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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1802.00766
Temple et al. (2018)
Discovery of WASP-174b: Doppler tomography of a near-grazing transit
(WASP-174b の発見:ほぼかすめるようなトランジットのドップラートモグラフィー)
この惑星は,中心星をほぼかすめるようなトランジットを起こしている.軌道周期は 4.23 日で,中心星は光度が V = 11.9,スペクトル型は F6V,金属量は [Fe/H] = 0.09 ± 0.09 である.
恒星の自転軸と惑星の公転軸はややずれており,天球に射影した角度は 31° ± 1° と推定される.この結果は,高温の恒星まわりでは恒星の自転軸と惑星の公転軸がずれる傾向にあるという,これまでの結果と整合的である.
かすめるようなトランジットを起こしているため,惑星の半径推定は不確実であり,取りうる範囲は 0.7 - 1.7 木星半径である.また惑星質量の上限は 1.3 木星質量である.中心星の WASP-174 は,ドップラートモグラフィーを用いて惑星の存在が確認された中では,これまでで最も暗い.
ドップラートモグラフィーを用いて初めて発見された系外惑星は WASP-33b (Collier Cameron et al. 2010) である.その他には,XO-6b (Crouzet et al. 2017),KELT-17b (Zhou et al. 2016),KELT-9b (Gaudi et al. 2017),KELT-19Ab (Siverd et al. 2017),KELT-20b/MASCARA-2b (Lund et al. 2017,Talens et al.2017),KELT-21b (Johnson et al. 2017),HAT-P-57b (Hartman et al. 2015),HAT-P-67b (Zhou et al. 2017),ケプラー448b (Bourrier et al. 2015),WASP-167b/KELT-13b (Temple et al. 2017),MASCARA-1b (Talens et al. 2017) がある.
スペクトル型:F6V
有効温度:6400 K
金属量:[Fe/H] = 0.09
質量:1.27 太陽質量
半径:1.3 太陽半径
年齢:16.5 億歳
軌道長半径:0.0555 AU
質量:1.3 木星質量未満
半径:1.2 ± 0.5 木星半径
平衡温度:1470 K
arXiv:1802.00766
Temple et al. (2018)
Discovery of WASP-174b: Doppler tomography of a near-grazing transit
(WASP-174b の発見:ほぼかすめるようなトランジットのドップラートモグラフィー)
概要
WASP-174b の,ドップラートモグラフィー (Doppler tomography) を用いた発見について報告する.この惑星は,中心星をほぼかすめるようなトランジットを起こしている.軌道周期は 4.23 日で,中心星は光度が V = 11.9,スペクトル型は F6V,金属量は [Fe/H] = 0.09 ± 0.09 である.
恒星の自転軸と惑星の公転軸はややずれており,天球に射影した角度は 31° ± 1° と推定される.この結果は,高温の恒星まわりでは恒星の自転軸と惑星の公転軸がずれる傾向にあるという,これまでの結果と整合的である.
かすめるようなトランジットを起こしているため,惑星の半径推定は不確実であり,取りうる範囲は 0.7 - 1.7 木星半径である.また惑星質量の上限は 1.3 木星質量である.中心星の WASP-174 は,ドップラートモグラフィーを用いて惑星の存在が確認された中では,これまでで最も暗い.
ドップラートモグラフィーによる惑星の確認
表面温度が高温で高速自転する恒星は,視線速度の観測データが少ない.これは,このような恒星はスペクトル線が広く弱いため,視線速度の観測が行いづらいからである.そのため,このような恒星の周りの惑星はしばしば,ドップラートモグラフィーによってその存在が確定される.ドップラートモグラフィーを用いて初めて発見された系外惑星は WASP-33b (Collier Cameron et al. 2010) である.その他には,XO-6b (Crouzet et al. 2017),KELT-17b (Zhou et al. 2016),KELT-9b (Gaudi et al. 2017),KELT-19Ab (Siverd et al. 2017),KELT-20b/MASCARA-2b (Lund et al. 2017,Talens et al.2017),KELT-21b (Johnson et al. 2017),HAT-P-57b (Hartman et al. 2015),HAT-P-67b (Zhou et al. 2017),ケプラー448b (Bourrier et al. 2015),WASP-167b/KELT-13b (Temple et al. 2017),MASCARA-1b (Talens et al. 2017) がある.
