摘しており,このことは衛星が比較的大きな軌道間隔を持っていることを説明可能である.

系外衛星の形成機構

この系の起源については,現段階では推測することしかできない.

衛星と惑星の質量比が 1.5% であることは,ガスが枯渇した円盤モデル (gas-starved disk models) を用いたその場形成からは,非物理的な比率ではないことは確かである.しかし数値シミュレーションで形成可能な質量の上端の値である (Cilibrasi et al. 2018).
また,周惑星円盤内で形成されたとするシナリオでは,軌道の傾きに関しては独立した説明が必要である.


連星交換によって形成されたとするシナリオは,初期に海王星質量の天体が同程度の質量の天体,例えばスーパーアースと連星を形成している必要があることから,困難だと考えられる.おそらくは潮汐捕獲を介した初期の連星惑星の形成は,起こりそうもないように思われる.これは,シミュレーションではその様なイベントからは近接した軌道を生成する傾向にあるためである.

もし系外衛星であると確認された場合,ケプラー1625b-i は理論家が解くべき興味深い問題を与えることになる.

結論

ケプラーおよびハッブル宇宙望遠鏡での観測結果を説明するには,系外衛星仮説が好ましいことを見出した.その主要なポイントは以下の通りである.

(i) ハッブル宇宙望遠鏡でのトランジットは予測より 77.8 分早く観測され,強い TTV が検出された
(ii) 惑星のトランジットの後に衛星によると思われるトランジットの特徴が起きている


また解析からは,
(i) 衛星によると思われるトランジットは,装置の一般モード,残差ピクセルの感度変化,あるいは chromatic systematics による誤検出ではないこと
(II) 衛星によると思われるトランジットは,観測された惑星の TTV を説明する正しい位相位置にあること
(iii) 同時のトレンド除去と光力学モデリングは,データに適合するだけではなく,物理的にも自己一環的に解を復元すること
が判明し,系外衛星仮説は今回の解析で補強された.

TTV の存在と惑星のトランジット後に中心星からのフラックスが減少しているという減少の両方を説明する仮説としては,系外衛星仮説が最もシンプルなものである.その他の仮説は,2 つの独立した,お互いに独立した説明が必要となる.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1810.02172
Alexoudi et al. (2018)
Deciphering the atmosphere of HAT-P-12b: solving discrepant results
(HAT-P-12b の大気の解読:矛盾した結果の解決)

概要

ホットジュピター HAT-P-12b の大気について,これまでに異なる 2 グループによる観測結果は異なる解を導いている.

Mallonn et al. (2015) では,地上望遠鏡での広帯域測光観測を用いて,この惑星の大気の透過スペクトルは平坦で特徴に欠けていると発表している.これは,大気中の濃い雲の被覆による波長依存性の無い吸収に起因すると解釈される.
一方で Sing et al. (2016) では,ハッブル宇宙望遠鏡を用いた観測で,可視光波長でヘイズによって引き起こされていると思われるレイリー散乱を検出している.

この研究の主目的は,この非整合性の原因を見つけ,他の系外惑星大気の将来の解析におけるこのような不一致を防ぐためのフィードバックを与えることである.

2 つの手法を介して,この惑星の大気に関して観測された差異について調査を行った.また,可視光波長領域でのさらなる広帯域観測を行い,過去の測定結果を詳細に補強した.加えて,公開されているデータの一様な再解析を行うことで,系統誤差および 2 つの異なるグループの独立した解析結果を評価した.

その結果,過去の双方の研究における解析ステップを繰り返すと,軌道パラメータに対する偏位した値が前述の不一致の原因であることが分かった

今回の研究では,これらのパラメータを用いて惑星のスペクトル勾配が縮退することを示した.全データを均質に再解析を行った結果,2 つの過去のデータと新しい観測結果はいずれも整合的な透過スペクトルに収束し,低振幅のスペクトルのスロープの存在と,大気中のカリウム吸収の暫定的な検出を示した.

議論

過去の 2 つの研究グループによる解析結果の不一致は,異なる解析ツールを使用したことが原因ではないことを見出した.違いを生み出していたのは,使用した惑星の軌道パラメータにおける差異であった.

どちらのグループも,傾斜角 \(i\) と \(a/R_{\star}\) は波長に依存せず,最終的な光度曲線フィットまで固定していたが異なる値を導出していた.Mallonn et al. (2015) の値は過去の値と一致していた一方,Sing et al. (2016) での 2 つのスピッツァー宇宙望遠鏡の光度曲線フィットはわずかに異なる軌道パラメータを示していた.この 2 つのパラメータセットを用いると,不一致したスペクトルを再現することが出来た.

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arXiv:1810.02341
Wang et al. (2018)
HD 202772A B: A Transiting Hot Jupiter Around A Bright, Mildly Evolved Star In A Visual Binary Discovered By Tess
(HD 202772Ab:TESS で発見された実視連星中のやや進化した明るい恒星まわりのトランジットホットジュピター)

概要

Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) のミッションで初めてホットジュピターが検出された.今回発見された惑星は HD 202772Ab である.

トランジットのシグナルは TESS の Sector 1 の観測データ中から検出され,その後の視線速度測定によって惑星によるシグナルだと確認された.

この惑星は,やや進化した恒星を 3.3 日周期で公転している.中心星の見かけの等級は V = 8.3 であり,ホットジュピターを持つ恒星の中では最も明るい部類である.TESS の 27 日間の測光観測と,CHIRON と HAPRS 分光器による視線速度データに基づくと,1.008 木星質量,1.562 木星半径であり,膨張した半径を持つ惑星である.

この惑星は急速に進化する恒星の周りをトランジットするホットジュピターの希少な例である.また,これまでに知られている中で最も強く輻射を受ける惑星の一つでもある.

パラメータ

HD 202772A
等級:V = 8.320
有効温度:6230 K
金属量:[Fe/H] = 0.29
質量:1.703 太陽質量
半径:2.614 太陽半径
光度:9.25 太陽光度
年齢:18.0 億歳
距離:147.2 pc
HD 202772Ab
軌道周期:3.308960 日
半径:1.562 木星半径
軌道長半径:0.05190 AU
軌道離心率:0.047
平衡温度:2132 K
質量:1.008 木星質量
密度:0.330 g cm-3
HD 202772B
等級:V = 10.15
有効温度:6156 K
金属量:[Fe/H] = 0.25
質量:1.21 太陽質量
半径:1.16 太陽半径
光度:1.27 太陽光度

HD 202772A と B は性質が類似しており,射影距離が 200 AU 程度しかないことから,重力的に束縛されている可能性が非常に高い.

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