パラメータ
WASP-174
等級:V = 11.9スペクトル型:F6V
有効温度:6400 K
金属量:[Fe/H] = 0.09
質量:1.27 太陽質量
半径:1.3 太陽半径
年齢:16.5 億歳
WASP-174b
軌道周期:4.233700 日軌道長半径:0.0555 AU
質量:1.3 木星質量未満
半径:1.2 ± 0.5 木星半径
平衡温度:1470 K
PR
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1801.10177
Chen et al. (2018)
An Improved Transit Measurement for a 2.4 REarth Planet Orbiting A Bright Mid-M Dwarf K2−28
(明るい中期 M 型矮星 K2-28 を公転する 2.4 地球半径惑星のトランジット測定の改善)
この惑星はサブネプチューンサイズの惑星 (2.45 地球半径) で,比較的明るい (V = 16.06,K = 10.75) 金属量が豊富な M4 矮星 K2-28 を公転している.この恒星は,質量が 0.2 太陽質量未満でトランジット惑星を持っている,わずか 7 個の恒星の 1 つである.また,惑星は GJ 1214b より僅かに小さいサイズの類似した惑星である (GJ 1214b は 2.85 地球半径,Harpsøe et al. 2013).
今回のスピッツァー宇宙望遠鏡のデータは,ケプラー K2 ミッションによって発見された時のデータが取得された 2 年後に取得されたものである.観測頻度は高く,この惑星の半径,軌道長半径,軌道周期の推定を改善した.
また,将来的なジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (James Webb Space Telescope, JWST) での大気の観測可能性についての議論も行った.
この惑星は,GJ 1214b 以外では二次食の検出が潜在的に可能な,唯一の小型 (3 地球半径未満) で低温 (600 K 未満) の惑星である.またこの天体は,大型望遠鏡の近赤外線での視線速度測定装置のターゲットとして適している.例えば,Hobby-Eberly Telescope にある Habitable Planet Finder (HPF) や,すばる望遠鏡の Infrared Doppler 装置などでの観測対象として適している.
また,打上げが予定されている Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) のシミュレーションカタログとの比較を行い,この惑星が中期 M 型星系の代表例であることを指摘する.
最後に,2 地球半径以上の大きさの惑星を持つ中期 M 型星は,より金属量が豊富な傾向があるという,過去に指摘されていた相関についての強化された証拠を見出した.過去の指摘よりも解析に用いたサンプル数が 3 倍になったことと,今回の K2-28b の新しい観測データから判明した.
K2-28 は,0.2 太陽質量より軽い恒星の中でトランジット惑星を持っていることが分かっているわずか 7 例のうちの一つである (惑星数は合計で 16 個).
中期 M 型星のうち,2 地球半径よりも大きいサイズの惑星を持っているものは,金属量が豊富な傾向があるということが Hirano et al. (2016) によって指摘されている.Hirano et al. (2016) では,6 個の恒星,10 個の惑星という限られたサンプルに対しての解析を行っている.
ここではその解析よりも,サンプル数を 3 倍に増やして再検討を行った.
その結果,2 地球半径よりも小さい惑星を持っている場合,中心星の金属量の平均は [Fe/H] = -0.103 であった.それに対して,2 地球半径より大きい惑星を持っている場合は [Fe/H] = 0.104 であった.これは 11 σ 大きな値である.
そのため,この相関に関する強い証拠は引き続き存在する.
ただし,この傾向は観測バイアスである可能性があるという点には注意が必要である.
金属量が豊富な恒星は半径が大きいため (Mann et al. 2015),金属量豊富な恒星を公転する小さい惑星は検出しづらくなる (Buchhave et al. 2014など).
金属量との相関は,惑星の形成タイムスケールに関係している可能性がある.この場合,金属量が豊富な原始惑星系円盤はより早い段階でより重いコアを形成する事ができ,成長するコアが少量の水素ガスを降着して比較的大きな半径を持つ惑星を形成することが出来る.
arXiv:1801.10177
Chen et al. (2018)
An Improved Transit Measurement for a 2.4 REarth Planet Orbiting A Bright Mid-M Dwarf K2−28
(明るい中期 M 型矮星 K2-28 を公転する 2.4 地球半径惑星のトランジット測定の改善)
概要
K2-28b のスピッツァー宇宙望遠鏡でのトランジット観測の結果を報告する.この惑星はサブネプチューンサイズの惑星 (2.45 地球半径) で,比較的明るい (V = 16.06,K = 10.75) 金属量が豊富な M4 矮星 K2-28 を公転している.この恒星は,質量が 0.2 太陽質量未満でトランジット惑星を持っている,わずか 7 個の恒星の 1 つである.また,惑星は GJ 1214b より僅かに小さいサイズの類似した惑星である (GJ 1214b は 2.85 地球半径,Harpsøe et al. 2013).
今回のスピッツァー宇宙望遠鏡のデータは,ケプラー K2 ミッションによって発見された時のデータが取得された 2 年後に取得されたものである.観測頻度は高く,この惑星の半径,軌道長半径,軌道周期の推定を改善した.
また,将来的なジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (James Webb Space Telescope, JWST) での大気の観測可能性についての議論も行った.
この惑星は,GJ 1214b 以外では二次食の検出が潜在的に可能な,唯一の小型 (3 地球半径未満) で低温 (600 K 未満) の惑星である.またこの天体は,大型望遠鏡の近赤外線での視線速度測定装置のターゲットとして適している.例えば,Hobby-Eberly Telescope にある Habitable Planet Finder (HPF) や,すばる望遠鏡の Infrared Doppler 装置などでの観測対象として適している.
また,打上げが予定されている Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) のシミュレーションカタログとの比較を行い,この惑星が中期 M 型星系の代表例であることを指摘する.
最後に,2 地球半径以上の大きさの惑星を持つ中期 M 型星は,より金属量が豊富な傾向があるという,過去に指摘されていた相関についての強化された証拠を見出した.過去の指摘よりも解析に用いたサンプル数が 3 倍になったことと,今回の K2-28b の新しい観測データから判明した.
K2-28 系について
K2-28b は,ケプラーの K2 ミッションでの観測データ中から検出された惑星である (Vanderburg et al. 2016).この検出は,後に統計的に確認された (Hirano et al. 2016).中心星 K2-28 はスペクトル型が M4 型で,別名は EPIC 206318379 である.質量と半径は 0.20 太陽質量・0.28 太陽半径で,有効温度は 3290 K である (Dressing et al. 2017).K2-28 は,0.2 太陽質量より軽い恒星の中でトランジット惑星を持っていることが分かっているわずか 7 例のうちの一つである (惑星数は合計で 16 個).
中期 M 型星の惑星存在頻度と金属量
K2-28 は [Fe/H] = 0.332 と金属量が豊富な恒星である (Dressing et al. 2017).中期 M 型星のうち,2 地球半径よりも大きいサイズの惑星を持っているものは,金属量が豊富な傾向があるということが Hirano et al. (2016) によって指摘されている.Hirano et al. (2016) では,6 個の恒星,10 個の惑星という限られたサンプルに対しての解析を行っている.
ここではその解析よりも,サンプル数を 3 倍に増やして再検討を行った.
その結果,2 地球半径よりも小さい惑星を持っている場合,中心星の金属量の平均は [Fe/H] = -0.103 であった.それに対して,2 地球半径より大きい惑星を持っている場合は [Fe/H] = 0.104 であった.これは 11 σ 大きな値である.
そのため,この相関に関する強い証拠は引き続き存在する.
ただし,この傾向は観測バイアスである可能性があるという点には注意が必要である.
金属量が豊富な恒星は半径が大きいため (Mann et al. 2015),金属量豊富な恒星を公転する小さい惑星は検出しづらくなる (Buchhave et al. 2014など).
金属量との相関は,惑星の形成タイムスケールに関係している可能性がある.この場合,金属量が豊富な原始惑星系円盤はより早い段階でより重いコアを形成する事ができ,成長するコアが少量の水素ガスを降着して比較的大きな半径を持つ惑星を形成することが出来る.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1801.10254
Lingam & Loeb (2018)
Implications of Captured Interstellar Objects for Panspermia and Extraterrestrial Life
(捕獲された恒星間天体のパンスペルミアと地球外生命への影響)
太陽-木星系の場合は捕獲される天体の最大サイズは数十キロメートルで,ケンタウルス座アルファ星A-B 連星系では地球サイズであった.
さらに,岩石物質による生命の輸送と今回のモデルの関係についての考察も行った.太陽系の “漁網” に捕獲された恒星間彗星は,それらの尾の部分の水蒸気の高分解能分光観測を行って酸素同位体の比率を測定することによって,潜在的には区別することが出来る.
居住可能な環境を持つ惑星は,以下の 2 つの異なる経路のパンスペルミアによって生命の種を持つ可能性がある.
(i) 恒星間天体の惑星への直接衝突
(ii) 恒星間天体の一時的な捕獲と,それに引き続く惑星間のパンスペルミア
パンスペルミアに関する近年の議論は進歩しているが,天体の放出・通過および大気圏再突入を生き延びられる地球外の微生物が存在する可能性については依然としてあまりよく分かっておらず,全てのパンスペルミアモデルには複数の不定性が存在する.
arXiv:1801.10254
Lingam & Loeb (2018)
Implications of Captured Interstellar Objects for Panspermia and Extraterrestrial Life
(捕獲された恒星間天体のパンスペルミアと地球外生命への影響)
概要
ここでは,3 体重力相互作用による,恒星間天体の捕獲率の推定を行った.また,このモデルを太陽-木星系と,ケンタウルス座アルファ星A-B 連星系に適用し,捕獲される天体の最大サイズを計算した.太陽-木星系の場合は捕獲される天体の最大サイズは数十キロメートルで,ケンタウルス座アルファ星A-B 連星系では地球サイズであった.
さらに,岩石物質による生命の輸送と今回のモデルの関係についての考察も行った.太陽系の “漁網” に捕獲された恒星間彗星は,それらの尾の部分の水蒸気の高分解能分光観測を行って酸素同位体の比率を測定することによって,潜在的には区別することが出来る.
パンスペルミア仮説との関連
もしキロメートルサイズの恒星間天体が地球に衝突した場合,地球全体への影響は一時的なものであるが,局所的には顕著な変化をもたらすことが示唆される.居住可能な環境を持つ惑星は,以下の 2 つの異なる経路のパンスペルミアによって生命の種を持つ可能性がある.
(i) 恒星間天体の惑星への直接衝突
(ii) 恒星間天体の一時的な捕獲と,それに引き続く惑星間のパンスペルミア
パンスペルミアに関する近年の議論は進歩しているが,天体の放出・通過および大気圏再突入を生き延びられる地球外の微生物が存在する可能性については依然としてあまりよく分かっておらず,全てのパンスペルミアモデルには複数の不定性が存在する.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1801.09706
Munoz-Romero & Kempton (2018)
No Metallicity Correlation Associated with the Kepler Dichotomy
(ケプラー二分性に関連した金属量相関は存在しない)
惑星を一つだけ持つトランジット惑星系が高い割合で存在するのと比べると,複数惑星系は存在頻度が低い.これは,複数トランジット惑星系と単一トランジット惑星系の間の構造の違いによるものだという主張が存在する.この現象は一般に Kepler dichotomy (ケプラー二分性) と呼ばれている.
ここでは,「複数トランジット惑星系に対して単一のトランジット惑星系の方が多く存在していることは,外側に巨大惑星が存在していることが主要な原因である」という仮説の検証を行った.
この仮説は,前者のサンプルにおいて,高い金属量で示される可能性がある.そのため,ケプラーデータ中の惑星の多重度について,中心星の金属量の分布との相関の有無についての統計的な解析を行った.
ケプラーで発見された惑星系のうち,中心星が主系列星である 1166 個の中から多くのサンプルを抽出して解析を行った.中心星の金属量については,California-Kepler サーベイ (Swift et al. 2015) によって推定された精密な金属量のデータを使用した.
その結果,過去のいくつかの研究での予測とは対照的に,単一のトランジット惑星系・複数トランジット惑星系との間の中心星の金属量には明確な違いは発見されなかった.しかし,中心星の金属量についての考察から,小型の惑星を一つだけ持つ惑星系が,未発見の巨大惑星も持っている可能性について,55% の上限値を見出した.
未発見の外側の巨大惑星の存在がケプラー二分性の背後にある要因の一つである可能性はあるが,今回の結果はまた別の説明を支持するものである.単一のトランジット惑星を持つ系における巨大ガス惑星の存在に制約を与えるためには,さらなる視線速度と直接撮像観測が必要であることが示唆される.
系外惑星の半径の分布からは,半径が 1.6 地球半径未満の岩石地球型惑星と,いくらか大きく ~ 1.7 - 3 地球半径程度の水素・ヘリウム主体のエンベロープを持つサブネプチューン惑星に分割されることが示唆されている (Fulton et al. 2017,Lopez & Fortney 2014,Rogers 2014,Wolfgang & Lopez 2015,Howe et al. 2014).
ケプラーでの特にインパクトのある発見の一つは,複数のトランジット惑星を持つ系のポピュレーションである.これらは典型的にはコンパクトな配置の短周期の軌道にあり,惑星同士の相互軌道傾斜角の分散はわずか数度にとどまる (Fabrychy et al. 2014など).
ケプラーで発見された系外惑星系のうち,~ 20% が複数のトランジット惑星を持つ系である.この割合は一見大きく見えるが,惑星がトランジットを起こす幾何学的な確率が低いとすると,ケプラーの惑星多重度分布を再現しようとする単一成分モデルは,単一トランジット系の数を実際の観測値より 3 倍ほど過小予測してしまうことが分かっている (Lissauer et al. 2011,Hansen & Murray 2012,Weissbein et al. 2012).
上記の理由から,ケプラーで発見されている惑星系は,少なくとも 2 つのポピュレーションに分割されているというのが一般的な合意である.すなわち,「複数の小さい惑星が小さな相互軌道傾斜角を持って存在している系」と,「一つの大きな惑星を持ち,惑星の多重度が本質的に低いか,あるいは相互軌道傾斜角の分散が大きい系」の 2 種類である (Moriarty & Ballard 2016,Lai &Pu 2017,Johansen et al. 2012,Ballard & Johnson 2016).
この差異は Kepler dichotomy (ケプラー二分性) と呼ばれ,これを引き起こす原因は不明である.
この関連性については,これまでにいくつもの説が提案されている.
実際に,惑星形成シミュレーションにおいては,巨大ガス惑星は一般的なスーパーアースの内側移動の障壁となりうることが見出されている.
Lai & Pu (2017) の解析では,外側に存在する巨大惑星は,惑星が 2 つ存在する系で惑星同士の相互傾斜角を励起して大きくすることが分かっている.
Read et al. (2017) の研究では,本質的に傾いた軌道を持つ複数惑星系と,ガス惑星によって軌道が擾乱を受けた惑星系の組み合わせによって,観測されている単一トランジット惑星の存在度を良く再現出来ることが報告されている (※注釈:実際には複数惑星系であるが,軌道が元々ずれているか,外側の惑星によって軌道面がずれた結果,地球から見てトランジットを起こす惑星が 1 つだけになっている,という仮説).
上記のような,単独のトランジット惑星を持つ系には,実際は隠された巨大惑星が存在するという,観測的に検証可能な仮説が提案されている.
また,元々大きな相互軌道傾斜角を持った 2 つの惑星が存在するトランジット惑星系は,異なる金属量関係性を示すという仮説もある.
一方で,恒星の金属量との相関は,ケプラー二分性の物理的な起源にとって必ずしも必要ではない可能性もある.例えば Lai & Pu (2017) では,外側のガス惑星の代わりに,恒星質量の伴星でも内側惑星の相互軌道傾斜角を上昇させる事ができると指摘している.ガス惑星の存在度は中心星の金属量との相関が見られるが,恒星質量の伴星の場合は中心星の金属量とは関係がないと考えられる.
Spalding & Batygin (2016) では,有効温度が > 6200 K の高温の恒星は,低温の恒星よりも単一トランジット惑星系を持ちやすい傾向があることを報告している.高温の恒星周りでは軌道傾斜角が大きな値を取りうるため (Winn et al. 2010,Mazeh et al. 2015など),初期の spin-orbit misalignment (中心星の自転軸と惑星の公転軸のずれ) が,ケプラー二分性の原因となる惑星同士の相互軌道傾斜角の増大を引き起こしている可能性が示唆される.
arXiv:1801.09706
Munoz-Romero & Kempton (2018)
No Metallicity Correlation Associated with the Kepler Dichotomy
(ケプラー二分性に関連した金属量相関は存在しない)
概要
NASA のケプラーミッションでは,数千の系外惑星系が発見されている.このうち ~ 20% が複数惑星のトランジット系である.惑星を一つだけ持つトランジット惑星系が高い割合で存在するのと比べると,複数惑星系は存在頻度が低い.これは,複数トランジット惑星系と単一トランジット惑星系の間の構造の違いによるものだという主張が存在する.この現象は一般に Kepler dichotomy (ケプラー二分性) と呼ばれている.
ここでは,「複数トランジット惑星系に対して単一のトランジット惑星系の方が多く存在していることは,外側に巨大惑星が存在していることが主要な原因である」という仮説の検証を行った.
この仮説は,前者のサンプルにおいて,高い金属量で示される可能性がある.そのため,ケプラーデータ中の惑星の多重度について,中心星の金属量の分布との相関の有無についての統計的な解析を行った.
ケプラーで発見された惑星系のうち,中心星が主系列星である 1166 個の中から多くのサンプルを抽出して解析を行った.中心星の金属量については,California-Kepler サーベイ (Swift et al. 2015) によって推定された精密な金属量のデータを使用した.
その結果,過去のいくつかの研究での予測とは対照的に,単一のトランジット惑星系・複数トランジット惑星系との間の中心星の金属量には明確な違いは発見されなかった.しかし,中心星の金属量についての考察から,小型の惑星を一つだけ持つ惑星系が,未発見の巨大惑星も持っている可能性について,55% の上限値を見出した.
未発見の外側の巨大惑星の存在がケプラー二分性の背後にある要因の一つである可能性はあるが,今回の結果はまた別の説明を支持するものである.単一のトランジット惑星を持つ系における巨大ガス惑星の存在に制約を与えるためには,さらなる視線速度と直接撮像観測が必要であることが示唆される.
Kepler dichotomy (ケプラー二分性)
Kepler dichotomy とは
これまでの系外惑星の発見から,小さい惑星はより豊富に存在することが分かっている (Howerd et al. 2012など).系外惑星の半径の分布からは,半径が 1.6 地球半径未満の岩石地球型惑星と,いくらか大きく ~ 1.7 - 3 地球半径程度の水素・ヘリウム主体のエンベロープを持つサブネプチューン惑星に分割されることが示唆されている (Fulton et al. 2017,Lopez & Fortney 2014,Rogers 2014,Wolfgang & Lopez 2015,Howe et al. 2014).
ケプラーでの特にインパクトのある発見の一つは,複数のトランジット惑星を持つ系のポピュレーションである.これらは典型的にはコンパクトな配置の短周期の軌道にあり,惑星同士の相互軌道傾斜角の分散はわずか数度にとどまる (Fabrychy et al. 2014など).
ケプラーで発見された系外惑星系のうち,~ 20% が複数のトランジット惑星を持つ系である.この割合は一見大きく見えるが,惑星がトランジットを起こす幾何学的な確率が低いとすると,ケプラーの惑星多重度分布を再現しようとする単一成分モデルは,単一トランジット系の数を実際の観測値より 3 倍ほど過小予測してしまうことが分かっている (Lissauer et al. 2011,Hansen & Murray 2012,Weissbein et al. 2012).
上記の理由から,ケプラーで発見されている惑星系は,少なくとも 2 つのポピュレーションに分割されているというのが一般的な合意である.すなわち,「複数の小さい惑星が小さな相互軌道傾斜角を持って存在している系」と,「一つの大きな惑星を持ち,惑星の多重度が本質的に低いか,あるいは相互軌道傾斜角の分散が大きい系」の 2 種類である (Moriarty & Ballard 2016,Lai &Pu 2017,Johansen et al. 2012,Ballard & Johnson 2016).
この差異は Kepler dichotomy (ケプラー二分性) と呼ばれ,これを引き起こす原因は不明である.
Kepler dichotomy の原因
ケプラー二分性の原因を,外側に未検出の惑星が存在することに求める研究がある.さらに,巨大ガス惑星は金属量豊富な恒星の周りに多く存在する一方で,小さい惑星を持つ恒星の金属量は広い範囲にばらついていることが分かっている (Fischer & Valenti 2005,Johnson et al. 2010,Mayor et al.2011,Buchhave et al. 2012,Neves et al. 2013,Wang et al. 2015).そのため,中心星の高い金属量と単一のトランジット系の間には関連がある可能性が指摘されている.この関連性については,これまでにいくつもの説が提案されている.
巨大惑星の惑星形成段階における影響
Johansen et al. (2012) は,惑星の衝突や系からの放出の両方とも,典型的な惑星系の年齢に見合ったタイムスケールの間には,観測されているケプラー惑星の多重性を再現できないことを指摘している.その代わりに,ケプラー二分性は惑星が形成されている最中に円盤の内側の物質を欠乏させる,外側の巨大惑星によって引き起こされているべきと結論付けている.実際に,惑星形成シミュレーションにおいては,巨大ガス惑星は一般的なスーパーアースの内側移動の障壁となりうることが見出されている.
外側の巨大惑星による軌道の擾乱の影響
それとは別に,単一のトランジット系が多く発見されているのは,外側に存在する巨大惑星の破壊的な効果による,惑星同士の大きな相互軌道傾斜角の結果である可能性もある.Lai & Pu (2017) の解析では,外側に存在する巨大惑星は,惑星が 2 つ存在する系で惑星同士の相互傾斜角を励起して大きくすることが分かっている.
Read et al. (2017) の研究では,本質的に傾いた軌道を持つ複数惑星系と,ガス惑星によって軌道が擾乱を受けた惑星系の組み合わせによって,観測されている単一トランジット惑星の存在度を良く再現出来ることが報告されている (※注釈:実際には複数惑星系であるが,軌道が元々ずれているか,外側の惑星によって軌道面がずれた結果,地球から見てトランジットを起こす惑星が 1 つだけになっている,という仮説).
上記のような,単独のトランジット惑星を持つ系には,実際は隠された巨大惑星が存在するという,観測的に検証可能な仮説が提案されている.
また,元々大きな相互軌道傾斜角を持った 2 つの惑星が存在するトランジット惑星系は,異なる金属量関係性を示すという仮説もある.
一方で,恒星の金属量との相関は,ケプラー二分性の物理的な起源にとって必ずしも必要ではない可能性もある.例えば Lai & Pu (2017) では,外側のガス惑星の代わりに,恒星質量の伴星でも内側惑星の相互軌道傾斜角を上昇させる事ができると指摘している.ガス惑星の存在度は中心星の金属量との相関が見られるが,恒星質量の伴星の場合は中心星の金属量とは関係がないと考えられる.
その他の可能性
その他には,Moriarty & Ballard (2016) によって,G・K 型星 と M 型星では惑星の多重性の分布が異なるという事が報告されている.M 型矮星は 1/3 が複数トランジット惑星系を持つが,GK 型星では 20% のみである.このことは,惑星が形成されている段階における原始惑星系円盤の表面密度分布の多様性が二分性の原因である可能性を示唆する.Spalding & Batygin (2016) では,有効温度が > 6200 K の高温の恒星は,低温の恒星よりも単一トランジット惑星系を持ちやすい傾向があることを報告している.高温の恒星周りでは軌道傾斜角が大きな値を取りうるため (Winn et al. 2010,Mazeh et al. 2015など),初期の spin-orbit misalignment (中心星の自転軸と惑星の公転軸のずれ) が,ケプラー二分性の原因となる惑星同士の相互軌道傾斜角の増大を引き起こしている可能性が示唆される.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1801.09738
Wise & Dodson-Robinson (2018)
Photoevaporation Does Not Create a Pileup of Giant Planets at 1 AU
(光蒸発は 1 AU の巨大惑星のパイルアップを形成しない)
円盤の光蒸発 (photoevaporation) は,円盤ガスが散逸するより前に,数 AU 程度の円盤内側にギャップを形成する.ここでは円盤の光蒸発が,円盤のガス表面密度を変える事によって光蒸発ギャップの近くで Type II migration (II 型惑星移動) の移動速度を変え,最終的なガス惑星の分布に大きく影響を与えるかどうか調査を行った.
初めに解析的な円盤モデルを使用して,光蒸発が惑星の移動速度を大きく変える前に形成された巨大惑星は,大きな移動速度を持つことを再現した.
次に,光蒸発を起こしている円盤中を移動する惑星の新しい二次元流体シミュレーションを行った.その結果,巨大惑星を形成出来る最小の閾値付近の表面密度を持った円盤では,光蒸発は移動する惑星の最終的な軌道長半径を,10 万年の移動の間に最大で 5% しか変えないことが分かった.
円盤質量が光蒸発で鋭いギャップを開けるのに十分なほど小さくなると,惑星の軌道移動はほとんど完全に停止する.これは,リンドブラッド共鳴での低いガス表面密度の影響である.
結果として,円盤の光蒸発は惑星の軌道移動率をわずかにしか変えず,巨大系外惑星の分布に見られる明確な特徴を残すのは困難であることを見出した.
arXiv:1801.09738
Wise & Dodson-Robinson (2018)
Photoevaporation Does Not Create a Pileup of Giant Planets at 1 AU
(光蒸発は 1 AU の巨大惑星のパイルアップを形成しない)
概要
巨大系外惑星の軌道長半径分布には,1 AU 付近に pile up (集積,パイルアップ) が存在するように見える.円盤の光蒸発 (photoevaporation) は,円盤ガスが散逸するより前に,数 AU 程度の円盤内側にギャップを形成する.ここでは円盤の光蒸発が,円盤のガス表面密度を変える事によって光蒸発ギャップの近くで Type II migration (II 型惑星移動) の移動速度を変え,最終的なガス惑星の分布に大きく影響を与えるかどうか調査を行った.
初めに解析的な円盤モデルを使用して,光蒸発が惑星の移動速度を大きく変える前に形成された巨大惑星は,大きな移動速度を持つことを再現した.
次に,光蒸発を起こしている円盤中を移動する惑星の新しい二次元流体シミュレーションを行った.その結果,巨大惑星を形成出来る最小の閾値付近の表面密度を持った円盤では,光蒸発は移動する惑星の最終的な軌道長半径を,10 万年の移動の間に最大で 5% しか変えないことが分かった.
円盤質量が光蒸発で鋭いギャップを開けるのに十分なほど小さくなると,惑星の軌道移動はほとんど完全に停止する.これは,リンドブラッド共鳴での低いガス表面密度の影響である.
結果として,円盤の光蒸発は惑星の軌道移動率をわずかにしか変えず,巨大系外惑星の分布に見られる明確な特徴を残すのは困難であることを見出した.
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